ウィーン等主要4都市を周ってオーストリアの治安を肌で感じると

ウィーン3区
オーストリアは治安が良く、
いかにも文化的で知的水準が高く、
安全な国というイメージがあるように思う。

しかし、実際にそうなのかと言えば、
現地を周ってみても疑問に思うことが多々あった。

私が現地を訪れたのは、
ウィーン、グラーツ、ザルツブルグ、
インスブルックの4つの主要都市に加え、
バートイシュルとハルシュタットにも足を運んだ。

その上で日本人が旅をする国として考えた時の
オーストリアの治安についてまとめておこうと思う。



まずはアルプスのふもと、インスブルックへ

インスブルック
まず、今回はミュンヘンからインスブルックに入った。

街中からもアルプスが見える眺望はさすが。
隣国ドイツと比べると移民の数も少なく、
日が暮れた後も危険な雰囲気が街を支配することはない。

その意味では、
やはりドイツと比較してオーストリアはのどかな印象がある。

ミュンヘンやフランクフルトを連想すると、
その差ははっきりしている。

これはインスブルックに特有の事情ではなく、
ザルツブルグやグラーツでも言えること。

隣接している国とは言え、
やはり移民が大量流入してきたドイツとは事情が違う。


しかし、最初の違和感は英語が通じないことだった。

もちろんホテルのレセプションは問題ないが、
観光施設でも英語の表記がなかったり、
ドイツ語しか話せない人が少なからずいたり。

これではスペインやイタリアとあまり変わらないのでは?

そんなところからイメージとのギャップに気付き、
徐々にオーストリアという国の実態を観察することになった。

元々英語圏ではないし、
言葉の問題は単純に語学力という他に、
文化的な背景を内包している可能性もある。

フランス人がフランス語にプライドを持っているために、
いきなり英語で話しかけられると
不快感を示すように。

オーストリア人もドイツ語に
並々ならぬこだわりがあるのかもしれない。


なにしろ文化と芸術の都、ウィーンを首都に擁する国なのだから、
知的水準はいかにも高そうな雰囲気がある。

治安もなんとなく良さそうで、
道行く人のマナーも洗練されていそうだ。
しかし、ドイツ並みに路上喫煙率が高く、
街頭はしばしばタバコ臭い。

歩きタバコも多い。

これはドイツ文化圏の特徴で、
ミュンヘンはもちろんそうだし、
チェコのプラハも同様の傾向にある。


ドイツからオーストリアに移動しても、
街中のタバコ臭さは変わらなかった。

そして、ザルツブルグの中央駅の前にあるにいたっては、
バスターミナル(短距離・長距離兼用)の
2つしかない券売機の隣に
わざわざ吸殻入れが設置されている無神経ぶり。

当然吸殻入れのところで喫煙する人がいると、
チケットを買っている間も煙にさらされる。

広々としたスペースの中で、
あえてこの配置にする配慮のなさはあっけにとられる。

ヨーロッパ内での話というより、
いわゆる東南アジアと呼ばれるタイやシンガポールと比べても
後進的な立場と言わざるをえないだろう。



ウィーンの夜は危険な出来事も

ウィーン5区
首都ウィーンで宿泊したホテルの中に、
建物の中の3フロアがホテルになっていて、
それ以外は普通のアパートメントとして
利用されているところがあった。

楽友協会でのコンサートに感情が高ぶって戻ってきたら、
二人組の男がドアの前に座り込んでいた。

ウィーンに限らず、
ブダペストでもミュンヘンでも見る光景で、
段差がちょうどいいという理由で座り込んでいるのだろう。

オートロックに番号を打ち込まないと
ドアは開閉できない仕組みになっている。

入り口は一箇所しかないし、
男達がすぐに立ち去りそうな様子もなく、
1月のウィーンの夜は散歩には寒すぎる。

少々気が向かなかったが、
男達のすぐそばで番号を打ち込み、
建物に入ってすぐにドアを閉めた。

すると、英語ではない言語で彼らが何か喚いている。

番号を見られていたらドアが開けられてしまうし、
エレベーターを待っている時間を
のんびり待ち構えているわけにもいかなかった。

仕方ないので、
ホテルのフロントのある6階まで階段を駆け上った。

結果として事なきを得たものの、
彼らが何をしたかったのかはわからない。

発していたのがドイツ語かどうかも分からないし、
そもそもオーストリア人なのかも判別できない。

30歳前後の白人だったが、
国籍がどこかは不明。

金銭目的だったのか、
あるいはアジア人をからかっただけなのか?

それも判断のしようがない。


番号を入力するタイプの鍵なので、
住民というわけではないだろう。

何にしても、オーストリアの危険な側面を垣間見て
肝が冷えた夜だった。


なお、オーストリアは6州で構成されるが、
ウィーンが圧倒的に犯罪が多い。

これは大都市なので仕方ないことだが、
訪れる際には注意しておく必要がある。


オーストリアで多い犯罪の種類

Hauptplatz
軽犯罪が中心で、
置き引きやスリ、スキミング等が多い。

ウィーンのケルントナー通りは観光客が多いが、
一方でスリが多いことでも知られる。

ケルントナー通りの中でも
ザッハートルテの元祖として有名なカフェ・ザッハーは、
置き引きの被害が多いとされる場所なので気は抜けない。

同様にコールマルクト通りのデメル周辺も
観光客目当てのスリ等が出没しやすいスポットとなっている。


また、ニセ警官による詐欺もあるが、
このあたりは周辺各国と共通。

ニセ警官の場合、
所持品を検査する間にお金を盗んだり、
クレジットカードの暗証番号を聞き出す手口が主流。

ニセ警官対策として、
警察署に同行する旨を告げる方法もあるが、
土地勘がないと人気のない所に連れ込まれるリスクもあるので、
その点は気をつける必要がある。


周辺国と犯罪の傾向はほぼ同じとは上述の通りだが、
オーストリアにおける外国人の容疑者数が
オーストリア内務省連邦犯罪局から発表されていたので、
参考までに掲載しておく。

ルーマニア人:9624人
ドイツ人:9161 人
セルビア人:8568人
トルコ人:6398 人
ボスニア人:5232人
ハンガリー人:4348人
スロバキア人:3573人
アフガニスタン:3269人
ポーランド人:3171人
ロシア人:3008人

これを見ても周辺国を中心に
様々な国の人が流れてきているのが分かる。


長距離鉄道の交通事情も独特

ザルツブルグ中央駅
オーストリアにおけるJRのような立ち位置の会社OBBは
インスブルックからザルツブルグに行く際、
バートイシュルからハルシュタットを訪れた等、
長距離移動で何度か使った。

しかし、そのたびに悩まされるローカルルールがあった。

通常、ヨーロッパの鉄道はどこも
チケットを購入すればそのまま使える。

バーコードリーダーが付いていたり、
英数字の番号があったりと仕様は多少違うが、
送られてくるPDF等のファイルを持っていけば
乗車できる仕組み。

しかし、オーストリアは違うらしい。

PDFはメールで送られてくるが、
それはチケットではないという。

そのファイルを元に何かの作業をしなければいけないらしいが、
購入後に送られてくるメールはドイツ語で読めないし、
チケットナンバーまで記載されているため、
当然それを提示すればいいものだと思っていた。

仕方ないので2度目は駅で聞いたら、
「これは自分の仕事ではない」と露骨に嫌がられた。

オーストリアはドイツ語圏の中で
鎖国でもしたいのかと思ってしまった。


結局、それ以降はネット予約ではなく、
当日に駅でチケットを購入することにした。

移動予定の日にチケットを確保できる保証がないことは
唯一の難点ではあったが・・・。



街中に落書きは多数

インスブルックの落書き
少々話はそれてしまったが、
オーストリアは安全な国なのか?

この点については、
周囲の国々と比べてウィーンの一件以外は
特に危険を感じることはなかった。

ミュンヘンで見たような、
街中で大声を出しながら歩く男もいなかった。

アルプスの絶景に囲まれたインスブルックでも
一部エリアは落書きがひどかったりもしたが、
これはどの国でも見かける光景なので
ことさらに治安の悪化を懸念することでもない。

実際、OECD加盟国の中でも
オーストリアの犯罪率の低さは上から5番目。

ちなみに、日本は2番目となっている。

国際比較の上で見ると、
オーストリアは安全な国ということになる。

外務省が出している危険情報を見ても、
特に危険な地域はない。

警察等の電話番号を載せておくので、
万が一の時には連絡を。

警察:電話133,112
救急車:電話144,112
日本大使館:(01)531920



安全だが不便な部分の多い国

ウィーンをはじめ主要都市を周った結果として感じたのは、
オーストリアは治安は良い国で、
ただし利便性は高いとは言えないということ。

スーパーは大手チェーンでも夜7時には閉まったりするし、
時間が近づくと買い物中の客を店から平気で追い出す。

実際、ザルツブルグでは閉店前の時間なのに
いかにもうっとうしそうに追い払われた。

他の買い物客の反応を見ている限り、
いつものことらしい。

日曜はもちろんスーパーもやっていないし、
そもそもコンビニはないので水も買えない。

このあたりの事情はヨーロッパの慣習的な部分だが、
近年では緩和される傾向にある。


たとえば、オーストリアよりも
マイナーな国という扱いのクロアチアの
ポレッチというアドリア海沿いの小さな町がある。

ここでも3つのスーパーのうち、
市内中心部のMarketは通常営業、
KONZUMは1店舗が午後3時まで営業で
日曜日に終日閉まっているのは1つだけ。

クロアチアの小さな町でもこうなっているのに、
ザルツブルグの中心部でも
日曜日は水を買うのも困ってしまう。


そして、ホテルでもレストランでも接客は雑。

あるドイツ通の人の話では、
オーストリアを含むドイツ文化圏の場合、
そもそも接客が社会的地位の低い仕事のため、
優秀な人を雇えないというのも理由らしい。

そんなわけで、治安が良くて危険は少なくても、
不快なことはしばしばあった。

引き継がれてきた文化遺産には眼を見張るものがあるし、
アルプスやハルシュタット湖のような
雄大な自然にも恵まれている国だが、
長居したいとは思えない国でもある。

実際、今回はヨーロッパ88日を自由に、
入国と出国の航空券だけを取ってやって来たが、
オーストリアは足早に観光して
次の国であるスロベニアに移った。

ゆっくり滞在したい国もあれば、
ポイントだけ押さえたら立ち去りたい国もある。

残念なことに、
オーストリアは後者の性質が強かった。

とは言え、観光先としては魅力が大きいので、
単なる旅行先としてなら価値が大きいのだが。


なお、物価や旅費のことを考えると、
意外にもドイツと大差なくなっていた。

そのため、ヨーロッパの中でも特に安くはない。

隣国のスロベニアやイタリア、ハンガリー、チェコと比べると
明らかに割高。

そして、サービス水準はもっとも低いようにすら感じる。

となると、見どころだけさっさとチェックして、
あとは周辺国でのんびりする方が居心地が良い。

私も今回はインスブルック、ザルツブルグ、
バートイシュル、ハルシュタット、グラーツと回って
スロベニアの首都リュブリャナに抜けていく。

あとはアドリア海沿岸の街を南下していく予定。


オーストリアは治安がそれなりに良く、
見どころは多い国なのは間違いなかったが、
逆に言えばそれだけだった。

短期旅行には良くても、
ロングステイ向きの国ではないというのが
今回の旅の結論。


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