ブラショフで見つけた2人の歌姫



ブラショフで明確な観光スポットになっているのは黒の教会ぐらいで、それ以外は旧市街というぼんやりとしたくくりでしか場所は特定されていない。

しかもこの旧市街がとても狭い範囲で、徒歩2分か3分ぐらいでぐるりと回れてしまうぐらいの範囲。

そんなわけなので、ブラショフではタンパの丘に登ったり、それ以外の町もブラブラしたり、気ままに時間を潰していた。

その中で、The Hockey Pubで食事をした後でふらりと入ってみた教会がある。

今調べてみたところ、どうやら聖ニコラエ聖堂というのが、その教会の名前らしい。

聖ニコラエ聖堂で遭遇したのは、ルーマニアはもちろんヨーロッパを巡っていても目にかかれないような圧倒的な装飾でも、目を奪われるような美しさでもなく、比較的平凡な教会の見た目でもありながらも、とても美しい歌声が響いている空間だった。

とはいえ、決して人数が多い感じではなく、聖歌隊を探してみても見当たらない。

おそらく死角に入っているどこかであろうと思ったし、よくあるパターンとしては、入口の真上の部分、つまり2階の部分にパイプオルガンが設置されていたり、あるいはそこに聖歌隊が歌うためのスペースが設けられていて、入口からだいぶ進んで、奥の方に入ってから振り返らないと、目に見えないような場合が多い。

何しろ教会は天井が高いので、2階といってもマンションやアパートの2階とは違い、はるかに高いところにあるのが通常。

しかし、この教会の歌声の主は、どうやら上ではなくて奥の右側にいるらしいことが声の方向からわかり、ちらりと姿を見かけたが、なんとわずか2人しかいなかった。

てっきり私は、4〜5人で歌っているのかと思っていたが、その豊かな声量はわずかに2人で発しているものだった。

それぞれが違うパートを歌っているのでハーモニーは生まれているものの、2つのパートしかないとは思えないほどの奥深さを醸し出していた。

これまでも世界各地で、パイプオルガンの音に心を打たれ、落雷にあったようにその場に立ち尽くすようなことはあっても、ここまで美しい歌声を、しかもたった2人で醸し出しているのは、初めて遭遇する場面だった。

邪魔をすると悪いので、再び入口の近くに戻り、音をたてないようにじっと立ち尽くしながらその歌声を聴いていた。

やがてその2人が歌うのをやめてこちらに出てきたが、身なりのいい小太りのおばさんと、最初は子供かと思ったぐらい小柄で、あまりきれいとはいえない格好をしたおばさんで、両方ともだいたい40歳ぐらい。

明らかに主従関係というか、女主人とメイドのような関係に見受けられたが、見た目としてはルーマニア人の普通の人で、あの美しい歌声を出していた歌姫であるとは外見からは予想もつかなかったし、町ですれ違ったとしてもなんの変哲もない中年女性として、注目することもなかったはず。

私は入口の左側にいたが、彼女たちは入口の右側に行って、再び5分ほど歌いだした。

そしてその声が、彼女たち2人から発せられていることが、再び明らかになり、こんな歌声を持つ人達がオペラ歌手になるわけでもなく、町中で普通に暮らしているところに、ルーマニアの文化の奥深さを垣間見た気がした。


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