新興国のジレンマを抜け出せる東南アジアの国はどこか?国別に考察

新興国のジレンマとは、
経済が強くなっていく過程で人件費が上がり、
安価な労働力という強みを失っていくことで
経済成長が止まってしまう現象。

つまり、昔の中国をイメージすると、
とにかく人件費の安さが魅力で海外からも工場が集まり、
国としてもそれを誘致して製造業が盛んになった。

しかし、中国が豊かになっていく過程で
従業員の給料はどんどん上がっていく。

そうなるとメリットがなくなり、
工場はタイ、ベトナム、ミャンマー、バングラデッシュ等に
移転していくことになり、
経済の空洞化が進む。



似た現象として中進国のジレンマがあり、
韓国が直面しているのがこの状況。

今回は東南アジアの話なので、
韓国の中進国のジレンマの話はさておき、
話を勧めていこうと思う。



すでに別格のシンガポール


東南アジアの中にありながら、
シンガポールは1人辺りGDPを見ても
新興国のジレンマを脱して先進国にまで成り上がったと言える。

独裁を行っているという負の側面はあるものの、
それが今のところプラスに機能している。

金融や航空の市場に強く、
国ぐるみで一丸となって取り組めるという強みを
見事に発揮して国際的にも優位な地位を確立した。

日本が民主主義・人権尊重の結果として
羽田空港を拡大するための用地確保等につまづいている間に、
シンガポールは一気にこの分野で成長。

本来、東南アジアでも外れの方という不利な立地にも関わらず、
シンガポール航空や傘下のLCCであるタイガーエア・scootは
有力な会社となっている。


私も隣国のマレーシアに住んでいる時には、
タイガーエアを使って東南アジア諸国に行くことが多かった。

ただし、マレーシアを離れて以降は使う機会が激減。

わざわざ遠回りしてシンガポール経由になるため、
航空券代が安くても時間・体力の面で無駄が多い。

そんな立地に位置しながらも、
ここまで強い地位を確立したのはさすがと言わざるをえない。


ただし、シンガポールはおよそ720平方キロメートルと、
面積では東京23区程度で、
人口は540万人しかいない。

そのため、金融等の主要産業を保持することで
国家として、あるいは1人辺りの平均所得として
大きく成長することができた。

この点は東南アジアの他の国とは大きく事情が異なる。



マレーシアの強みは?

新興国のジレンマを先取りするマレーシア
マレーシアの1人辺りGDPは9,556ドルとなっており、
タイの5,742ドルよりも大幅に高い。

ちなみに、シンガポールは52,888ドル。

新興国のジレンマをまさに経験しているのがマレーシアで、
かつて進出していた日本勢を含む製造業の拠点が
どんどん他の国に流出している。

すでに流出し始めているというよりも、
相当流出した後と言っていい。

それなりに東南アジアの中では物価も高め


では、この国に大きな強みがあるのか?

それを考えると、
まずは人口の少ない資源国であること。

タイと国土の広さは大差ないのに、
人口は3,000万人弱。

6700万人程度のタイと比べても半分以下、
一億人を越えたフィリピンの3分の1に満たない。

そのため、資源による1人辺りの恩恵は大きくなる。

ヤシをはじめとした資源に恵まれている国のため、
この点は大きなメリット。


もう1つの強みは、イスラムの国であるために
ハラールビジネスに強いこと。

ムスリムの厳格さは国によって大きな差があるが、
厳格になるほどに食べ物の規制も厳しくなる。

豚肉を食べないのはもちろん、
豚のエキスが入ったパウダー等の使用もだめだし、
動物の解体の順序や保存方法も厳しい戒律がある。

イスラムの文化に理解のない国より、
当事者であるマレーシアはこのあたりを熟知している。


以前に私もこの国に住んだが、
世界的に見るとイスラムの戒律はとてもゆるく、
もしかすると世界一ゆるいのではないかとも言われている。

実際、スカーフすら巻いていない女性もしばしば見かける。

とは言え、完全に異教徒による販売よりも
ハラールビジネスにおいて好意的に受け取られるのは間違いないし、
仮にもイスラムの国なので知識や経験の蓄積がある。

この点は大きなアドバンテージだろう。


また、中東やアフリカのイスラム諸国から
避暑のための旅行や移住先としても人気がある。

最高気温が40度を越えるような国から見ると、
30度台前半のマレーシアは涼みに来る対象らしい。

欧米圏と異なり、
宗教的な摩擦や差別がないため、
気候の良いマレーシアに来る富裕層が後を絶たない。



根強いタイの製造業

高層ビルが立ち並ぶバンコク
タイと言えば、日本企業にとっても馴染みが深く、
バンコク郊外のシラチャーやアユタヤは日系の工場も多い。

もっと人件費が安いバングラデッシュやミャンマーに比べ、
インフラが比較的しっかりしているのが強み。

電力供給が止まってしまうような事態が少ないため、
工場の業種によってはタイを好むことがまだまだある。


また、世界的に見ても観光に強い国で、
欧米を旅していて見かける国の名前としては、
東南アジアでダントツのトップ。

2番手はベトナムだが、
やはりタイという国のブランドは強く、
マッサージやタイ料理は世界的に人気。

逆にフィリピンやマレーシア、インドネシアの国名を
ヨーロッパや北米の街中で見かける機会はめったにない。


老後のロングステイ先としても人気だが、
移住者に対するビザの条件は徐々に厳しくなっており、
外国人の受け入れ姿勢は少しづつ硬化している。

すでに多くの外国人移住者を確保したため、
バランスを取るフェーズに移行したのだろう。

和食レストランの充実ぶりだけ見ても、
世界有数に暮らしやすい国だと感じる。


まさに新興国のジレンマに陥っている国で、
今後製造業において新しい展開を見せるのか、
それとも別の産業に移行していけるのかが注目される。



少々特殊なフィリピン

セブのアヤラモール
マレーシアに続いて、私が移住した国がフィリピン。

人口ピラミッドが美しく、
今後労働力がますます増えていく国。

主要産業としてはアメリカ等からの
コールセンターのオフショアアウトソーシング、
いわゆるBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)。

かつてはインドが舞台だったが、
より訛りの軽いフィリピンに市場が移っている。


他にもプログラミング等の分野においても、
人件費の安さを武器に国境を越えた請負が見られる。


また、OFWと呼ばれる海外での出稼ぎ労働者が多く、
国民の10人に1人が外で働いているほど。

これは10%の人が海外での就労を経験しているのではなく、
常に10%が外で働いているということ。

つまり、経験者のパーセンテージならもっと上がる。



コールセンター等のBPOにしろ、
海外での出稼ぎ労働者にしろ、
人件費の安さが大きな要因になっている。

そこで懸念されるのが新興国のジレンマだが、
今のところかげりは見えない。

というのも、東南アジアの中でも相対的に英語が得意で、
看護師資格等の保有者も多かったり、
メイドの評価が高かったりとプラス要因があるため。

ただし、フィリピン国内での人件費が2倍、3倍と高騰した時
成長が鈍化することは避けられないだろう。



このままベトナムやカンボジア、
ミャンマー、バングラデッシュ、ラオス等についても
新興国のジレンマと絡めながら書いていくつもりだったが、
そろそろ飛行機の時間が迫ってきたので、
また別の機会に改めて。

以前にフライトの時間に間に合わず、
乗り遅れたことがあるが、
航空券を取り直したり大変だった。

ということで、
これからバンコクから台北に飛ぶので、
向こうで気が向いたら
東南アジアにおける新興国のジレンマの続編を書こうと思う。


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