世界一周をしたぐらいで人生観は変わらない




いわゆる自分探しの旅を始めた人にとっては、世界一周をして人生観が変わったとか、世界観が違ってきたと言えば、喜んでもらえるのだろうと思う。

しかしながら実際のところどうかというと、そんなことは全くなかった。

そもそも私の場合、10年ほど前に初めてヨーロッパに行った依頼、随分海外からは離れていたものの、4年ぐらい前からは東南アジアを中心に生活をしてきたので、特に海外が珍しいわけではなかった。

更に言うと、アジアとヨーロッパというのはすでに行っていたわけだし、新しくオーストラリアや北米には行ってみたが、それによって劇的な何か変化がもたらされたかというとそんなことはない。

基本的にはヨーロッパから移住してきた人たちが作った国なので、オーストラリアにしろアメリカやカナダにしろ、基本的にはヨーロッパに似ている。

そういった意味でも、文化や食生活や町並みというのが、全くの未知というわけでもなかったし、アジアに関して言えば、何しろずっと4年ぐらい住んでいたわけなので、今更新しい発見が次々に起こったというわけでもない。

そう考えてみると、世界一周をしたあとで、何か大きな変化があったかというとそうでもなく、普通に旅行を色々な場所でしてきたのと変わらない。

要は、断片的な積み重ねなのか、それとも一回まるっとまとめて体験してきたかというだけの違いであって、それ以上の考え深さというのはなかった。

そもそも世界一周が終わったところで、私の旅が終わるわけではなくて、それ以降も特に自宅を借りたり、購入したりすることもなく、各国の国境を越えながら、ホテル暮らしを続けている。

そう考えてみると、世界一周というのは、随分とぼんやりと始まって、いつの間にか一応の終わりは迎えていたものの、それ以降もなんら変化はなく、旅が続いているというだけ。

これで人生観が変わったら、むしろ不思議な話だとすら思う。

むしろ私の世界に対する感覚が変わったのは、やはり一番最初の海外旅行だったように感じる。

ヨーロッパに約2ヶ月滞在をして、その間に約10ヶ国を回った。

西ヨーロッパから中央ヨーロッパの主要国はだいたいその時に網羅しているが、あの時に海外がもつ可能性というのを感じたし、日本以外で生活をしてみたいと思ったのも、この時が初めてだった。

その体験がなければ、今の私の生活はきっとなかったと思うが、今回の世界一周がなかったからといって、今後の人生が劇的に変わるかと言えばそうでもないと思う。

世界一周というのは、あくまで概念であって言葉にすぎない。

それは他人に対して説明をする時には分かりやすい記号になるが、自分自身の中では単発でラオスに行ったり、バンコクに行くのと世界一周の中でそういった国々を回っていくのとでは、そこまで大きな違いを感じない。

そもそも今は、旅と暮らしというのがどんどん近づいて、融合してしまった状態なので、旅をするように暮らすとか、暮らすように旅をするという概念自体も手放してしまった。

なにしろ、拠点すらも持たないわけなので、暮らしと旅というは完全に重なっていて一致している。

イコールの関係で結ばれてしまうと、もはやその間に差を見つけること自体に意味を感じなくなった。

そんなこともあって、世界一周をしたことによって、これからの人生に影響を受けるとか、それによって仕事を変えることにしたとか、そういった違いというのはない。

但し、経験を手っ取り早く積むということのためには、プラスになったし、これまで見たことのない国、例えばポーランドとか、チェコとか、そういった国を訪れるきっかけになったので、このことによって今後の居住地であるとか、人生の幅が広がったのは間違いないし、それによって更に自由度は高まった。



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執筆者、伊田武蔵
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