マレーシアでの起業を現地在住者がレポート

クアラルンプール

マレーシア、ジョホールバルに移住して2年弱。この国で起業したいという話を聞くことは多い。

ビジネスとしての結びつき以前に、マレーシアは日本人の移住先ランキングでも上位に入る国。親しみがわくのはよく分かる。しかし、起業となると、それだけの感覚でやっていくのは厳しい。

日本と比べた場合、まだまだマレーシアの商品やサービスの品質は低いので、そこをうまく利用して起業することができれば、たしかに成功を収める可能性はあるだろう。日本人にとっては当たり前の品質が、マレーシアでは供給されていないのだから。

ただ、現地で暮らしてみて分かるのは、すべてが一様に遅れているわけではないということ。たとえば、マレーシアではスマートフォンを持っている人を多く見かけるし、フェイスブックの利用率は世界一という統計もある。部分的には先進国と変わらない暮らしをしながら、一方では大きく遅れていたりもする。

ちなみに、起業と聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべる飲食店だが、マレーシアの日本料理屋のレベルは決して低くない。首都クアラルンプールはもちろん、日本人が1,000人ほどしか住んでいないジョホールバルですら、日本と大差ない味のレベル・メニューの豊富さの日本食レストランが1つや2つではない。私のコンドミニアムからの徒歩圏内だけでも3軒ある。




人件費も無視できないポイント

リスクとしては、他に人件費の問題もある。東南アジアの中では、マレーシアは人件費が高い。これは海外企業の工場が新たにマレーシアに進出してくることなく、タイやインドネシア等に移転していく理由にもなっている。たとえば、カフェのフルタイムのセールスアシスタントの求人は、月に4万円代。時給100円で高めと言われるバンコクと比べると高い。

また、マレーシアはイスラムの国。食べ物はハラールフードと呼ばれるイスラム向きにするか、それ以外の人を対象にした店を出す必要がある。食材調達等にも問題がある。

多人種国家のマレーシアでは、各宗教ごとに休日があり、仕事が進まないという問題も。特にラマダンと呼ばれる断食の月は業務効率が著しく落ちる。

起業する国として、マレーシアは文化や宗教の違いもあるので容易に選択できる国ではない。


私の場合には、元々がネット世界を活動の舞台にしていたので、マレーシアに移住してからも同じ仕事をしているだけで、改めて起業したわけではない。

友人の中には、こちらで会社を設立した人もいるが、彼もネット世界での活動をこちらに移しただけ。

本格的にこちらで不動産業を営む友人は、現地のスタッフを使っている。ただし、マレーシア人の労働意識は日本人ほど高くないので、かなりストレスがたまるようだ。

こうしたリスクも含めて、マレーシアでの起業は考える必要がある。経済が右肩上がりという魅力はあるものの、外国人にとっては参入が容易とは言えない。




税制優遇も

朗報と言える点もある。マレーシアの中でも一部の業種と特区に限った話ではあるが、法人税が10年免除される制度がある。MSCステータスが代表的な制度で、法人税が非課税になる上に、外国人のビザも無制限に発給できる。日本人ひとりにつき、現地スタッフを4人雇わなくてはいけない隣国のタイとは天と地ほどの差。

MSCステータスのMSCとはマルチメディア・スーパー・コリドールの略だが、他にもマレーシアには類似制度があり、起業や海外移転の流入を呼び込んでいる。

マレーシア投資開発庁(MIDA)が募集してるパイオニア・ステータスでは、5年間は法人税の70%が免除となる。他にも投資控除や再投資控除の制度もあり、うまくやれば税制面で大きな恩恵を享受できる。

ただし、これはマレーシアで法人を作って起業すれば、自動的に適用されるわけではない。あくまで適用対象の方が例外的な少数派。

かつては製造業の拠点でもあったマレーシアだが、人件費の高騰によってタイやカンボジア、ベトナム等の他の新興国にその座を明け渡している。それを埋めようとして、マレーシア側としても将来的に強化したい産業を育成するのは熱心で、シンガポールの模倣をしている事情がうかがえる。



ビザの要件の変更リスクも

マレーシア鉄道公社ビル

マレーシアの中でも南にあり、シンガポールに隣接するジョホールバルという街がある。ここで会社に勤めて働いている人の話だと、最近ワーキングビザの要件の変更があったらしい。

そのため、更新前の時期にタイに旅行しようかと思っていたのに、ビザの手続きの先行きが不透明になるため、会社から待ったがかかったという。

マレーシアに限らず、新興国は制度の運用が適当だし、変更にあたっても十分なアナウンスがされないことが多い。問い合わせをしても、的確な答えが返ってこないことは日常茶飯事。

この例はサラリーマンとして会社に勤めている人の話だが、起業した場合も少なからず似たような問題が怒ることは計算に入れておく必要がある。日本において、経営者は節税対策に頭を悩ませ、可処分時間を奪われていくが、マレーシアにおいてはビザや法人の存続の条件変更、役所との対応にエネルギーを奪われやすい。

起業の壁は乗り越えたとしても、マレーシア政府が法律やルールを変更すれば安泰とは言えない。こういったリスクについては、ビザがないと長期的に安定して住むことすらできない(もちろん営業活動も勝手にしてはいけない)外国人として、考えておく必要がある。



そもそもマレーシアに住み続けたいか?

クアラルンプール郊外

私自身も2年にわたってマレーシアに住んで、リタイアメントビザのMM2Hも取得した。今後は好きなだけ住める権利を得たわけだが、正直、これ以上住みたいとは思っていない。

一度はマレー半島を縦断して、北はペナンから南はジョホールバルまで見て回った。クアラルンプールはもちろん、マラッカやイポーも。しかし、住みたいと思える街は見つからなかった。

起業すれば、基本はその街に住むことになる。もちろんスタッフに任せられる仕組みを作ったり、短期で会社をバイアウトすることも可能だが、そううまくいくとは限らない。やはり、現地に根ざした活動を余儀なくされる人が多いだろう。

そうなると、起業環境だけではなく、住環境という側面からも見ておく必要がある。いくらビジネスが軌道に乗ってお金が入ってきても、住みたくもない国に住まなければいけないとしたら、決して人生の質は上がらない。それでは牢獄に入れられているようなもの。

ビジネスのスタートアップにあたって、雑事に囚われたくはないのも理解できる。しかし、今後数年、場合によっては数十年住む国が決まるのだから、その点は慎重に判断した方がいいのではないかと思う。




日本とハラールを結ぶ展開も


日本人にとってイスラム教やムスリムは
どこか縁遠い存在。

しかし、世界的には無視できないだけの存在感があり、
世界で見れば15億人がいるとされる。

東南アジアの中なら、
2億人を越えるインドネシアがイスラムの国だし、
マレーシアも人口は3000万人足らずと少ないが
同様にイスラム。

そして、マレーシアはハラール認証に力を入れ、
世界的にも地位を築いている国の1つ。

このハラールというのは、
イスラム教のルールにしたがって食品を選び、
正しく下降や調理をした食べ物のこと。

認証を受けることによって、
ムスリムが安心して食べられることになる。


ただし、ハラール認証を行っている団体は
有象無象な業者も多いのが現状で、
日本でも権威のない団体がいくつもある。

そうした団体でハラール認証をとっても
他の国では信頼されない。

そこで、国策として信頼度の高いハラール認証を
確立したマレーシアで食品等において
認証を受け、インドネシアも含めて世界展開する、
そんな会社も出てきている。


日本人の優位性を活かすのであれば、
世界的にイメージの良い日本の食べ物で
ハラール認証を受けるのが良いだろう。

マレーシアやインドネシアからも
訪日観光客がやってきているが、
彼らは日本で食べるものに困るという側面がある。

せっかく旅行でやってきても、
ハラール認証を受けたレストランが少ないために
自分の国から持ち込んだ食べ物を食べることになり、
残念な思いをしたという感想も。

そうした問題を解決する手伝いをするだけでも、
十分にビジネスとして成立するだろう。

自分で店を経営しなくても、
ハラールについてのアドバイザーやコンサルトして
既存の店舗を改善する道もある。

もちろん起業して輸出入を営んだり、
海外に店舗を出す展開も考えられる。

日本人がイメージしづらいイスラムとの付き合いには
商機がまだまだ眠っている。


海外に移住するのは本当に難しいのか?


日本を出て海外に住むようになってから
「海外に移住したい」という話をよく聞くようになった。

同時に、

「英語が苦手で・・・」

「海外での部屋選びで失敗しないか不安」

「他の国での生活を想像できない」

「下見で何を確認したらいいか分からない」

「移住後の仕事やお金が問題」

等々の様々な不安や悩みも耳にする。

そこで、10年以上海外で暮らし、
4ヵ国に住んできた経験を凝縮した電子書籍、
『「いつか海外に住みたい」を手の届く現実にするための本』
を無料でプレゼント
することにした。


電子書籍の目次等も掲載しているので、
プレゼントページへどうぞ

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