映画マイ・インターンは生き方の正解を示していないことが素晴らしい


ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイが主演を果たしたことで話題になったマイ・インターンを観た。

この映画は原作ではThe Internとなっている。

ストーリーの概要としては、70歳となり仕事を引退して妻とも死に別れた老人ベンが、ネット通販を中心にしているファストファッションの会社に、シニアインターンとしてやって来ることからはじまる。

彼は日々の暮らしに孤独を感じていて、何か打ち込めることがないかと探していた。

当初はベンが、いかにこの会社に不釣り合いかということの描写が目立っていた。

例えばMacのノートパソコンが社内に置かれているが、それをどう扱っていいかのわからず立ち上げ方に悩んでいるところを、近くの同僚にアドバイスを受けるという場面がある。

しかしその後はいつの間にか、彼の人間力で職場に打ち解けていくのだが、ベンの役を演じているロバート・デ・ニーロの持つ包容力や雰囲気のおかげで、あまり違和感なく関係を築いていく様が描かれている。

一方でこの会社の社長のジュールズは、夫の浮気と、会社に新しいCEOを迎えるかどうかという、公私にわたって二つの大きな問題に頭を悩ませていた。

どうやらマイ・インターンは現代のアメリカの、あるいはさらに広く世界の潮流を意識して作っている模様で、至るところにそのような兆候がみられる。

例えばジュールズの娘が幼稚園に通っているが、他のママ友と話す際の社交のストレスであったり、女性が社会進出をして働くことに対する周りの冷ややかな視線であったり、こういった部分は意図的に誇張して描かれているように感じる。

また物語の構図自体が、女性の上司と年上の男性の部下という構図になっており、ベンとジュールズでは、親子ほども年が離れているので、かなり極端な事例ではあるが、そういった問題にもフォーカスしている。

ベンの方はいつの間にか、周りのインターンやそれ以外の社員とも打ち解け、そして上司であるジュールズの信頼も得たり、一時的にインターン仲間を住まわせたりと、友人関係に恵まれているだけでなく、フィオナという恋人もできて、ひとまずは順風満帆と言える状態を作っているように見える。

ちなみにこのインターン仲間は、ブルックリンで適当な物件を見つけることができず、フィラデルフィアから通おうとしていたが、さすがに無理があるということは、実際にやってみた経験からもわかる。

もちろん日本でも新幹線を使って通勤しているとか、片道二時間、三時間かけてやって来ている人もいるので不可能とは言わないものの、やはり大変な道のりになるだろう。


明確な回答がなかったジュールズの未来

一見ベンは問題が解決して孤独から解放され、充実した老後の人生を生きられる下地が出来たようにみえるが、それに対しもう一人の主役であるジュールズに関しては、そこまで明確な回答が出ていない。

夫のマットは過ちを認め改心することを誓ったので、夫の浮気問題についてはひとまず解決とみていいのかもしれないが、仕事と家庭の両立とかそういったことについては、答えはまだ出ていない。

新しいCEO候補を見つけに各地を回り、サンフランシスコでは適当な候補を見つけられたものの、最終的には彼を迎え入れるのをやめるということで結論は出ているが、その場合には元々の課題であったジュールズだけが非常に仕事ができて、周りがそれについていけていない、という問題は何も解決していない。

また、夫のマットが専業主夫でやっていけるのか、ということについても、何かが決定的に変化したわけではなく、今後も課題が残る。

そういった意味でいうと、単純で分かり易いセオリーが用意されていないというのは、かえって好感が持てた。

というのも、猿でもわかるような法則を作ったり、誰の目にも明らかなぐらいのハッピーエンドを用意すれば納得する人もいるのだろうが、今の世界の潮流としては、そういったわかりやすさ、あまりにも観客を馬鹿にしたような、単純化されたノウハウというのはむしろ価値が無いことを見透かされ、手探りの中で回答を探していくためのヒントが求められているように思う。

そういった意味でいうと、ジュールズの、何も解決していないという感じは、案外計算されて作り出したもので、一部のレビューのようにハッピーエンドを描くのに失敗したわけではないように思う。

そもそも監督のナンシー・マイヤーズは、脚本や製作も兼ねているが、もっとシンプルな落としどころを作ろうと思えば簡単に作れたはず。

あえてそうしなかったところが、この映画の価値であると私は感じた。

それにしてもこの映画の中では、ジュールズが仕事とプライベートの両方で同時期に重大な問題を抱えることになってしまい、それによって心が押しつぶされそうになっていたが、これは現実のビジネスにもあり得ること。

特に家庭を持ってしまうと、別れるということについても莫大なエネルギーがいるし、離婚は結婚の7倍難しいとすら言われるぐらいなので、その部分で心が疲れてしまい、さらに仕事でも難局を迎えるとなると、築き上げたものが一気に崩れる危険性がある。

よく「仕事を頑張るのであれば良き配偶者に恵まれることが重要である」と説かれるが、単純に足し算や引き算で比べたら、結婚の恩恵の方が大きかったとしても、仕事はある時期に大きなマイナスをきたしてしまうことによって、破たんしてしまうリスクもある。

そういった意味でいうと、マイ・インターンのように、タイミング次第で最悪の結末を迎えるようなこともあり、下手をすると今まで作ってきた会社であったり全てを失っていた危険性も否定できない。

そういったマイナスな面を考慮しておかないと、幸せになることだけを結婚の全てだと誤認することになりかねない。

ある意味で全ての答えが曖昧であったというところが、マイ・インターンの魅力で、解釈次第で、どうとでも捉えることができるというのは、現代の世情に合っているのではないだろうか。

個人的には、ベン達がジュールズの母親の自宅に忍び込む場面が一番好きだったが、ああいった子供っぽさというか少年っぽさを、不思議と男は年齢を問わずに心のどこかで渇望しているということを改めて感じたし、それは映画を観ているだけでもついワクワクしてしまうという不思議な魅力がある。



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執筆者、伊田武蔵
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