ラオス、ルアンパバーンの托鉢の柔軟さが、観光業界の未来を指し示している


先日ベトナムのフエのレストランで、イタリア人のカップルと少し言葉を交わす機会があったが、彼らはラオスのビエンチャンとルアンパバーンも周ってきたという。

イタリアからわざわざベトナム中部のフエまで来ているぐらいなので、かなりディープなバックパッカーなのだろうし、ここまで来ているぐらいなのでカンボジアとかそこら辺の周辺国をまとめて回りたいというのが定番の需要らしい。

私自身、3年ほど前にラオスのルアンパバーンに行って来たが、この町は一見すると伝統をしっかりと受け継いで守っているように見えて、実はかなり柔軟でアグレッシブな政策をとっているのが分かる。


ラオスのお坊さんの地位は高い

それを垣間見ることができるのがルアンパバーンにおける托鉢で、ラオスは敬虔な仏教国なのでお坊さんの地位が非常に高い。

政治家であっても高僧には物を言えないぐらいの状態らしく、あくまでもお坊さんの方が社会的な立場としては優位という事になる。

ラオスに限らず、タイやベトナムにおいても、仏教のお坊さんの社会的地位が高いことは感じるが、ルアンパバーンにおいてもこれは例外ではない。

そして、原則として托鉢は朝の5時半ぐらいに始まるものなので、早朝に行われ、明らかに観光客向けではない一方で、地元の住民や信者の人たちだけではなく観光客にとっても一大イベントとなっているのも事実。


観光客に配慮した托鉢

ルアンパバーンに関しては、夜明けの10分ほど前を托鉢の時間にしていて、他の町に比べると随分と遅い時間帯となっている。

これによって、観光客も托鉢の現場を眺めたり、あるいは撮影したりすることができるようになっているし、ルートもわかりやすく設定されている。

さらには、托鉢の間は参加者がカメラ撮影等に夢中になって車に轢かれないように、交通事故防止の観点から車両が通行禁止になっている。

ルアンパバーンは世界遺産にも指定されており、一見すると古都の雰囲気をそのまま残しているように見える。

しかしながら、ただ単に古い佇まいを保存しているだけではなく、実を言うと観光客向けにかなり柔軟な対応をしていることも特徴。

托鉢の時間帯だけではなく、本来であれば裸足で膝をついて見なければいけないところ、環境客に関してはそのようなルールが適用されず、さらには椅子まで用意されている。

当初の形式であるご飯だけではなく、お菓子も托鉢の対象としたりと、雰囲気を壊さない範囲内で観光客向けに相当にアレンジしている。

 

街並みの保存

ルアンパバーンを訪れて思うのは、この街というか村は古き良き伝統が残されていて、変にチェーンのファーストフード店やコンビニができたり、あるいは大型スーパーを作ったりしていない。

どうも旧市街というか街の中心部に関しては、リフォームをするだけでも許可がいるらしく、しかもそれは3年、4年と許可を得るだけでかかることもあるという。

そのような配慮の裏では柔軟に海外からの旅行者を呼び込むための施策が打たれており、ただ単に頑固なだけではなく、かといって先進国や時代に迎合して観光資源を損なってしまうこともない、絶妙な戦略が取られている。

Villa ChitchareuneやSatri Houseのようなくつろげるホテルも完備されていて、気を許して滞在できる。


エドワード・サイードの「オリエンタリズム」の中でも指摘されている通り、観光客や欧米人が求めているアジアのイメージというのは、剥き出しの古い姿ではなく、実際にはほどよくアレンジされたものだったりするので、そのようなニーズに対して見事に応えているのがルアンパバーンという街。

ローカルの持つ魅力をいかにして外部の人間に伝わるようにカスタマイズしていくか、これは今後の観光業界において生き残っていける街と、エゴを押し付けたり、間違った方向に進んでしまう街との一線を画す条件となりそう。

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