アメリカでの病院勤務の裏話



※アメリカで看護師として働く人にインタビューをしたので、
以下はその書き起こし

アメリカの病院での勤務体制は、病棟勤務の場合2交替制です。

日勤も夜勤も12.5時間勤務ずつになります。

日勤の人は日勤専属で、夜勤の人は夜勤専属です。

日勤で働いていた時は、上司も常に同じ病棟にいるし、皆それなりにきちんと働いていました。

何より患者さん、家族、医師の狭間でトイレに行く時間も取れないほどの忙しさです。

上司も監視する人もいないからだと思いますが、夜勤は皆わりと自由に働いています。

基本的にはナースステーション内での飲食は禁止されていますが、夜は皆自由にしています。

私も患者さんの傍を離れるのが怖かったので、たいていナースステーションで記録を書きながらご飯を食べていました。

毎時間看護師と看護補助で協力して患者さんの確認をしなくてはいけないルールは同じですが、患者さんが皆寝てしまっている時など、夜勤の看護師に仮眠の時間はありませんが、記録も全て書き終わっている時は本を読んだり、電話で話したり、自由にしています。

I podで音楽を聴きながら清拭をしている看護師補助もいましたが、仕事さえしていれば大丈夫、という感じで、リーダーも特に何も注意していませんでした。


仕事は分業です。

ICU勤務であれば採血も看護師がしますが、一般病棟であれば採血師が採血してくれる事がほとんどだと思います。

呼吸器系の薬や治療はRespiratory therapistと呼ばれる呼吸器系専門の人が行っています。

ひどい状態の褥瘡の処置やその他のガーゼ交換なども、汚れてしまった場合や夜間の応急処置、アセスメントなどはもちろん病棟の看護師がやりますが、wound care nurseと呼ばれる皮膚に関する専門の看護師がいるので、日中は彼らに任せてしまう事が多かったです。

私の勤務していた病院には存在していませんでしたが、病院によってはIV nurseと呼ばれる点滴を始める専門の看護師もいて、病棟の看護師は点滴の針を患者さんに刺すことはなかったようです。

清拭はほとんどの場合看護師補助が担当しています。

じゃ、看護師は一体何をしているの?と言われそうですが、アメリカはやはり日本と比べると患者さんが服用している薬の種類が多いように思います。

特に朝食後の薬は20錠近く服用している人もわりと頻繁にいました。

抗生剤の投与も多いです。

病院で扱っていない薬を服用している患者さんに関しては、自宅から薬を持参してもらう事もありましたが、基本的には薬は全て病院の物を使います。

持参薬を投与する事はありません。

どんなに若い患者さんでも、しっかりしている患者さんでも、薬の管理は全て看護師が行います。

なので、看護師は一日中薬と向き合っている、と言ってもいいかもしれません。


アメリカの医療従事者は、いかに訴えられないようにするか、を基本に行動している気がします。

なので、患者さんにシフト交替の挨拶をする時なども、自己紹介ではなくて他己紹介をするのですが、“この人が今晩あなたを担当する○○です。

彼女は看護師の経験が○年あって、すごく知識も豊富だし、彼女が担当してもらえるあなたはラッキーだと思いますよ”みたいな感じで過剰に褒めます。

患者さんとスタッフが同じ情報を共有できるように、申し送りは患者さんの部屋の中で、患者さんも含めて行います。

薬も投与する前に投与する薬全てを患者さんに毎回説明してから投与します。

患者さん側も薬の知識を持っている人が多く、一つずつ説明を受けてから投与される事を当たり前としているので、日本の様に一包化というのは成り立たないと思います。

例えば、“これが血圧の薬の○○です。

今朝の血圧は○○/○○だったので私はこの薬を投与する事に問題はないですが、あなたもこの薬を服用する事に問題はないですか?”と言った具合です。

なので、担当患者以外の患者さんの薬を触る事は、まずありません。


日本でモルヒネを投与、と言うと、何だかすごい病気にかかっている様な響きになりますが、アメリカではモルヒネはよく使われる痛み止めです。

モルヒネよりも強い痛み止めもよく使われているし、アメリカ人は日本人よりも痛み止めを多用しています。

痛みの原因は分かりませんが、痛み止めを投与してほしいが為にERに来る患者さんも少なくありません。

本当は痛くなくても、ERに来て、心臓が痛い、と言えば、病院側は患者さんを入院させ、心筋梗塞などが起こっていないかどうか確かめなくてはいけない事を知っている人は知っているし、心筋梗塞時の痛み止めとして、モルヒネはよく使用されています。

アメリカの病院は痛みに対して敏感です。

痛みは感じるべきではない、という様な考え方です。

2時間毎に痛み止めを必要に応じて投与していい、という指示が出ていた患者さんの中に、痛み止めを投与した後、2時間後に目覚まし時計をセットして、眠りにつく、という患者さんも何人か出会いました。

痛み止めの服用が頻繁だったので、ちょっと血圧が下がってきてしまい、それでも痛み止めを投与して欲しかった患者さんは、痛み止めの服用前の血圧測定の前に廊下を歩きまわって血圧を上げる努力をしていました。

その位、痛み止めの投与を望んでいる患者さんがいます。


日本と比べると緩い部分もあれば、厳しい部分もあるので、最初は戸惑う事も多いかもしれませんが、やりがいはあると思いますよ。



看護師をするメリット

アメリカで看護師をするメリットは、私の場合、一番に勤務形態でした。

これは、不便な事でもあったので、不便な面もあったけれど、メリットでもありました。

日本では日勤と夜勤で病棟に勤務する看護師の数が大分違うようですが、基本的にアメリカの場合は日勤も夜勤も看護師の数はほとんど同じです。

日勤は朝6:30-6:45から19:00-19:15までで、夜勤は18:30-18:45から7:00-7:15までの1シフト12時間勤務です。

一般的にフルタイムの仕事は週40時間勤務なので、看護師の場合は、12x3の36時間でフルタイムとなります。

要するに、週3日勤務で週4日休みです。

正社員は他の場所で働いてはいけない、という様な規制もないので、私もそうでしたが、たくさんの看護師が週4日の休みを利用して他の病院でもパートとして働いていました。

アメリカの病院は月給ではなくて時間給、そして年に2回のボーナスの様な物はないのですが、正社員として働いている病院では健康保険に入り有給ももらえる代わりに時給が少し低めで、パートとして働いていた病院は健康保険も有給もない代わりに時給が少し高めなので、パートとしても月に4,5日働いて収入の足しにしていました。

どうしても働ける人が見つからない年末年始など、ボーナスを付ける事を条件にその時期に働ける従業員を募集していた事もありました。

正社員としての病院では心臓内科で働いていたのですが、パートの病院では外科に勤務して、少し違う種類の病状で入院している患者さんの看護に関われた事も勉強になっていい経験になりました。



残業がほぼない事もメリットの一つだと思います。

日本の病院では残業がある事も少なくないかもしれません。

全ての残業に対して残業代がつくわけではない、という話を聞いたこともあります。

アメリカの場合、残業はほぼありません。

というのも、残業しなくてはいけない働き方をしている人は、時間の使い方が下手、という事で、それは、仕事が出来ない人、という事になってしまうからです。

大学でも、どの仕事は看護補助に任せることができるのか、という授業がありました。

リーダーシップをとる能力はアメリカの看護師にとってとても大事な能力です。

なので、看護補助等を使って時間内に仕事を終わらせる看護師は評価されますが、一人で残業してまで頑張って働く看護師は評価されません。

実際、一度15分程残業した日があったのですが、後日上司に呼ばれて15分残業した理由を聞かれました。

私はアメリカ滞在中幾つかの病院で働いていたのですが、中にはいくら看護補助に仕事を依頼しても、仕事量が多すぎて残業ゼロで仕事を終わらせるのは到底無理、という病院もありました。

そういう病院は、比較的卒業したての新人看護師を採用したり、正看護師だけではなく、准看護師も採用している病院でした。

経験ある看護師しか採用しない、准看護師は採用しない、短大卒の看護師は採用しない、と言っていた病院はわりと既に皆のレベルが高かったので、残業なしでも仕事がまわっていく、という感じだったのかもしれません。

病棟の場合は、24時間常に誰かがいるので、自分がやらなくてはいけない仕事は自分の働いているシフト内に終了させなくてはいけないですが、優先順位を決め、次のシフトにまわせる仕事は引き継ぎの看護師にお願いする、というのが通常の勤務の仕方でした。

日勤と夜勤の看護師の数が大分違う日本の病院では、引き継ぎの看護師にたくさんの仕事をお願いするのは中々心苦しくて難しいと思いますが、アメリカの場合はそれが当たり前になっていました。

また、勤務時間外で開かれている出席しないといけない勉強会や病棟の会議などに出席する時も、もちろんお金が支払われます。


正社員で働くと、もちろん有給もあります。

私が働いたテキサスの病院では入社した時に有給が5週間もらえました。

結局1日も消化しなかったので、入社何か月後から使えるのかなどの詳しい事は残念ながら分かりません。

有給を使うのに特に決まりはありませんでした。

私の様にアメリカ出身ではない人の中には、母国にまるまる5週間帰省していた人もいました。

サンクスギビング、クリスマスや年末年始以外なら、いつでも問題なくお休みをもらっていました。

私はパートの仕事に呼ばれなかった時などの週4日のお休みを利用して十分に旅行に行ったりできたので、有給を1日も使う事無く退社しましたが、後日5週間分の有給の金額から20%差し引いた額が銀行に振り込まれました。

日本の病院だと消化できなかった有給が退社後にお金としてもらえる、という話は少なくとも私は聞いた事ありません。

これもアメリカでは病院だけではなくて全ての職種で同じ様なシステムになっているのかもしれないので、看護師とは関係ないかもしれませんが、メリットです。


アメリカでは、看護専門学校というよりも、大学の看護学部に入学して看護師になる人がほとんどですが、看護学部はとても人気なので、競争率も高いし、学校に入学するのは大変です。

何故だかはっきりした理由は分からないのですが、看護師をしている、というと、すごい、と褒められる事が多かったです。

看護学生をしている、というだけで褒められたことも幾度もありました。

何となくですが、これもメリットかもしれません。



アメリカで仕事をしていて経験したトラブル

日本、アメリカに関係なく、看護師として働いている以上好きな患者さんもいれば、そうではない患者さんに出会う事も多いと思います。

もちろん看護師が特定の患者さんの看護を拒否する事はできないのですが、逆に患者さんや患者さんの家族から、看護を拒否され、担当を外されることは起こります。

間違った事をしていない限り、担当を外されても、それが問題視されたり、上司に事情を聴かれたりする事もありません。

こちらが間違ったことをしていた、と誤解されるのを防ぐために、自分から上司に事情を話したことはありましたが。


入院患者さんが退院後、ランダムでアンケートの電話を受け取ります。

これは、メディケアやメディケイドなどと呼ばれる保険に入っている患者さんを対象に行われる、入院中に患者さんが経験した事についてのアンケートで、質問は、例えば、ナースコールを押した後、即座に看護師が対応してくれたか、や、痛み止めの投与をお願いした時に即座に看護師が対応してくれたか、などで、常に即座に対応してくれた、と答えた患者さんの率で、病院が政府から受け取れる金額が決まります。

なので、いかに常に即座に対応してくれた、と答えてくれる患者さんの数を増やすか、というのは病棟で開かれる会議でも毎回議論されるお題だし、病棟や病院に存続にも下手をしたら関わって来るので真剣です。


私の働いていた病棟は残念な事に常に即座に対応してくれる、という回答があまり得られず、どうすればいいのか他の病棟から意見を聞いたり、改善策を探っていたのですが、ちょうどその頃、患者さんからの苦情の一つに外国人看護師の言ってる事が理解できない、というものがありました。

日本、韓国、フィリピン、ネパール、ケニア、シエラレオネ、アイルランド、など、本当に色々な国の人が働いていたので、一体誰の言っている事が分からなかったのかは分かりません。

アメリカ人の上司には多分私たちの苦労や努力は見えないと思うし、この手の苦情を避けるためにももっと分かりやすいように話してください、という様な事を言っていましたが、それからはたまに、ちゃんと自分の言いたい事は通じてるのだろうか?と、患者さんや患者さんの家族と話す時に緊張してしまった記憶があります。


トラブル、と言えば、看護補助はcertified nursing assistant通称CNAやpatient care technician通称PCTと呼ばれるのですが、PCTとの関係もトラブルになる可能性があります。

もちろんやる気があって、頼んだことはちゃんとやってくれる人もたくさんいます。

むしろ、こちらが気付かなかった事に気が付いてくれる人もいます。

PCTの中には看護学生もたくさんいて、PCTの仕事よりもむしろ看護師の仕事に興味があるのか、私の代わりに勝手に患者さんに色々説明していたり、仕事を頼んでものらりくらり交わされてしまったり、そんな事やらなくてもいいと思う、と反論されたり、休憩に行ってくると病棟を離れて数時間帰ってこない人もいたり、常にこんな状態が続いているわけではもちろんないですが、この様な、日本ではまず見ない事が起こるというのも現実です。



アメリカで看護師として働く上で必要な語学力のレベルとは?

私はアメリカで看護大学に入学して看護師免許を取得しました。

私の入学したテキサス州の看護大学は、留学生は入学する際にTOEFLで80点以上取れている証明を提出して入学が許可されました。

TOEFL80点と言うと、英検で言うと準1級位、TOEICで言うと740−840点位のレベルのようです。

これは、大学に入学する時の条件ではなく、看護の授業を取り始める前までに取れればいい、という事でした。

学生の間は、英語を聞き取る能力さえあれば、特に発言をしなくても問題にはなりません。

実習中であっても、今振り返れば私はそこまで多く発言している生徒ではなかったと思います。

ただ、留学生の看護学生は数が少ないので、アメリカ人ばかりに囲まれる環境は初めてで、そこで大分私の耳は鍛えられました。

他の看護大学に通った人の話では、彼女のクラスにいたベトナム人は、あまりに彼女のベトナム訛りの英語が患者さんに通じなくて、それでは看護師にはなれない、と学校を辞めさせられてしまったそうなので、TOEFLでいい点がとれて入学できても、会話の能力を向上させる努力をし続けた方がいいと思います。



あまりに会話の能力が低いと、面接の時に上司に分かってしまうので中々採用されにくいのかもしれませんが、仕事を探すのに病院が規定する必要な英語のレベルはありません。


看護師として病院で実際に働き始めてから、私の英語は格段に変わりました。

変わった、というよりも、変わらざるを得ませんでした。

というのも、言葉を話さずには仕事になりません。

入院患者を受け入れる時は約30分から40分患者さんの部屋にこもってあれこれ質問します。

例えば、緊急連絡先は誰なのか?や病歴などの基本的な質問から宗教に関する質問などまでたくさん質問します。

検査をするにあたって、日本と同じように同意書が必要な物があったり、質問事項があるものがあったりします。

自宅で服用している薬に関しては、日本の様にお薬手帳の様な物はないので、退院時に病院からもらった薬のリストや、手書きの薬のリストや、服用している薬のボトルを持って来る人など様々ですが、名前や分量など一つ一つ確認しなくてはいけません。

発音があまりにおかしいと全く通じません。


私は夜勤専門の看護師だったので、基本的に医師とのやり取りは電話のみです。

心臓内科勤務だったので、モニターを装着している患者さんがたくさんいたのですが、心臓が時折2,3秒止まってしまう患者さんのことを医師に報告する時に、心拍数を意味するpulseと、止まるを意味するpauseの発音が区別できずに困った記憶があります。

医師とのやり取りだけではなく、老人ホームから搬送されてきた患者さんの場合は、何故か何の情報もなく患者さんだけが病院に搬送されてきてしまう事も度々あり、その場合とは老人ホームとも、患者さんの基本的な情報を得るために電話でやり取りしなくてはいけません。

医師に検査結果を電話で知らせなければいけない事もあります。

患者さんの家族も様態確認の為に電話をかけてくることがよくありました。


私は電話が苦手だったので、医師と電話でやり取りをしなくてはいけなかった時、働き始めて最初の数日はプリセプターが代わりに電話をかけてくれていましたが、その後は頼んでもかけてはくれませんでした。

通じなくて困ったこともたくさんありましたが、おかげで私の英語は飛躍的に成長した気がします。

TOEFLは多分看護学部に入学した時ほどいい点数は取れなくなっているかもしれませんが、今の方が通じる英語が話せるようになっていると思います。

英語のレベルが高いに越したことはありませんが、看護師に必要なレベル、というのは正直分かりません。

ただ、いくらTOEICやTOEFLでいい点数が取れても、テストの点数の高さと、医師との電話でのやり取りや、耳が遠くなってしまっているお年寄りの患者さんとのコミュニケーションは少し別物の様な気もします。


もう一つ、是非働き始める前から単語を綴る練習をしておいて損はないと思います。

日本人の名字が外国人にとって耳になじまない名前であるのと同じように、外国人の特に名字は私たちにとっても、とても難しい名前です。

アメリカ、と言っても、ドイツ系の名字も、ロシア系も、ポーランド系もありほんとうに様々です。

緊急連絡先や患者さんの主治医も入院時に確認するのですが、名字を聞き取るのは本当に大変です。

音から名前を書く事はできないので、患者さんも名前を綴ってくれるのですが、これが、全く分かりません。

アルファベットを口頭で綴ってくれるスピードが速すぎて、え?と思っている間に綴り終わってしまいます。

日頃から綴りを聞いて書く練習をしておけば良かった、としょっちゅう思っていました。

電話番号はアメリカ人のスピードで口頭で言われても問題なく聞き取れるようになっていったので、名前も慣れの問題だと思います。

現場で困らないためにも、今からでも練習しても早すぎという事はないと思います。



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