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映画クリムゾン・ピークにみる執着の恐怖


いろいろな国を旅してまわって、結局のところ一番怖いのは人間だと感じるが、その人間の心理の中でも、時として狂気をはらんでしまうのが執着心。

映画「クリムゾン・ピーク」は、まさにそのことを克明に映し出した物語だった。

この映画を観たのはバンコクだったが、人を斬りつけるシーンの痛々しさは、単なる娯楽作品というより、目を背けたくなる映像とか、背中がぞっとする映画とか、そういった生々しい表現の方がよく似合う。

一応ジャンルとしてはミステリーホラーになっているが、大げさなスプラッター等はないものの、背筋が寒くなるような生っぽさがある。

主人公のイーディスは、ミア・ワシコウスカが演じているが、彼女は死んだ母親を初めとして幽霊を見る体験をたびたびしている。

イーディスは父親を亡くし、トム・ヒドルストン演じるトーマスと運命的に出会い、結婚を果たしてトーマスの家に引っ越す。

この際、住み慣れたアメリカを離れ、新天地での生活を始めることになる。

その屋敷は豪華絢爛で、外観からすれば城にも見えるし、観光のために訪れたくなるほど立派。

屋根が雪を被ると、なおさらその美しさは際立つのだが、実際は天井が一部抜けていて、雪が屋敷の中にも降り積もってしまうし、土台の下は鉱山になっていて、どんどん屋敷自体が沈んでいたり、あるいは床板が腐っていたりと、内情としてはかなりぼろぼろ。

さらに、トーマスの姉として登場する、ジェシカ・チャステイン演じるルシールは、その後ただの姉ではないことが、物語が進むにつれて判明する。

露骨な執着心を見せていくのが、まさにこのルシールこの人。

ルシールとトーマスの間の異常な執着、そしてトーマスがこの屋敷に対して見せる異常な執着、そういったものが悪い方向に連鎖して、結果として何人もの犠牲者をこの屋敷は生み出してきた。

そして、次の犠牲者の候補となっていたのが、物語の主人公になっているイーディス。

彼女は、知らぬ間に紅茶やおかゆに毒を盛られ、体の内部から弱っていく。

吐血するシーンもあるし、物語終盤ではふらふらになりながら戦うことになる。

イーディスは、この「クリムゾン・ピーク」という物語において、執着心の犠牲者にも見えるが、彼女も早い段階でトーマスとの結婚に見切りをつけなかったという意味では、結婚生活に執着していたといえるのかもしれない。

もっともそれは、ルシールやトーマスが持っている執着心に比べればはるかに健全なレベルで、彼らの狂気に比べればかわいいもの。

あくまでも常人のレベルを逸脱するような異様さをはらんではいない。

あまりネタばれをするのも何なので物語の詳細については触れないでおくが、この映画を観て感じたのは、土地との結びつきに異常な執念を見せたトーマスは、何も特別な存在ではないということ。

彼は、地下の鉱山開発も含めて、あるいは発明やビジネスも含めてその土地と結びついていたが、単純に先祖代々伝わる土地や、長く住み慣れた土地ということで、自宅に異常に執着する人は洋の東西を問わず多数いる。

もし彼らが執着心を捨ててしまえば多くの問題が解決し、自分だけではなく行政や家族、親族が喜んでくれるとしても、それらを顧みずに留まり続けることは珍しくない。

その結果として、孤独死であったり、経済的な困窮であったり、様々な問題が現実に発生したとしても。

それを極端に描いたのが「クリムゾン・ピーク」という作品だったとすれば、ある意味強烈なアイロニーであるとも言える。



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