オックスフォード大学が2013年9月に発表した「The Future of Employment」というレポートの中で、コンピューターやロボットが職を代替する可能性の高い職業の1つにタクシー運転手が挙げられている。
その確率は89%とされ、ツアーガイドや飲食店のウエイター・ウエイトレス、自転車修理工、ブリーダー、電話のセールス係、パン職人、警備員、美容師、理髪師と並んで高順位にランクインしている。
確かに自動運転車が普及すればタクシーの運転手がいなくても、その場で料金を支払うシステムぐらいは構築がそれほど難しくないわけなので、簡単に実現できてしまう。
GoogleやAmazonも自動運転については力を入れているが、こういったものがどんどん進んでいけば、世界各国でタクシー運転手が引き起こしているトラブルも存在しなくなる。
例えば、マレーシアではメーターを使わずに料金をぼったくってくる運転手もいれば、その料金を断って立ち去ろうとしたら罵声を浴びせてくるような悪質な運転手もいた。
しかし、こういった運転手と遭遇する可能性を気にせずにタクシーを利用することができるということになれば、それは間違いなく社会にとって大きな利益になる。
私は地下鉄やスカイトレイン等の公共の交通機関をできるだけ利用しているが、それはタクシーがあまりにトラブルが多いため。
日本でもそうであるように、タクシードライバーはその社会の中でかなり底辺に近い位置づけになっていることも多く、他の職に就けないため仕方なくタクシードライバーをしている例が多い。
そういった人材の受け皿をどうするかという新しい問題はあるにしても、タクシーという密室のなかにトラブルメーカーを入れておき、顧客とダイレクトで触れ合わせるのはあまり得策だとは思えない。
さらにいえば、レストランのウエイターやウエイトレスも、ごく一部の気遣いができたり人をほっとさせるレベルの仕事をしている人以外は自動化してしまった方がよほど気持ちよく食事ができるので、こういったものをロボットに置き換えてしまうのも個人的には賛成している。
人間の仕事をロボットが奪うことによって失業率が上がるとか、そういった懸念はもちろんあるが、そもそも福祉政策としてよけいな仕事を人にやらせるのもいかがなものか。
それは単純に富の再分配を考えるという別個のテーマについて議論すべき問題で、それこそベーシックインカムとか、そういった論点で解決するべきだし、ある意味世の中には働かせない方が公共の利益になるような人がいることも事実。
ベーシックインカムというと国民の福祉と言う観点で語られることが多い制度ではあるが、西欧の本音としては違う要素も含まれている。
いわゆるまじめ系くずと呼ばれるような人たちとか、反社会性の強い人たちとか、そういった職場に入られてもかえって迷惑なだけで雇用主にとっても顧客にとってもマイナスでしかない人たちは、家にひきこもってオンラインゲームでもしててもらった方が、無害でまだ助かるという思想も多分に含まれている。
実際、深夜のコンビニ等でバイトの態度が悪く、もしこれが自動レジであったり、人間を介さないシステムであったら一日の終わりを気持ちよく終われたのにと思った経験は誰しも持っているのではないかと思う。
高級レストランのウエイターのように、人間が行うことで付加価値を付けられるものであれば選ばれた適正のある人だけに職を残すのは大賛成だが、どんどん機械やロボットに職を明け渡すのは少なくとも消費者目線で見た場合に、決して不利益ではなくむしろ住み心地の良い社会になるだろう。
無機質で人間とのふれあいが少なくなるという懸念もあるだろうが、それは個人的な人間関係を充実させていけばいいだけの話で、不愉快な人間とまで関わる機会が少なくなるのは喜ばしいことに他ならない。