リスボンを含めポルトガルの治安は
一般には良いと言われている。
以前に訪れた時の感触としても、
それは間違っていないと感じた。
日本のように完全に安全なわけではないにしても、
それなりに安全な場所であると。
しかし、今回リスボンにやって来て、
危うく事件に巻き込まれかけた。
というより、すでに巻き込まれたと言っていいのかもしれない。
事の顛末を説明すると、
リスボンの西側にあるモンサントという山へ行った後、
来た時と同じ道をたどって駅の方向へ。
山を降りると一本道になっていて、
ほとんど人は通らない。
道の先は車が下を通っているため、陸橋になっている。
このあたり一帯は特に荒廃したエリアというわけでもなく、
治安が悪そうなピリピリした感じは受けない。
モンサントからの帰り道、
妙に敷地の大きな建物(児童施設?)から、
10代終わりぐらいの少年の2人組が出てくるのに遭遇した。
日差しをさえぎるもののない一本道で
7月のリスボンは暑いので足早に歩いていると、
彼らとは距離ができていたようで
声が離れた場所から聞こえていた。
最初は2人でふざけあっているのかと思っていたが、
怒気を含んでいる気がしてふと振り返ってみると
こちらに向かって叫んでいた。
おそらくポルトガル語なのだろう。
何を言っているのかは分からない。
周りに誰もいなくて、
どう見てもこちらを見ながら大声を上げているので、
私に向かって何か罵声を浴びせているらしい。
距離は20メートル以上できていたし、
変に逃げたりすれば追いかけるのを誘発するだけだと思い、
そのまま歩いて行くことに。
相手が追ってきた時のことを想定してみたが、
武器になるような物は手元にない。
バッグにはパスポートとiPhone、財布、各種カード、
各国の通貨が入っていて状況がとても悪い。
パソコンがないのがせめてもの救い。
まずいことになったと思っていたら、
陸橋を降りたところで再び激しく威嚇してきた。
私の方が先に降りる形になるので
上からつばを吐いたり(離れていたので当たりはしなかった)、
陸橋を踏み鳴らしたり、何かを叫んだりしている。
ちなみに、上記写真はモンサントへの行きに撮影したもの。
どうも文句があるのは片方の男だけで、
もう1人はついてきているだけらしい。
陸橋を降りると団地のような場所になった。
人目も出てきたためか、
2人組は陸橋での威嚇を最後に去っていった。
特に面識も関わりもない相手なので、
人種差別的なことなのか、日本人嫌いなのか、
中国人か何かと誤解したのか、
移民排斥のようなことなのか、
大体そんな方向のことなのだろうと思う。
その類の理由でここまで露骨に
怒りをぶつけられたのは初めてだった。
この後、世界を一周する中で、
ナイアガラの滝のカナダ側にて
「チーナ、チーナ」と7人の大学生ぐらいの集団に
からかわれることはあったが、
悪意の強さということで言えば
このポルトガルの件が突出している。
無事に駅までたどりつくことができたとは言え、
意味もなく身の危険を感じることに。
人種や国籍の壁を感じずにはいられなかった。
めったに置きない凶悪犯罪や
注意していればリスクを相当減らせる財産目当ての犯罪より、
ヨーロッパや北米においてリスクなのは
こうした人種差別的な問題だろう。
遭遇率が高いという意味で。
この一件をもって、
ポルトガル人が危険であるとか、
リスボンの治安が悪いと言うつもりはない。
たまたま事件に遭遇したというだけの話で、
統計的なデータでもなんでもないので。
まして、この類のトラブルはどの国でも起こること。
世界有数の良好な治安を誇る日本であっても、
このレベルのことは日常的に各地で起こっているはず。
そして、わざわざ警察沙汰にして
時間と手間をかけて訴えを出しても、
操作らしい操作は行われないはず。
そのため、大半の被害者は被害届も出さないし、
統計には現れない類のトラブル。
今回は偶然に私が当事者になったということにすぎない。
とは言え、
のんびりと山歩きをしようと思っていた帰り道で、
まさかの威嚇を受けるとは予想しなかった。
完全にリラックスした気分だっただけに、ショックも大きい。
リスボンの中でもモンサントという山は公園になっていて、
自然の中をゆっくり歩ける場所。
そこを降りる時にこんな殺伐とした相手と遭遇したのは
不意打ちを受けた気分だった。
これまでのトータルで見てもリスボンの治安は良いし、
付近のシントラやカスカイスはもちろん、
ポルトガルの他の街についても同様の印象は持っているが、
油断は禁物であることを改めて感じることになった。
考えて見ると、
リスボンの前にいたダブリンでも、
目の前で暴行事件が起こる現場に遭遇した。
こちらも治安の良いアイルランドの首都での話で、
別に物騒な場所というわけではない。
人通りの少ないあやしげな路地裏でもなく、
普通にレストランが立ち並ぶ道での出来事だった。
そういう場面に出くわす運命でも背負っているのか知らないが、
さすがに自分が巻き込まれるのは勘弁してほしい。
リスボン以外の街の治安
今回はリスボンを起点に、
オビドス、ナザレ、ファティマ、コインブラ、ポルトと
ポルトガルを縦断してきた。
ポルトからはマドリッドに飛び、
そこからは一気に西ヨーロッパから東欧のポーランドへ移動した。
せっかくなので、
リスボン以外の街の様子についても簡単にまとめておく。
まず、オビドスは小さな村で周囲が城壁で囲まれている村。
小山の上に位置し、かつては城塞都市だったのだが、
街というよりは村という規模。
建物がかわいらしく、
多くの観光客がリスボンから日帰りでオビドスを訪れる。
こじんまりとしていて小さな村だし、
殺伐とした地区もない。
何日か泊まってみたが、平和そのものだった。
ヨーロッパでは大都市ほどスラムの地域ができる傾向にあり、
小さな村の方が治安がよくなりがち。
オビドスにもこの傾向が当てはまる。
リスボンから日帰りで訪れるのが一般的だが、
宿泊して朝にオビドスを歩くと
昼間とは打って変わってしんと静まり返っていて、
別の一面を見ることができる。
日程が許すのであれば、
ぜひとも宿泊してみてほしい村。
続いてはナザレ。
こちらは古くからの漁師町で、最近はビーチにもなっている。
この写真は丘の上に登り、
ナザレを一望しながら撮影したもの。
滞在が2泊だけだったのと、
土地勘がつかみづらい街だったので全貌は把握できていないが、
中心部は特に物騒な感じはしなかった。
ただし、漁師町は一般に気性が荒いことが多いため、
エリアによっては多少気をつけた方がいいかもしれない。
ナザレでも一部にはスリや置き引きの被害があるということなので、
安全を過信しすぎてビーチに持ち物を放置しておくと、
盗まれる危険がある。
また、私が訪れたのは真夏のハイシーズンだったが、
シーズンオフは雰囲気が変わる可能性がある。
ファティマは聖母マリアの奇跡が起きたとされる街で、
大規模な広場の中に教会等があるほかは何もない。
ただただ中途半端な人口密度の街が広がる。
広場近くにホテルを取っていたので、
それ以外の場所の様子は詳しくはわからない。
ただし、ファティマで広場周辺以外の場所に泊まる人は
あまりいないのではないかと思う。
その一帯は治安に不安を感じることはなかった。
ポルトガルを縦断する中でも、
ファティマは突出してホテル代が安い街だった。
コインブラはポルトガルの真ん中近くにあり、
陸上交通の要所になっている。
当初はここから鉄道かバスでマドリッドまで行こうかとも思ったが、
せっかくなのでポルトまで北上することにした。
古くから栄えるコインブラ大学が有名な他、
川沿いの景色も綺麗な街だった。
1人で夜歩きをしても不安を感じない程度に、
治安の良さを感じた。
特に夕暮れ後の丘の上の路地裏は
幻想的な照明で人を魅了する所がある。
川があり、丘があり、風光明媚な古都。
最後にポルト。
こちらはポルトガル北部の街で、
リスボンに続き人口が二番目の都市。
単純な街の規模として、
唯一リスボンに張り合えるレベルの街。
大きな街のため、
隅々まで見て回ったわけではないが、
私が数日の滞在の間で見た限りでは
特に危険な感じはしなかった。
ポルトガルらしく坂道や丘の多い街で、
その点でもリスボンと雰囲気が似ている。
特にドウロ川付近は、
川の両側に広がる丘と街並みが美しいので、
滞在中に何度も訪れてしまった。
ドン・ルイス1世橋周辺は
昼も夜も観光客でにぎわっていた。
観光客を狙った犯罪もあるのだろうが、
ヨーロッパの中でもブルガリアやルーマニアのような
特別危険な雰囲気はない。
ポルトガル縦断には約1ヶ月を費やしたが、
遭遇したトラブルはリスボンの1件のみ。
それを多いと見るか、少ないと見るかは人それぞれだが、
この国の治安ということで言えば
特に問題を抱えているとは思わない。
私の主観だけではなく、
イギリスのエコノミスト誌が発表したデータでも、
ポルトガルは平和度で19位にランクインしている。
ちなみに、このランキングでは日本は6位、
オランダが23位、スペインが29位、
以前に居住したことがあるマレーシアが31位となっている。
また、外務省が発表しているところによると、
ポルトガルの治安白書で最も多い犯罪が車上荒らしで、
ついで家庭内暴力、暴行、飲酒運転、不法侵入の順番。
旅行者にとって家庭内暴力は直接的には関係ないし、
レンタカーを借りたりしない限りは
車上荒らしの被害に遭うこともない。
不法侵入もホテルに入ってこられるケースは限られるだろう。
そう考えると、かなりの部分は
外国人旅行者には縁が薄い事案ということになる。
ポルトガル縦断の時期は7月から8月にかけてだったが、
問題だったのは犯罪よりもむしろ暑さだった。
日中は気温が30度を越えるので、
街歩きにはなかなか厳しい。
また、日差しも強かった。
空の強烈なまでの青さは素晴らしかったが、
以前のように冬の方がポルトガルの価値は高いかもしれない。
何しろ冬でも比較的温暖なので、
ヨーロッパ旅行の中で避寒地として活用するには
ちょうどいい国となる。
また、ポルトガルは物価が安いことでも知られる。
東欧のチェコやポーランドと
同じぐらいの費用で滞在できるため、
旅行者のふところにも優しいし、
冬の暖かさとあいまって住んでみたくなる。
以前にはビザの条件について確認したことも。
さらに言えば、イワシ料理をはじめとして
味覚が日本人と合うのもポルトガルの良いところ。
日本にカステラや天ぷらを伝来させたのもポルトガル人だし、
パステス・デ・バカリャウ(Pasteis de Bacalhau)という
タラを塩漬けにした料理や、
豚肉とあさりを炒めた
カルネ・ド・ポルコ・アレンテジャーナ
(Carne de Porco a Alentejana)も絶品だった。
その他にも、バカリャウ・ア・ブラス(Bacalhau a Braz)や
アロス・デ・マリスコス(Arroz de mariscos)等、
美味しい料理に事欠くことがなかった。
ポルトガルは治安が良いだけではなく、様々な魅力を持つ国。
また、訪れることになるだろう。
なお、今回の縦断の足となったのは、
もっぱら長距離バスだった。
外国人でも特に分かりづらいことはなく、
クロアチアのように極端に態度が悪いこともなければ、
ブルガリアのように英語がまったく通じないこともなく、
旅行者にとっても使いやすいものだった。
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