ヨーロッパの中でも、移住先として人気のある国の一つとしてフランスがある。
私もフランスには住んでみたい町がいくつかあって、首都のパリはもちろん、南仏のアルルやアビニョンも心が惹かれる町。
先日は、ナントに留学をしていた人の話も聞くことができた。
他にもモンペリエやマルセイユなども行ったことがあるが、こういったところも含めてフランスへの移住について考えてみた。
パリの住環境
まずはパリについてだが、ここは確かに利便性が高く、メトロが発達しているので、東京に住んでいるのと変わらない感覚で移動することができる。
入り組んだ路線図は東京を彷彿とさせる。
しかしながら近年は治安の悪化も指摘されているし、メトロが安全な乗り物とは言えない部分がある。
駅が多いのは助かるが、ニューヨークやワシントンと同じで安全面に乗り物を抱えた移動手段。
モンマルトルの丘や凱旋門、シャンゼリゼ通り等が有名だが、パリは一部のエリアはとても汚く、花の都のイメージからはかけ離れているのが実際のところ。
貧しい移民が住み着いたスラムエリアもできてきて、外国人はもちろん、地元のフランス人でも近づかない場所も増えている。
当然ながら、世界的に見ても家賃は高く、ごみごみしている一面も持っている。
さらに言うと、パリ市内にはあまり自然が多くはない。
同じヨーロッパの先進国の首都であるロンドンと比べても、公園等の緑地の少なさは際立っている。
ロンドンがハイドパークやケンジストンガーデン、セント・ジェームズ・パーク、リージェンツ・パーク等の大きな公園を市内に複数抱えるのに対し、パリは郊外にヴァンセンヌの森やブローニュの森を抱えるぐらい。
また、部屋を借りる場合、慢性的な物件不足によって大家側の力が強く、極端な貸し手市場となっている。
結果、粗末な家を高い家賃で借りることになるし、そんな条件でも物件の契約には他の候補者もいるので、先んじて大家からの信頼を勝ち得る必要がある。
こういったことを考えると、住環境としてはとりたてて魅力を感じない。
むしろそれよりはもう少しこじんまりとした町の方がいい。
アビニョンは移住先の候補になる
南仏のアビニョンという城塞都市の場合、決して大都市というわけではないが手頃な大きさで、とても落ち着いた町並みになっている。
長距離鉄道が停まるぐらいの規模だが、基本的に町の中は全て徒歩圏内なので、車がなくても移動するのに困ることもない。
フランスに移住するのであれば、アビニョンは魅力的な選択肢となる。
ただし、それなりに便利に住むのに必要な店舗は揃っているものの、娯楽も少なく、退屈な感も否めない。
住むとしても、1年が限度だろうか。
もしくは冬を避けて、春から秋までの期間でアビニョンでの生活を終わらせるのがベストかもしれない。
アルルはどうか?
アビニョンと同じく南仏のアルルも、現地を訪ねて住みやすい町だと感じた。
ここはゴッホが晩年を過ごした町として有名で、「星月夜」や「夕方のカフェテラス」といった彼の絵のモチーフにもなっている。
ゴッホが画家仲間を誘うために黄色い家を用意したり、ゴーギャンと揉めたり、「ひまわり」や「郵便配達夫ルーランの肖像」を描いたのはこのアルルという町。
ひまわりは連作だが、元々は黄色い家の各部屋を飾るために描かれたものだった。
結果としてゴーギャン以外には断られてしまったが。
ゴッホが気に入った光が燦々と降り注ぐ気候は、「まるで日本のようだ」と日本画に憧れたゴッホに言わしめた。
今でも落ち着いた佇まいと、観光客が来るために適度に外国人に慣れた環境は住環境として面白い。
フランスで暮らすのであれば、アヴィニョンと並んで候補となる。
マルセイユには懸念材料も
続いてフランス第2の都市、マルセイユだが、正直ここは安全に住めるかどうかという点に若干の懸念がある。
以前に行った際には特に問題はなかったものの、港町は基本的に気性が荒く、治安が悪化しがち。
マルセイユにおいても、そのような点を指摘する声は少なくない。
これまで私が住んできたマレーシアやフィリピンの町でも、偶然にも近くに海があるという状況はあったが、特に見に行くこともなく、何か用事があればたまたまマニラ湾の近くを通るという程度なので、特別海に価値を感じているわけでもない。
そういったことを考えると、あえて不安の残るマルセイユに移住をすることは、あまりメリットがないように思う。
また、ヨーロッパの大都市は今後もテロの危険が拭えないし、マルセイユはその標的にされる可能性がある規模の街。
観光に行くには魅力的だったが、生活の場に選ぶ理由は見当たらなかった。
フランスは地方にも強みが
パリやアビニョン、アルル、マルセイユ以外でも、中堅規模の都市とか、あるいはもう少し小ぶりな町、あるいは村も、フランスであれば悪くない。
食べ物が合わないということもなかったので、東南アジアの都市のようにローカルフードを食べていても、特に苦にはならない。
マレーシアやフィリピンの場合、外国人向けのレストランがそれなりに充実していないと暮らすのは厳しかったが、ヨーロッパの場合は、基本的に現地のレストランに入れば、それで全然やっていけるので、そういった意味でフランスの小さな町に移住をして、1年ぐらい暮らすのも、なかなか面白い選択肢だと思う。
フランスの最も美しい村として、EguisheimやNajac、Riquewihr、Domme等の多くの村が挙げられており、こうした中から選ぶのも興味をそそられる。
とは言え、魅力的な町が数多く存在することを考えると、いきなり住み始めるのがベストなのか、それともあくまでも長期旅行という範囲に留めるのがいいのか、この点は悩みどころ。
現状、フランスを含めたシェンゲン圏の場合、ビザ無しでも90日までは滞在できるため、それなりに長く旅行を楽しむことも可能。
フランスに移住して国内に一つ拠点を持って、そこを基点にして日帰りであったりとか、あるいは短期の旅行を繰り返すのももちろん選択肢になる。
フランス国内はTGVを含めて鉄道網も発達しているので、アクセスのいい場所に住めば、そこからの旅行も幅が広がる。
例えば、パリに住むのではなくて、パリ近郊の町に住んで、オペラを観に行きたいとか、買物をしに行きたい時、ルーブルやオルセー等の美術館を訪れたい時だけパリに移動し、さらに地方都市に出掛ける時にもターミナル駅であるパリを経由する方法もある。
千葉や神奈川に住みながら東京を活用するように、パリを活用しながら暮らすのも、フランスに移住する場合の選択肢の一つになるだろう。
そう考えると、選択肢が広がってくる。
住環境として厳しい要素
パリやニースのような世界的に有名な街ではテロも起こっており、そういった意味でもフランス移住にあたっては不安材料になる。また、テロを抜きにして治安を考えても、パリは決して安全な街とは呼べないし、そう考えると地方のあまり大きくない街の方が住むのなら安泰という気もしてくる。
現実問題としては、世界的に報道されるようなショッキングなニュースよりも、日常的な人種差別やスリや空き巣のような財産犯の方が遭遇率が圧倒的に高く、生活に密接に関わってくる。
フランスは男女間の平等には敏感である一方、人種差別は色濃く残る国。
これはパリばかりではなく、郊外に出ても同じこと。
まして移民・難民で治安や経済、社会がかきまわされている状態では、とばっちりのような罵声を浴びせられる覚悟も必要だろう。
そうなると、治安面を理由に外すのはパリとマルセイユ、範囲を広げるならニースだろうか。
もっとも、元からニースに住むつもりはないので、治安面を理由に外す範疇に入っても入らなくても、どちらでも影響はないのだが。
加えて考えておかなくてはならない点として、フランスのサービス水準は低いということ。
しばしば働きやすい環境が整っているということで、日本の労働環境と比較してうらやましがられたり、先進的なモデルとして紹介されたりもするが、労働者の権利が守られている一方で、提供されるサービスのレベルは低い。
たしかに週35時間労働制が普及していたり、毎年5週間程度にわたる有給休暇は海外でサラリーマンをするつもりなら魅力的だろう。
日本で問題になっているサービス残業がないのも同様。
ただし、私のように現地で就労する気がない場合、フランスは単にサービス水準が低い国となってしまう。
ストライキで地下鉄等の公共交通機関が止まるという、まるでイタリアかギリシャのような話もいまだに起こる。
治安やサービス水準を先進国と発展途上国というくくりで考える事自体、あまり適切ではないだろう。
タイのバンコクは途上国でも安心して地下鉄に乗ることができるし、パリよりもよほど安全。
こうしたリスクもフランスに移住する前に覚悟しておかなくてはならない。
また、英語がいまいち通じないお国柄でもあるし、物価や生活費が高い割には住み心地がいまいちな気もする。
特に最近は東欧のチェコやポーランド、ハンガリーの国内を巡っているため、生活環境に大差なくて物価が安いこれらの国の諸都市の方に心が傾きつつある。
海外に移住するのは本当に難しいのか?
日本を出て海外に住むようになってから
「海外に移住したい」という話をよく聞くようになった。
同時に、
「英語が苦手で・・・」
「海外での部屋選びで失敗しないか不安」
「他の国での生活を想像できない」
「下見で何を確認したらいいか分からない」
「移住後の仕事やお金が問題」
等々の様々な不安や悩みも耳にする。
そこで、10年以上海外で暮らし、
4ヵ国に住んできた経験を凝縮した電子書籍、
『「いつか海外に住みたい」を手の届く現実にするための本』
を無料でプレゼントすることにした。
電子書籍の目次等も掲載しているので、
プレゼントページへどうぞ。
電子書籍のプレゼントページへ