モンゴルの遊牧民のように移動し続ける生き方

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放牧を生業とするモンゴルの遊牧民について
書かれた本を昔読んだ。

彼らは頻繁に自分自身が集落単位で動き、
周囲の集落も移動しているため、
出会い・再会・別れが日常的になっている。

固定された住所もないので、
会いに行こうと思えば相手を探すところから始まる。

季節によって、年によって居場所が異なるので、
必ずしも見つかるとは限らない。

相手の居場所についての情報を集め、
牧草の状態等も含め推理をして探すことになる。


圧倒的な人口密度の低さの中で、
つまり人間がまばらな中で生き抜く知恵なのか、
モンゴルの遊牧民は客人を盛大にもてなす習慣があると言う。

豪華な食事だけではなく、
自宅に初対面の人を泊めることも多いらしい。

外の様子を聞けるという情報収集目的もあるのだろうが、
お互いに旅をしながら生きていくためには
このような助け合いの習慣が有効だったのだろう。


何しろ、国土の大部分が
めったに人の住んでいないエリアで、
ホテルなんて都市部を除けばほぼないのだから。


ただし、その本の著者(たしかイギリス人だった)が感じたところでは、
彼らは別れの場面では淡白だと言う。

もてなしぶりとは裏腹に思えるほど、
去って行く時にはあっさりしていると。

著者自身も2ヶ月ほど滞在していた一族の元を去り
別の集落へ移動する時に受けたのは、
来週には戻ってくる人を見送るような
気軽な感じだったらしい。

出会いと別れが日常的な遊牧民にとって、
別れは大きな悲しみではないのかもしれない。

縁があれば、また会える。

もし縁がなければ次はないが、
他の出会いは日々訪れる。

そんな執着のない生き方は身軽でいいと思った。


この数年、住む国がどんどん変わり、
出会いや別れが増えるようになった。

出会うことがあっても、
次に会うのはいつか分からない。

1度きりということも多々ある。


活動を振り返っても、
同じことを毎年繰り返すわけではなく、
どんどん内容が変化している。

人と会うという場面を考えても、
かつては3年ぶりに日本に一時帰国した際、
3〜4名の少人数のオフ会を
数日に渡って繰り返し行なったこともある。

人数が多すぎて日程の調整が困難を極め、
このやり方は1度きりとなった。


その後も条件を付けて人数を制限しつつ
食事会やお茶会をしてきたが、
同じことを繰り返すことを前提としていない。

「都合がつかないので、次回に参加します」
とメールをもらうことがあるが、
残念ながら同じ条件で開催することがほぼない。


その時々で興味の移り変わりもあるし、
それぞれの活動にかける力の比重も違ってくる。

いつでも同じ場所にいて安心感を与えてくれる
駄菓子屋のおばあちゃん的な存在ではないので、
おのずと出会いや別れを繰り返しながら変わっていくことに。


他人というのは生き方のテストケースでもある。

こんな風な生き方もあるという事例なので、
タイミングによって出会いたい人も変わる。

お互いに参考にできる部分があれば、
無意味な遠回りをせずにより良い生き方ができるだろう。

自力で一から十まで開拓するより、
すでに存在する事例を参考にした方が早いのだから。


固定化された人間関係のよどみの中で
デジャブだらけの会話を繰り返すよりも、
新しくなっていきたい。

変化していきたい。

そうした生き方を選んだ以上、
おのずと出会いと別れ、そして再会を繰り返すことになる。


そんな中で、理想は別れに心を揺らさないこと。

出会いや再会を喜びながら、
モンゴルの遊牧民のようにあっさり別れたい。

感傷にひたるより、
別れすら日常の一部として受け入れたい。


初対面の人とのコミュニケーションに悩む人は多いが、
別れ方も同じように重要。

限られたキャパシティーしかない以上、
すべての人と同じように関係を継続していくことはできないし、
居場所が変わる以上は一時的な別れも生まれる。

その度に重くなることなく、
自然に別れができるようになればいい。


これまでの経験で感じたのは、
住む場所が離れたところで、
会うべき人には再び会えるということ。

それが数ヶ月先なのか、
何年か先になるのかは分からない。

それでも、案外思わぬところでニアミスをしたり、
何かの拍子にばったり遭遇するということは
意外にあるものだったりする。


本気で会いたければ、
連絡を取って相手のいる街に行けばいいだけ。

それができるだけの場所や時間の自由もある。

そう考えると、執着を捨てて、
別れをもっと気軽なものにできそうな気がする。


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