東欧の物価がヨーロッパの中でも極端に安く、
東南アジアよりも安いかもしれないという噂を以前から聞いていた。
居住環境としてヨーロッパにも注目していたが、
ポーランドやチェコもその候補に入っている。
主要国は大抵足を運んでいたが、
実は東欧は未踏の地だったこともあり、
急遽ポルトガルにてポーランド・クラクフ行きの航空券を予約した。
ポルトからスペイン・マドリッドへ飛び、
プラド美術館を久しぶりに訪れたりして
数日過ごしてからクラクフへ。
その後、スロバキアのブラティスラバ、
チェコ・プラハへも行ってきた。
また、この時とは別に、
ブルガリア3都市
(ソフィア、プロブディフ、ベリコタルノボ)、
ルーマニア4都市
(ブカレスト、ブラショフ、シギショアラ、シビウ)、
ポーランド4都市
(ワルシャワ、クラクフ、ウッチ、ヴロツワフ)、
チェコ2都市(プラハ、ブルノ)、
ハンガリー4都市
(ブダペスト、デブレツェン、ペーチュ、エゲル)を
87日かけて周ってきた。
現地調査で得られた東欧の物価の実態について
まとめておこうと思う。
ブルガリアは物価が安いのか?
ネット上の情報を見る限り、
東欧の中でもブルガリアが安く滞在できるとされている。
ソフィアを訪れてみると、
タクシーから眺める街並みはそれなりにきれい。
しかし実際に歩いてみると、
物資がいまいち足りていない印象。
服にしても、やたらに古着屋ばかりが目立つ。
一部の観光地や
メインストリートのVitosha Boulevardを除くと
レストランも少なく、
切り売りのピザ屋やデリカテッセンが多い。
中級ホテルの金額はハンガリーやポーランドと大差なく、
レストランにしても同じことが言える。
安宿を周る旅の場合は分からないが、
中級以上のホテルだと極端な物価の安さは感じない。
むしろ移動の際に英語表記がないことの不便さとか、
マイナス面の方が目につく印象だった。
東欧主要国の中でもブルガリアは
特に経済が弱い国の1つ。
その結果として物価も安めな傾向があるものの、
日本人が生活レベルを落とさずに滞在することを考えると
特にメリットがあるようには思えない。
ちなみに、プロブディフの4つ星ホテルでは
ホテルスタッフが犯人と思われる盗難事件に遭い、
パソコンを盗まれた。
同じホテルの同時間帯に別の宿泊客も
被害に遭っていたことが翌日に判明。
残念ながら、
こうしたこともあるのがブルガリアで、
経済の弱さが悪い意味で出ていた。
経済力=物価ではない
その国の一般の人の所得や一人あたりGDPと
物価が比例しないことは、東南アジアでも見てきた。
たしかに現地の人の暮らしにおいては、
収入と支出には相関関係がある。
しかし、日本人がよそ者としてやって来た場合、
旅行者にしろ移住者にしろ、
現地の人と同じ基準で暮らしていくわけではない。
そのため、東南アジアでもバンコクとジャカルタのように
明らかに経済格差のある街であっても、
生活費はほとんど変わらなかったりする。
外国人向けのコンドミニアムの賃料も、
レストランでの食事代も大差ない。
これは東欧においても言えること。
1人あたりGDPを見ると、
チェコ(18,435ドル)とブルガリア(7,751ドル)では
実に2倍以上の差が開いている。
しかし現地に旅行者として入ってみて感じる物価は、
せいぜい2割程度しか違わない。
ブルガリアがチェコに対し、
極端な価格優位性を持っているとは到底思えない。
ブルガリアの隣国で、
経済力も大差ないルーマニアにも同じことが言える。
逆にインフラの整備のレベル、
食事の美味しさ等を考えた時、
むしろチェコやポーランド、ハンガリーといった
東欧の中では経済が強い国のほうが条件が良い。
滞在コストがブルガリアやルーマニアと
ほとんど変わらないことを考えると、
コストパフォーマンスにおいては
圧倒的に有利と言わざるをえない。
旅行者向けの物価というのは面白いもので、
このようなことは世界中で見受けられる。
特に一定水準を越えて経済が弱くなっても、
そこから先は外国人向けの滞在費とは無関係だったりする。
アジアにおいてもバンコクよりミャンマーのヤンゴンの方が
ホテル代は2倍ほどする。
ラオスはタイよりも食費は高め(特に魚介類)だし、
ジャカルタのコンドミニアムの家賃はバンコクと同水準。
こんなことは日常茶飯事だったりする。
そのため、経済力が弱い国に行けばお得なわけではない。
そして東欧について見てみると、
チェコ・ポーランド・ハンガリーの下に引かれるラインが
1つの分岐点になっているというのが現地を訪れて感じたこと。
ここからいくら1人辺りGDPが下がったところで、
旅行者として受けられる恩恵は小さい。
ドミトリーを渡り歩くような
極貧旅なら分からないが、
中級ホテル以上に宿泊するような旅であれば。
なお、友人がコソボやアルバニアにも行ってきたが、
話を聞いた限りでは魅力がいまいちな感じがした。
実は東欧については、
ブルガリアやルーマニアの西側、
つまりアルバニアやマケドニア、セルビア等も
改めて訪問してみる予定だった。
しかし、居住環境として考えた時には、
これらの国に多くを求めることはできそうにないという思いに至り、
考えを撤回することにした。
安ければ何でもいいという旅のスタイルなら別だが、
そこそこの質の旅をしたいのであれば、
多少の価格差よりもコストパフォーマンスの方が重要。
そう考えると、
東欧で有力候補になるのは
チェコ・ポーランド・ハンガリーの3カ国というのが
私が得た結論。
外国人にとっては東南アジア並みの物価?
率直に言えば、
東欧の物価は東南アジアのバンコクやクアラルンプールと
2割程度しか変わらないように思う。
つまり若干高い気もするが、
ほとんど変わらないといえるレベル。
ビールやワインをよく飲むのであれば、
こちらは質の高いものを安くで売っているため、
相対的にお得に感じるはず。
東欧の中でも、
ハンガリーは世界的に有名なトカイワインの産地でもある。
当然、日本で飲むよりも
はるかに安くで飲むことができる。
東南アジアでもビールは作っているが、
やはりクオリティーの違いは歴然としている。
それは飲み比べてみれば一目瞭然。
ただし、東南アジアは年中ビール向きの気候なので、
多少作りが雑でも美味しく飲めるというところはあるが。
バンコクで8,000円程度のホテルなら、
プラハでもだいたい同価格で泊まれる。
食事は差が出やすいところで、
観光地のまっただ中だと高めだが、
プラハでもワルシャワでもブダペストでも、
少し離れたところのレストランは半額〜7割程度。
肉料理に野菜やマッシュポテトの付け合せがあり、
そこにビールを1パイント(568ml)頼んでも
安めのメニューだと1,000円前後。
これなら東南アジアで外国人向けレストランに入るより
安い場合すらある。
本格的なピザ窯で焼いたピザも、
プラハやブダペストなら600円弱から。
バンコクやクアラルンプールで
同じレベルのピザを食べようと思えば、
2倍以上は軽くかかる。
こうした部分においては、
むしろ東欧の物価は東南アジアより有利な部分も。
もっとも、ピザについては良質な小麦粉が安いとか、
イタリアに近く歴史的・文化的に磨かれてきた経緯がある。
ビールにしても歴史と競争の激しさが東南アジアの比ではない。
東南アジアは基本的に1つの国に国策企業のような形で
大手一社というのが基本スタイル。
シンガポールならタイガービールだし、
フィリピンならサンミゲル。
ラオスはビアラオで、
タイは例外的にシンハとチャングがある。
無数の会社でしのぎを削ってきたヨーロッパとは
そもそもの背景が異なる。
逆に東南アジアが有利な点としては、
和食が安くて美味しいということ。
やはり日本からの地理的な意味での距離の近さ、
そして数ヶ月限定で赴任の駐在員も含めて
歴史的に移住者が多かったことは大きい。
バンコクで700円のラーメンをプラハで食べようと思ったら、
金額以前に店が存在するかどうかというレベルで考える必要がある。
別の町まで行かなければいけないかもしれないし、
そもそも和食の金額が2倍から3倍する。
それでいて味のレベルは明らかに落ちる。
日本の食材にしても、
ざっくりした感じでは東南アジアだと日本の2倍から、
ヨーロッパだと3倍からという印象。
これは輸送費を考えれば致し方のないところ。
そして東欧については、
ドイツやオランダまで行かないと
思うような食品が手に入らないこともある。
そんなわけでどちらも一長一短ではあるが、
東欧は物価が安く、街並みも綺麗で食事が美味しく、
プラハやブダペストには素晴らしい歌劇場もあり、
文化も力強く根付いている。
そんな素晴らしい場所であることは間違いない。
私が初めて海外を訪れた時には、
ヨーロッパ10カ国以上を周った。
しかし、その時はいわゆる主要国、
つまり西ヨーロッパや南欧ばかりだった。
それが最近では年に1回ヨーロッパを訪れ、
ビザなしでいられる期限の90日ギリギリまでいるが、
その時間の大部分は東欧で過ごしている。
それはただ単に物価が安いだけでは説明できない。
余計な現代化をしていないことも含め、
大きな魅力があるからこそ繰り返し訪れている。
この数年は東南アジアで暮らしてきたし、
フィリピンには永住権も取った。
そこからワルシャワに飛ぶには片道10時間以上かかる。
その距離を繰り返し越えてでも
訪れる価値があるのは間違いない。
安さは魅力の1つには違いないが、
あくまで一部でしかないことは補足しておきたい。
海外に移住するのは本当に難しいのか?
日本を出て海外に住むようになってから
「海外に移住したい」という話をよく聞くようになった。
同時に、
「英語が苦手で・・・」
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等々の様々な不安や悩みも耳にする。
そこで、10年以上海外で暮らし、
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