日本において海外不動産投資というと、真っ先に浮かぶのが東南アジアや中国で、それ以外だとアメリカやカナダのような北米、ニュージーランド、オーストラリアといったオセアニアをイメージする人が多いだろう。
実際に物件を購入した人の話を聞いても、ヨーロッパではなく、これらの3つの地域のどこかに該当することはほとんど。
確かに中国や東南アジアは一時期急成長を遂げていたし、物件価格もどんどん上がっていた。
しかしながら、中国はもう数年前から、東南アジアもこの2年ほどは、価格が上がりすぎてしまっていて、買い時とは言えない状態にまで高騰している。
実際私はフィリピンのマカティや、マレーシアのジョホールバルといった注目されているエリアに合計3年ほど住んでみたが、なかなか厳しい現実が待っているという感想を抱いた。
マレーシアに関してはハズレ物件も多いし、フィリピンにしても、あるいはそれ以外のタイやインドネシアにしても、もうすでに安値で買って高く売却したり、あるいは家賃でローンを返済したりできるレベルではないところまで、不動産価格が上がっている。
投資家として考えてみると、かなり厳しい。
では、ヨーロッパはどうかということで目を転じてみると、国によっては価格が割高なところもあるし、そうでないところもある。
例えば、東欧諸国であれば、平米単価で見ても一部の東南アジアの国よりも、かえって割安感が出ていて、居住環境との兼ね合いで考えてみると、かなり有望に思えることもある。
さらに言えば、賃貸利回りも町によってはかなり良く、そういった意味で言うと、ヨーロッパへの不動産投資も、もっと活発になってもいいのではないかと感じることがある。
しかしながら、日本人の間でこういった話題が出ないのは、不思議な話ではない。
ビザのからみでもそうだが、ヨーロッパは多くの国が集まっていて、基本的に言語もそれぞれに異なる。
イギリスやドイツのようなある程度マーケットの大きいところであればともかく、それ以外の国へ個別に日系の不動産会社が進出して、現地に根を張ってしっかりしたサポートをするような体制を作ったところで、日本人顧客向けのマーケットを十分な大きさに育てることは難しい。
そういったこともあって、日本語での情報提供やサポートが乏しいのが、ヨーロッパの不動産投資が、なかなか活発にならない理由の一つ。
日本人にとっては、どうしても縁遠いものとしてうつってしまう。
もちろんそれ以外のエリアからはお金が流入しているし、特にロシアや中国のように、ビザを求めて不動産を購入する動きも、近年は強まっている。
不動産購入でビザが取れる国も
例えばスペインやポルトガルの場合、50万ユーロ以上の不動産購入を条件に、ビザを取得することができる制度を設けている。これは昔からずっと続いているものではなくて、両国が経済危機に陥ったことで、外国から資金を獲得したいという思惑で制定した制度。
逆に言うと、経済状態が上向いた段階で、新規のビザの発行は足止めになる可能性が十分にある。
あくまでも臨時の措置であって、恒久的なものではないという認識が正しい。
しかしながら、50万ユーロということであれば約7千万円になるので、決して安い価格ではないし、購入できる層は限られているものの、ロシアや中国の富裕層で国外脱出をはかっている人であれば、文句なしに魅力的な選択肢ということになる。
日本人であれば、ヨーロッパに行く時にビザ無しで90日まで滞在できるが、そういった権利を持っていない中国等の国では、ヨーロッパに堂々と住める権利を確保することが、とても魅力的に映るのは当然のこと。
国外に資産を逃がすという意味でも、彼らにとってメリットは大きく、スペインやポルトガル以外にも、ラトビアやギリシャ等の国が、やはり不動産投資によってビザを出す制度を設けている。
他にもヨーロッパであれば、ハンガリーが不動産ではなく、国債に投資をすれば永住権を出すといった仕組みも作っていて、実を言うと、一時的にヨーロッパのビザはかなり取りやすい状況にある。
しかしながら不動産以上にビザのサポート業者の状態は、日本人にとっては不利なものになっている。
日系の業者に絞って調べてみたところ、やはり有力な業者は一つもないというのが、私がリサーチをした限りでの結論。
こうなってくると、ビザとセットになっている不動産投資をすることによって、より良い居住環境を得るのは、かなりハードルが高くなってしまう。
どうしても日本とは距離もあるので、片道10時間以上のフライトを経ないと現地に行く事もできないし、得られる情報も限られているとなると、正しい判断を下すのは難しい。
まして、50万ユーロ以上の価格ということになるとなかなかハードルは高く、適当な気持ちでお金を出すこともできないので、やはり二の足を踏んでしまうのが実際のところ。
こうしたことを考えてみると、ヨーロッパの不動産投資にはアジアにはない魅力がある一方で、情報不足が原因で、なかなか実行には移しがたいというのが、現実だろう。
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