これまで音楽やゲームなど、ポータル性を高めることによって娯楽を中心に新しい商品が出てきた。
例えば音楽でいうと、家庭用のステレオが全盛だった時代にウォークマンが出てきたり、あるいはファミコンやスーパーファミコンの時代に、ゲームボーイから始まって、現在で言えばPSP等にその流れが繋がったり。
一方、仕事に関して言っても、ポータブル性、つまり持ち運びできるかどうかを基準にして選んでいく時代がくると思っている。
これまでどちらかというと、仕事と場所は密接に結びついていて、労働者は職場に近いところに住み着いて、そこから出勤するのが一般的な価値観だった。
つまりあくまでも居住する場所は労働に従属するものであって、働く者はそれに合わせるのが主流の考え方。
しかしながら、インターネットの発達によって、人間を中心にした働き方が可能になっている。
つまり、場所によって仕事を選ぶのではなくて、自分がいる場所で仕事をするという考え方。
住む場所を選べるようになることの効果
実際に住む場所と働く場所の切り分けができるようになると、いつでも旅行に行けるようになるし、介護の問題があっても、ある程度柔軟に対応することができる。例えば、従来型の働き方の場合、年老いた両親が生まれ故郷でずっとそのまま暮らしたいと思っていても、介護の問題によって自宅に呼び寄せざるをえない時もある。
そこには当然感情的な軋轢が起こるわけで、環境が変わることによって急激に認知症が進む場合もある。
一方、自分の仕事のポータブル性が高い場合であれば、実家に移動してしばらくの間そこで暮らしながら親の面倒を見ることも可能になる。
国ごとの物価のアビトラージも可能に
さらに言えば、物価の安い国に移動することによって介護のための人件費を抑えたり、生活費そのものを安くしたりすることによって、生活のクオリティも大きく変えられる。
人生の質を考えた場合に、収入を増やすことに注目をする人が多いが、実を言うと、支出を減らすことの方が場合によっては簡単だし、仕事を持ち運べるようにしておくことは、まさにそれが可能になるということ。
今後、日本の物価が高くなっていったとしても、必ず物価の安い国は存在する。
そうなった場合に、日本のレベルで収入を得ておいて、物価の安い新興国や後進国のコストで生活できれば、当然ながら差額を生み出すことができる。
そしてその差額を資産構築に回していけば、より大きな将来の安心に繋がっていく。
こういったことも、仕事を持ち運べるようになっているかどうかで大きく違う。
今現在はアメリカに来ているが、この国には、アイルランドやフィリピンからたくさんの出稼ぎの労働者がやってきている。
彼らにしてみれば、何年かアメリカで大きなお金を稼いでおいて、それを自分の国に持って帰って事業を興したりできるだけの資金を稼ぐことができる。
もちろんこうした海外への出稼ぎは完全に仕事の携帯性が高いというわけではなくて、あくまでも転職をするという前提ではある。
それでも、かつての日本企業のように特定の会社の中でしか通用しない社内スキルを身に付けるのではなく、世界の中で幅広く使える資格や専門職を身に付けているという意味で言うと、それなりに仕事のポータブル性が高いということになる。