
初めてロンドンを訪れたのが2005年。
これが私にとっての初海外で、
海外移住前に唯一日本を出た経験だった。
この時はロンドンを起点にしてヨーロッパを周った。
あれから9年たったことになる。
かつて泊まったケンジストンガーデン近くのホテルは、
まだ残っていた。
最寄り駅のベイズウォーター駅周辺はいくらか様変わりしていて、
記憶に残っていた花屋もなくなっている。
物価の推移を知りたくて部屋の料金を聞くと、
およそ10,300円。
9年前は約5,000円だったので、
倍になったことになる。
当時は11月だったため、
今の方が季節要因でホテル代が高いとは言え、
この差は大きい。
レストラン等に行っても、
やはり値上がりを感じる。
当時のレートは1ポンド210円。
現在は173円。
あの頃よりは円高にも関わらず、
物価は日本円ベースで考えても上がっている。
世界的に見た場合、
時間の経過とともにインフレが進んでいくのが通常。
つまり、物の価格は上がっていくし、
収入も上がって当然。
この収入額の上昇は年齢やキャリアに応じての話ではなく、
単純に物価との相関関係の話で。
最近は日本もインフレに転換したものの、
長らくデフレが続いていた。
そのため、仮に収入が横ばいであっても、
年齢を重ねたリスクと働いてきた期間の徒労感に耐えれば、
停滞しているだけという印象で済んだ。
しかし、世界的な動きを見れば、
そしてインフレになった日本の今後を考えれば
収入は増えて当たり前になる。
そうしなければ、
実質的に現状維持すらできずに貧しくなることに。
インフレ率が2%だとすれば、
月収30万円の人は来年30万6,000円になって
現状維持ができる。
5,000円昇給しただけでは、
相対的に貧しくなったことになる。
まして、年齢に応じて収入を上げていこうと思えば、
より大きな幅での収入アップが必要になる。
インフレになれば、
目先の収入を上げるのはいくらかハードルが下がる。
実質的に横ばいでも、額面は増えるのだから。
雇用する側から見れば
社員にお情け程度の昇給幅を提示しておいて、
実質はインフレ率以下に抑えやすくなることに。
デフレ状態で去年と同じ給料よりも、
インフレの中で額面上少しだけ昇給させる方が
なんとなく社員の気がまぎれるのは明白。
こうして真綿で首を絞められるように、
ジワジワと貧困化は進んでいくのだろう。
ある日急に訪れる変化ではないだけに、
ますます気づくのは難しい。
何年かぶりに訪れた街だからこそ、気付けたこともある。