スペインで昼寝の習慣、シエスタが廃止の危機に瀕している

マドリッド
スペインの昼寝といえば、シエスタとして世界的に有名。

長々と昼休みをとって、
ワインを交えた昼食と昼寝をし、
それから午後の仕事に戻るのが伝統的なスペインの働き方。


しかし、昨今の経済危機によって
シエスタの習慣を廃止に向けて見直す動きが出ている。

たしかにヨーロッパの中でもラテン気質の国は
軒並み経済に問題を抱えることになった。

スペインの他にも、ギリシャやイタリア、ポルトガルといった国が。


対してドイツはEU加盟国に足を引っ張られながらも、
堅調な経済力を見せている。

結局は勤勉な国が勝つというのは、
教訓として学ぶべきところというのも納得できる。


引き続きスペイン経済は低迷


一時期のような本格的な経済危機は去ったとは言え、
スペインの景気はまだまだ悪い。

若年層の失業率はいまだに40%を越えるという。

さすがに危機感を覚えるレベルだろう。

のんきに昼過ぎから横になったり、
ビールやワインを楽しんでいる場合ではない気もする。


昼寝の習慣を残して、
失業者の雇用を生んでワーキングシェアをするほうが
いいという考え方もあると思う。

ただ、スペインが労働環境を変えようとしているのは、
現状の市場規模では足りないという考えなのだろう。

ただ単に今の働き口を分け合うのではなくて、
経済力自体を底上げしたいということになれば
個々の生産性を上げる必要がある。

そのためには、労働者の数を増やすよりも
まずは質を挙げることを重視しているのだと思う。


スペインから昼寝の習慣が消えるというのは、
現実問題として達成されるのか分からない。

廃止に向けて色々議論をしつつ、シエスタは残される気もする。

一部の人がポーズとして議論しているだけで、
実態は景気が回復してなし崩しになるのを
待っているだけではないかと。

ただし、マドリッドではすでに昼休みが短縮され、
1時間半や1時間の職場も珍しくない。

特に所得の高い層は
ゆっくり昼に休む習慣から離れている人が多い。


地域差によるへだたりも

一言でスペインと言っても一枚岩ではなく、
むしろ独立志向が高いカタルーニャ地方をはじめ、
元々一体感が薄い国。

シエスタに対する考え方、
現状の実施の度合いにも地域差が大きい。

基本的には都市部よりも地方の方が
長時間の休憩を取る傾向にある。

自宅まで帰って食事を取り、
その後に家で寝てから会社に戻るという話も。

そして、昼休みが長い分、
夜は8時頃まで仕事をするため、
実は労働時間が短いわけではない。


また、セビリア等の南部については
特に暑さが厳しい傾向にあり、
仕事の効率が悪い日中を休憩に当てるというのが
伝統的な考え方だった。

特に農業のように屋外作業が中心だった時代は、
日中の酷暑の悪条件で働くよりも
涼しい時間に仕事をスライドさせた方が便利。

こうした背景もあったので、
ただ単にシエスタが怠け者の文化だったわけではない。

そして、この地域差は現在も出ていて、
北部に該当し、比較的暑さがゆるやかなカタルーニャ地方で
Reforma Horàriaと呼ばれる
シエスタ廃止運動が積極的に進められている。

これがどこまで普及するのか?

「1つのスペイン」がいまいち達成されない中、
もはや分離・独立問題すらもからんでくる可能性すらある。


これまで何百年も続いてきたシエスタの風習を
簡単に変えることはできないはず。

しかも昼寝は労働生産性を高めることも判明しており、
単位時間あたりの価値を上げる効果はある。

働く時間帯を前倒しするだけなら、
経済回復に寄与するかは疑問が。

その意味で、
スペインの昼寝事情は変わらず残る気もしている。

もっとも、ランチをのんびり食べて、
ワインやビールまで楽しんで会社に戻っても
何も言われない環境がうらやましがられるのは分かる。

ただ、平日から毎日それをする必要があるのかと言えば、
疑問が残るのも事実。


南欧のラテン系の国が、本気で経済重視に舵を切れるのか?

この点はどうしても疑問が拭えないし、
むしろスペイン人のように人生を謳歌するスタイルに
あこがれを持つ人も多い。

特に個人の所得が多くても幸せを感じづらい日本人は、
彼らのようにあっけらかんと幸せそうに暮らす人を見て
何かを学ぼうとすることが少なくない。


スペインで昼寝が許されなくなれば、
ある意味で文化が1つ消えるようなもの。

観光大国としては、特徴が消えるのはダメージにもなる。

別にシエスタを見に行きたいという人はいなくても、
スペインと聞いて連想する要素が減るわけなので
頭の中で占めるシェアが減少することになる。

もっとも、昼過ぎに店が閉まるのは利便性が低いので、
その意味でのプラス要因は存在するが。


色々考えると、
おそらく今後もスペイン人から昼寝の習慣を取り上げる試みは
失敗に終わるのではないかと予測している。

ただ、どちらにしても言えることは、
私は昼寝の習慣を続けるということ。

その方が体調がいいし、頭も冴えて仕事もはかどる。

ランチを食べてすぐに仕事なんて、
今となっては理解できない。


眠気と闘いながら午後に仕事をするよりも、
万全の状態になった方が効率がいい。

だから、昼寝はやめない。


さすがにスペイン人のシエスタのように
昼間にワインを飲んだりはしないものの、
ゆっくり外で食事をしてコンドミニアムに戻り、
そこで眠るというスタイルは変わらないのだろう。

ワインは昼だから飲まないというより、
最近は夜も含めてほとんどアルコールを飲まなくなっただけだが。


スペインで昼からワインを飲むのは仕方ない

アンダルシアのバル
10年ほど前にマドリッド、バレンシア、バルセロナ、
そしてアンダルシア地方のコルドバ・グラナダ・セビーリャと
スペインの主要都市をぐるっと巡った。

そして先日、隣国ポルトガルを縦断した後、
ポルトからマドリッドのフライトに乗った。

久しぶりのマドリッドでは王宮に再びやって来たり、
10年ぶりにプラド美術館の名作を鑑賞したりしていた。


その中で思ったのは、
マドリッドもそうだし、
ヨーロッパの少なからぬ都市は
昼からビールやワインを飲む文化があり、
その誘惑は並々ならぬものがあるということ。

アジアにいる時は昼はもちろん、
夜になってもお酒を飲む習慣がなかったのに、
ヨーロッパに来ると昼から飲んでしまう。

私の場合は旅行者として限られた期間の滞在のため、
特別な時間という気持ちが働くのも一因だろう。

しかし、一般的な旅行者のように
仕事を完全に休んで遊びに来ているわけではなく、
私は旅先でもいつも通り仕事をしている。

にも関わらず、昼からビールやワインを飲み、
その後ホテルに戻って昼寝をする。

スペイン人ほど長々とシエスタを満喫している意識はないが、
そもそも他人に管理される立場にないため
時間のやりくりは自由。

そして、結果として彼らと大きく変わらない、
少なくても日本のサラリーマンよりは
スペイン人に近い生活習慣になっていた。

かと言って、生産性が落ちていたわけでもない。


シエスタ=昼寝ではない

グラナダの午後
昼食後に長く寝ると夜の睡眠の妨げになるため、
10分から15分ほどが適切とされる。

つまり、昼寝そのものにはそれほど時間がかからない。

では、なぜスペイン人は長々と昼休みを取るのか?


その理由は、シエスタとは純粋に昼寝を示すのではなく、
食後にゆっくりワインやコーヒーを楽しんだり、
談笑する時間を持つことも含んでいるから。

食べてすぐ寝るのは胃腸に負担がかかるという説もあるが、
スペイン人はそれを知ってか知らずか、
食事が終わったらすぐに寝て、
その後仕事に戻るというスタイルは採用していない。


仮にシエスタの廃止となると、
ライフスタイルそのものを否定するようなものなので、
反発が大きすぎる気がする。

しかも人工知能をはじめとしたテクノロジーで
今後は人間の仕事のかなりの部分を自動化できるわけなので、
いかに働かずに人生を楽しむか、ということも
世界的なテーマになっていくはず。

特に仕事ができない人は。

スペインでは役所が空いていなくて不便という不満もあるが、
そもそも役所の仕事の大半なんて自動化できること。

既得権益のある役人は反発するだろうが、
役人の労働習慣を見直すよりも、
現段階でIT化できる部分だけでもIT化すれば
ずいぶん利便性は改善できると思われる。

シエスタの廃止だけが選択肢ではないし、
それは単なる内外へのアピールにしかならない気がする。


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