今回の北米移住先探しの旅の中で、アメリカではニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンDCの3つの町を周ることにした。
ニューヨークについては別途記事を書こうと思うので、ここではワシントンDCとフィラデルフィアでの生活について、現地に入って下見をして感じたメリットやデメリットについてまとめておこうと思う。
移住先としてのワシントンDC
まずはワシントンDCから。
スメソニアン博物館の数々の建物が建ち並んでいるのが、ワシントンDCの中心部。
他にもFBIとか、CIAの建物も見かけた。
言わずと知れたアメリカの首都だが、中心部に高層ビルはない。
といっても、これは需要がないからということではなくて、建物の高さの規制が厳しく、中心部のワシントン記念塔を越える高さの建造物を作らせないため。
記念塔に近い高さの建物も作ってはいけないということで、基本的には12mを越えた建物を作らないように制限がされている。
これによって町の景観は整っているものの、その一方で、需要の多い町の中心部に高層ビルを建てられないため、町が周辺部に向かって不必要に広く広がってしまい、それによって不便な状況が生まれたり、通勤時間が長くかかったりといった弊害も指摘されている。
スメソニアン博物館以外にも、国際通貨基金とか、世界銀行とか、各国の大使館なども置かれていて、さすがはアメリカの首都という感じだが、しばらく郊外の方へ行くと、人影さえまばらで、車ぐらいしか通らず、建物もろくにないエリアもある。
例えば東側にあるアナコスティアというエリアはまさにそういった地域で、ワシントンDCの犯罪の30%ほどを占めているという話もあるぐらい。
データを見ても、あるいは実際に歩いていても、アナコスティアが危険なエリアであることがうかがえる。
一見すると生活環境が良さそうに見えるような場所もあるが、実際には安心して暮らせるような場所ではないというのが、残念なところ。
ワシントンDCには地下鉄網も一応整備されているが、とても治安が良さそうには思えず、新興国と呼ばれるバンコクやシンガポールの方がよほど安心して地下鉄に乗れる印象があったし、車内も綺麗だった。
ワシントンDCでの移住生活をイメージしてみると、物価が高くて治安が悪く、環境がそこそこということで、コストパフォーマンスとしては決して良くはない。
そもそも安全であることは移住先の最低限の条件であると考えているので、こうした視点で見ると、もはや新興国の一部の国の方が安全で安心、そして物価は上がりつつあるとはいえ、ワシントンDCよりはやはり安いので、そちらの方がメリットがあるように感じてしまった。
生活の場としてのフィラデルフィア
続いてはフィラデルフィアについて。
スメソニアン博物館ほど大量のみどころがあるわけではないものの、フィラデルフィア美術館やバーンズコレクションといった美術館は一見の価値があったし、ニューヨークのMOMAや、グッゲンハイム美術館、あるいはメトロポリタン美術館のように異様な混雑をしているわけではなく、落ち着いて鑑賞できるという意味では、価値が高かった。
別にそれを目的としてフィラデルフィアで移住生活をするというわけではないが、たまに行くぐらいであれば、十分楽しめるだけの魅力が備わっている。
フィラデルフィアの方が、ワシントンDCやニューヨークに比べると、道を歩いているとピリピリとした感じとか、緊迫感を感じることは基本的に少ない。
こちらも東部に行くと危険エリアになるということで、そちらの側に行くことはなかったが、町の中心部とか、やや西部でとか、そちらの方であれば、比較的アメリカの中でも安全な印象。
そういった意味で言うと、落ち着いて生活をするのなら、ワシントンDCよりは、フィラデルフィアの方が向いていると感じる。
町の規模としては、フィラデルフィアはニューヨーク等と比べて当然ながら小さいが、別に世界的大都会に住みたいという願望もないので、この町はアメリカの中では比較的生活の場には向いていると結論付けた。
しかしながら、北米で言えば他にカナダの各都市もあるわけだし、そういったところと比べて暮らしやすいのかと言うと、決してそんなことはないという印象だった。
さらに言うと、ビザのことを考えても、アメリカでグリーンカードのような永住権を取ると属人制の税制が適用され、アメリカに住まなくなった後も課税されることになり、非常に不利になる。
しかしながら、ビザを取らずに勝手に住み付くことは当然できないし、ビザ周りの条件はカナダに比べてマイナス。
同じ程度の生活水準を提供してくれる町としては、ヨーロッパの各国もあるし、東南アジアのごく一部の都市でも、そこまで生活の質は変わらなくなってきている。
こういった世界情勢を考えてみると、是非ともフィラデルフィアで生活したいのかというと、そこまでの情熱を持つこともできず、低評価に終わったアメリカの3都市の視察の中では、最も価値を感じたというレベルにとどまった。
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