
かつて日本の家屋はウサギ小屋と揶揄された。
それはとても狭い家に住んでいるという意味だったが、実をいうと世界的に見たところ、日本の家屋の平均平米数は決して狭いほうではなかったという調査もある。
では、なぜそのような誤解が世界に広まってしまったかというと、都心を中心とした都会部においてワンルームマンション等の狭い家に住んでいる人が注目されたから。
逆にいうと、日本でも地方に行けば一戸建てに住んでいる人が多いし、そういったところは土地が余っているので広々としている。
したがって、日本全体で平米数の平均を出したときには、世界平均と比べても決して狭いわけではないし、ヨーロッパ各国やアメリカと比べてもそれは同様の傾向にある。
そういったことがかつては言われていたわけだが、今ではアメリカ人でもマイクロアパートとよばれる非常に狭い住まいに住むことも増えている。
一般財団法人・自治体国際化協会(CLAIR)のレポートも参考に。
例えばあるシアトルのアパートメントの場合であれば、約11平方メートルしかないにもかかわらず、家賃は約8万円。
ニューヨークに関していえば、ワンルームがあるアパートの部屋の数は約100万室ということになっている。
もはや少数派でもなく、それだけ需要があり、さらにいうと一人暮らしや二人暮らしのニューヨークの住民は約180万世帯ということで、むしろワンルームの需要は十分に足りていない状態にある。
結局アメリカにおいてもニューヨークをはじめとした人口密集地域においては、どんどん狭い部屋に注目が集まっている。
理由は単純で、日本以上にアメリカは富が二極化している。
実際には三極化、四極化といわれることもあるが、富の分配がかなりいびつになっているので、ごく一部の富裕層はたとえニューヨーク市内であっても豪華なコンドミニアムに住むことができる一方で、一般の労働者層はどんどん収入も下がっているし、家賃にかけられるお金は少なくなっている。
以前であれば見向きもしなかった狭い部屋に住むことも考えざるを得なくなっているし、スペースを有効活用するという考え方もだいぶ普及するようになったらしい。
さらにいうと、この傾向を加速化させる要因として、アメリカにおいてもお一人様という考え方が定着し始めたことがある。
もちろんこれは別に日本の言葉がそのまま使われているわけではなくて、概念が向こうでも普及しているだけということ。
そのため、お一人様を歓迎するレストランが各地にできていたり、未婚の人や子供を持たない人も楽しめるライフスタイルが様々に提案されている。
アメリカ人といえばいかにもパーティー好きで、休みがあればバーベキューでもしているイメージがあったものの、どんどんそのイメージから現実は離れているという話。
とはいえ、さすがに20平米を切るような部屋はかなり圧迫感があるし、出来ればもう少し広い部屋のほうがいいのではないかと思う。
特にニューヨークのような建物が密集した地域は、窓を開けても見通しが悪いことが多い。
こういった部屋に住んでいるとそれだけストレスがたまるし、閉所恐怖症でなくても圧迫感を感じてしまうので精神衛生上は余り好ましくないと個人的には思っている。