マニラ在住者が感じるフィリピンでビジネスをするリスク

「成長著しいフィリピンはビジネスチャンスであふれている」

この視点は間違ってはいないし、
実際に起業してうまくやっている人もいる。



それなりに手広くやっている日本人もいれば、
マレーシアにかつて移住した時に近くに住んでいた蓮二は
フィリピン人の彼女の実家がある
クラーク空港近くの村でスモールビジネスを始めた。

チェーンのドラッグストアに加盟したらしく、
実際の運営は彼女に任せるらしい。

ただし、マニラやセブに住んでみて感じるのは、
この国でビジネスを持つにはリスクも多々あるということ。


スモールビジネスは単なるリスクにも


蓮二のように最初からフィリピン人に
運営させることを前提にしていればいいが、
日本人がサリサリストア(現地の小売店)を経営する場合のように
それなりの規模感の売上や利益を出せる展望がないと
当然ながら行き詰まる。

起業するとなれば、
当然ながらサラリーマンとして働くよりもリスクがある。

にも関わらず月収の上限が10万円程度なら
ローリスク・ハイリターンの典型になってしまう。

事業が失敗した時に、
その経歴が今後につながるかも疑問。

再就職の際、
フィリピンでスモールビジネスをしていたことを
好意的に解釈してくれる企業は
残念ながら多くはない。

まして利益の出ないプランだったとしたら、なおさら。


サリサリストアは人件費の安いフィリピン人が働いて
ようやく商売が成り立つもの。

貧困層を顧客にするため、
客単価が極端に安くなる。

シャンプーや洗顔料の小分けにしたものや
タバコをバラ売りしたりするので。

スーパーでまとめて買ったほうが安いが、
それができない層を対象にした商売ということになる。

当然、日々稼げる額は限られる。

現地の勝手を知らない日本人が経営しても、
言葉や現地の感覚、風習、商品の嗜好性等を知らない分
ハンデを負っているだけになってしまう。

わざわざ海外で起業するなら、
成功した場合のリターンがそれなりの規模にならないと
手間や障壁ばかりが多くて割に合わない。



業界シェアを取ることの危険性


フィリピンは治安の悪い国として知られる。

マニラでもマカティやグローバルシティ、オルティガス等は
安全な街として安心して暮らせるが、
それ以外の地域は治安が良いとは言えない。

ドゥテルテ大統領就任からの数ヶ月は
麻薬の売人等を収監、射殺する出来事が相次いだが、
こうした国家運営の混乱が起きる素地のある国でもある。


では、何もやましいことがなければ、安全だろうか?

残念ながら、そうとは言えない。

たとえば特定の業界でシェアを獲得して
ライバル企業から目をつけられていたとしたら?

苦々しい思いを抱いた相手が
裏で手を回すことだってありえない話ではない。

特にマニラやセブ在住の日本人を対象にしたビジネスは
それほど大きくない日系の会社が行っているのが基本。

コンプライアンス意識が欠けるどころか、
日本人の中でも素行の良くない人が集まる国でもある。

命の危険を感じながらビジネスをするというのは、
フィリピンにおいて無視できないリスクだろう。



突然立ち退きを命じられた実例


マニラでも和食レストランが集まるリトルトーキョーは
個人的にも縁が深い場所だし、
多くの日本人在住者が集まる場所。

フィリピン料理は頻繁に食べたいものではなく、
必然的に徒歩で行けるリトルトーキョーへ
足がむく機会は多い。

そのリトルトーキョーからほど近い
サンバープラザやクリークサイドにも
牛門のような焼肉屋や漁火、吉田製麺所等の和食レストラン、
カラオケ等が軒を連ねていた。

しかし、裁判所から唐突な立ち退き命令が
クリークサイドの店舗に出された。

3日後に出て行けという話だったそうで、
無茶苦茶な話。

どうもビルのオーナーの支払いが滞っていたらしいが、
さすがに急転直下すぎる立ち退き命令だろう。


マニラにはLRTやMRTといった
市内で使える電車もあるものの、
本数は少ないし治安も良くない。

基本的に日本人を含めた外国人の移動はタクシーを使うが、
渋滞がひどい街なので動きづらい。

クリークサイドの店舗が離れた位置に移転すれば、
付いていた常連客が離れることも容易に予想できる。

ランチタイムは近くで働いている人が中心になるし、
夕食時は渋滞とも重なるので
立地によって利便性が大きく左右される。

リトルトーキョーの近くなら立ち寄れた人も、
移転先にまで足を伸ばす気になれないこともあるだろう。

こうして、うまく営業できていたとしても、
急にはしごを外されてしまうことも。



株式を100%保有できないリスク


フィリピンで法人を設立する場合、
日本人が株式の100%を保有することができない。

これは法的なルール。

業種にもよるが、
基本的に60%の株式をフィリピン人に持たせる必要があり、
信頼できるパートナーがいないと
裏切られるリスクがある。

いわゆるノミニー(名義貸しの人)を使う会社もあるが、
こちらも裏切りが起こるケースはある。


法的に正式な企業保有ができないというのは、
不安定な地盤でビジネスを続けるということ。

起業した当初は問題なくても、
利益額が大きくなってきた段階で
パートナーのフィリピン人が心変わりすることだってありえる。

裏切るインセンティブが大きくなりすぎた時、
良好な関係が維持できるかどうかは分からない。


こうした様々なリスクがフィリピンで起業する上でつきまとう。

ただし、一概に無謀だとは思わないし、
チャンスが存在するのも事実。

たとえば、スイスのビジネススクールである
IMD World Competitiveness Centreが発表した
IMD Smart City Index 2019という
世界のスマートシティ・ランキングがある。

このランキングで見ると、
マニラは東南アジア主要8都市中の最下位となっており、
好意的に見ればフィリピンには伸びしろがまだまだ残っている。

リスクに見合うだけのリターンが望めるのなら、
面白い市場ではある。


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