王とサーカスの感想(ネタバレわずか)、海外での身の振り方と許し、または不干渉


米澤穂信の「王とサーカス」は
妙に読んでいる状況とシンクロする内容だった。

この小説はネパール国王が皇太子の銃乱射によって
他の王族とと主に死去した事件を下じきにしている。

私が王とサーカスを読んだのは
タイのバンコクに滞在中の時期で、
プミポン前国王が死去して街中に
それを悼む写真や装飾がされている時期だった。

プミポン前国王と同様に、
ネパールのビレンドラ国王も
国民に愛されていた人物として作中で描写され、
その人物像に重なるものがあった。

タイ人やネパール人にとっては違和感のある解釈かも知れないが、
どちらも(特に文化的な意味で)遠い異国の地である日本人の私にとって
なんだか共通項の多い話だった。


主人公の太刀洗万智はフリーランスの記者で、
新聞社を辞めてからの初仕事を控えた28歳。

若いとも言えるし、
キャリアの中で中途半端な時期とも言える年齡。

本来は単なる取材前の視察気分で来たカトマンズで
偶然宿泊したトーキョーロッジに泊まり、
ネパールの王族が殺害された事件に遭遇する。

カトマンズ入りしてから一週間もたたないうちに
混乱の渦の中に巻き込まれ、
それに関連した軍人の殺害事件にも
密接に関わることになる。


王とサーカスの中で描かれるネパール警察の横暴は
海外生活が長くなっていると頷かされる部分が多い。

別にネパール警察とか変わったことはないが、
異国の地でありがちな横暴で、
古い権威的な立ち振る舞いには
過去に出くわした中国等の警察の対応を思い出し、
血液が沸騰しそうになる。

もちろん、この時期のカトマンズに私がいたわけではなく、
小説の中で読んだだけなのに妙な臨場感がある。

それは海外というある種の非日常の共通項を
作者の米澤穂信氏がうまく描き出している証拠なのだろう。


そして、この軍人が殺害された事件について、
主人公・太刀洗万智は唯一真相に迫った人物となる。

事件に使われた拳銃をインドから持ち込んだ、
同じくトーキョーロッジの宿泊者であり、
アメリカ人の気弱な青年、ロブ。

その拳銃を盗んで軍人を殺害した
日本人の自称・破戒僧の八津田。

ジャーナリストを恨み、
兄の敵と言わんばかりに太刀洗万智を
策略にはめようとして死体を遺棄した
カトマンズの少年、サガル。

この事件の関係者は、
チャメリが経営するトーキョーロッジの宿泊者や
周辺の人間が深く関わっていた。

そして、太刀洗万智は彼らの行ったことに気づき、
それぞれと対峙する。

ロブには電話で話をつけ、
その後写真を見せて事実関係を確かめた。

その後、ロブはアメリカ大使館に保護を求めに行った。


八津田には殺害を自供させたが、
彼がインドに逃亡するのを太刀洗万智は止めず、
ネパール警察に通報することもなかった。

サガルについても真相を確かめはしたものの、
罪に問うことはしなかった。


彼らの運命が、その後どうなったかはわからない。

ネパールの警察が真相にたどり着いたかどうか、
その時に逮捕できたかどうかも。

ただ、太刀洗万智の行動は、
市民の義務は果たしていないのかもしれないが
カトマンズという先進国とは違うルールで動いている街、
しかも事件当初は2001年という時代設定を考慮すると
また違った意味を見いだせる。

彼女は深い赦しを持ってすべてを受け入れたようにも見えるし、
記者らしく観察者のポジションに徹したようにもうかがえる。


少なくとも言えるのは、
海外生活、特に新興国を主体として暮らしていく上で
ある種の潔癖さを捨て去らざるをえないということ。

ドロドロの現地事情に揉まれながら、
ある種のあきらめを受け入れつつ、
しかし自分は一線を超えてはならないという戒め。

一方で他者に同様の境界線を求めることは無意味という諦念。

そんな二律背反のルールのもとで
調和を見出す術を太刀洗万智は見出したように見えた。


彼女は記者として推理を発表したわけでもなく、
現地警察の捜査に貢献したのでもない。

はっきり言えば、
自己満足で真実を明かして終わり。

犯人達は罰を受けることもなかったし、
太刀洗万智はそれを望みもしなかった。

しかし、その姿こそが
ルールすらも簡単に捻じ曲げられる
法の支配の及ばない新興国で生き抜くための
生々しい真実が詰まっているように感じられた。

マレーシアや中国、ブルガリアで
盗難や暴行の被害に遭い、
不名誉にも警察に被害届を出すことになったが、
その時の対応を思い出すと
納得できる部分が多い作品だった。


そして、事件の取材を終えて
太刀洗万智がカトマンズから日本へ帰国する際、
離陸した飛行機から王宮通りやジョッチェン地区、
パシュパティナート寺院を探すのも共感できる。

名残惜しい街を去る時には、
飛行機からなじみのある場所を探してしまうもの。


王とサーカスは
もちろん人生の転機を迎えた主人公の成長物語としても
楽しむことができる小説。

海外での暮らしがまったく未経験でも
差し支えなく読める小説だし、
個人的にはブミポン前国王と重なって
なおさらタイムリーだった。



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