主要な家族制度は世界的に見て4つ(直系家族・共同体家族・平等主義核家族・絶対核家族)存在している。
なお、共同体家族はさらに外婚制共同体家族と内婚制共同体家族に分けられる。
外婚制と内婚制の違いも含め、それぞれの違いを見ていこう。
直系家族
まず1つ目が直系家族と呼ばれるもので、この制度の下では一家の中でも父親の権威が大きく、長男のみがその財産を相続し、原則として家に残ることになる。エマニュエル・トッドによると、日本は直系家族に属し、ドイツや韓国も同様となる。
もちろんこれは伝統的な分類なので、現代の日本が直系家族制度であることについては疑問が残るが、かつての制度ではということなのだろう。
共同体家族
家族人類学の2つ目の分類は共同体家族と呼ばれる制度で、父親の権威は直系家族同様に存在するものの、財産の相続権は兄弟姉妹に平等に存在する。共同体家族に属するエリアとしては中国やロシア、東欧などに多く、旧共産圏に多く見られるが、その中でも嫁を一族とは別のところから探し出す、外婚制共同体家族と呼ばれる地域がある。
それに対して中東や北アフリカなどのエリアの場合は、いとこ同士での結婚など一族の内部で婚姻関係を結ぶ内婚制共同体家族に分類される。
つまり、外婚制共同体家族と内婚制共同体家族の違いは、結婚相手を一族の外に求めるか、内に求めるかの違い。
平等主義核家族
家族人類学の3つめの型は平等主義核家族と呼ばれるもので、直系家族のように子供が家を継ぐのではなく、成人した段階で子供たちは長男も次男も全て家を出て独立し、親が亡くなった時に兄弟姉妹の間で平等に財産が分与される。イベリア半島やイタリアの北西部や南部、ヨーロッパのパリ盆地等にこの制度は見られ、ラテン系核家族とも呼ばれる。
絶対核家族
最後の4つ目となるタイプは絶対核家族で、平等主義核家族と同様に子供たちは家を継がずに独立するが、財産は親の意向によって不平等に分け与えられる。この絶対核家族制度に該当するのは、イングランドやデンマーク、オランダ、そしてオーストラリアやアメリカ、カナダといった国々とエマニュエル・トッドは指摘する。
直系家族・共同体家族(外婚制共同体家族と内婚制共同体家族)・平等主義核家族・絶対核家族の4つのタイプのどれに当てはまるかによって、その地域の文化や傾向が決まってくるというのがエマニュエル・トッドの主張で、一見した限りでは確かに納得させられる部分が多々ある。
その一方で、彼の提唱する家族人類学がいまいち真剣に議論されていないのは、十分な裏付けがなく、どこかエセ科学の雰囲気を漂わせていることが要因の1つとされる。
後付けで理由や分類を構築するのはそれほど難しいことではなく、次々に新しく出ては消えていく泡沫のような主張であるという指摘についても、確かに否定できない部分があり、彼の家族人類学という考え方がどこまで定着していくについては、今後を待つことになるだろう。
移民政策と家族人類学
エマニュエル・トッドは移民の運命という著書の中で、欧米諸国が移民をどのように扱っているかを比べているが、これについても家族人類学の見地を持ち出して、それぞれの社会基盤となっている家族制度に適応した方法で、受け入れ方を決めているとしている。例えば、イギリスやアメリカのような絶対核家族の国々は、移民を差別したり隔離することによって、相対的に白人の間の平等が実現したとしているし、フランスは移民の同化政策をとり、別の運命を進んでいるとされる。
実際、フランスにおいては、白人と移民の婚姻率がドイツやイギリスに比べると高いことが判明しており、ヒジャブと呼ばれるムスリム女性が頭に巻いているスカーフの着用を学校では禁止するなど、同化政策を促している国でもある。
しかしながら、残念なことにイギリス型もフランス型もどちらも移民政策については行き詰まりを見せており、残念なことに明るい未来は見えていない。
エマニュエル・トッドの主張するところでも、やがてはそれぞれの人種の混血化が進み、新しいエルサレムがやってくるといったことも言っているが、少なくとも自分たちの世代がその未来を実際に目の当たりにすることはないとも指摘している。
家族人類学による分析においては、遥かな未来にしか希望が存在しないかのような結びになってしまっている。
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