楽な生き方より楽しい人生に切り替えてみた結果

ポレッチの街と海

学生時代は楽な生き方をモットーにしていた。

いかにバイトを最低限にするかとか、
苦痛を避けることを最優先にしていて、
楽しいかどうかは二の次だった。

当時は自分が何をしたいのかも分からず、
ただ他人に使われるのは嫌だという思いだけはあったので、
そのような日々の過ごし方になっていた。

実際、お金には困っていたものの、
節約生活を送ることでしのいでいた。

バイトは苦痛でしかなく、
楽な生き方をする上では邪魔なものだったので
少しでも減らす方向で考えた。

仕事をする時にも、
職場が楽しいかどうかとか、
そんなことは気にせずに楽かどうかや、
効率よく稼げるかを重視した。

バイト先で友人を作ろうとか、
そんな気持ちもなかったので
働いている人の年齢層も関係ない。

ただ無機質に仕事をして帰るだけだった。

そんな風にして大学を卒業したが、
思いがけずブラック企業に入社してしまった。

楽な生き方とは正反対の日々が訪れ、
毎日上司からの恫喝にさらされる。

これまでの先輩社員と同じ道をたどるなら、
数週間から数ヶ月で退職に追い込まれることになる。

楽しい生き方とも、楽な道とも無縁な場所に来てしまった。

まだ社会人としてのキャリアが始まったばかりの時期のため、
すぐに辞めれば
今後の転職を考えた時に
致命的なダメージとなるだろうことは容易に予想できた。

だから、とにかく必死に堪えた。

理不尽であっても、割に合わなくても。

一方で、そんな状況から抜け出すために副業を始めた。

とにかく会社員として一生を過ごすのが嫌だった。

この時には、
特別に楽をしたいというわけでもなかったし、
まして人生を楽しみたいと贅沢なことを思っていたわけでもない。

とにかく、あまりにもひどい状況から
どうにか抜け出したい一心だった。

結果、副業が軌道に乗り始めたところでリストラにあい、
そのまま独立することになった。

幸い独立後に、あっさり以前の給料の金額を越え、
無事に生計は成り立った。

そのまま、ビジネスは順調に推移していった。

ある意味、このまま行けば楽な生き方を続けることもできる。

生まれて初めて、そんな感覚に直面した。

独立から約3年が過ぎ、退屈を感じるようになった。

人間は贅沢なもので、
苦労が多ければ楽を求めるのに、
それが満たされれば次の欲求が湧いてくる。

もっと楽しい人生を送りたいとか、
充実感や体験価値を得たいとか。

あまりに暇だったこともあり、
気まぐれにマレーシアに移住してしまった。

これは楽な生き方と楽しさを天秤にかけたというより、
退屈をまぎらわすための決断だった。

もはや日本に住む必然性もなくしていたので、
いわばノーリスクな選択という感覚でマレーシアへ。

気に入らなければ戻ればいいだけの話なので、
難しく色々検討する必要もなかった。

マレーシアに移ってから、
友人の誘いもあって様々な国に行く機会ができた。

旅行は面倒な側面もある。

わざわざ航空券やホテルの手配をしたり、
事前に空港からの移動手段を調べたり、
慣れない土地で苦労したり。

それでも、楽しいことも多かったし、
未知な世界に触れられるのもよかった。

心が震える体験もたびたびできた。

そして、旅をするように暮らし、
暮らすように旅をするという人生の方針も
自然に心の中に根付いた。

どこかのタイミングで決意したわけではなく、
いつの間にかそんな心境になっていくことに。

そして、次第に楽よりも充実を求めるようになった。

もっと楽しい生き方をして、
多くの体験を通して学びを得て、
それをフィードバックしていきたいという感覚が
徐々に強くなっていくのを感じた。

独立して海外に移住し、
多くの旅をしたり、変わった人に会ったり。

そうした情報を発信することが
1つのライフスタイルのパターンを示すことになる。

それが誰かの参考になるのは面白いし、
全面的に共感してもらう必要もなく、
部分的に参考になる部分があれば十分。

マス時代と違い、社会的な同意が取れるライフスタイルなど
もうどこを探しても存在しないのだから。

自分の生き方をそれぞれが探す時代だし、
変わった事例として参照してもらえればいい。

こうして、いつの間にか楽な生き方を最優先するのをやめ、
次のステージに移ることに。

人生観なんて環境によっても変わるし、
それまでの経緯によっても違ってくる。

今の私は紆余曲折を経て自宅を引き払い、
手持ちの荷物だけで世界一周中。

こんな未来を学生の時に描いていたわけではないし、
独立した時だって思いもよらなかった。

それでも、実際にそんな生活を送っている。

この先も色々な変化が起きるのだろうし、
それを受け入れる準備は整っているつもり。

また楽な生き方に傾く時期があるかもしれないし、
それはそれで構わない。

元々が細く長くという志向を生まれ持っているのだし、
花火のように一気に燃え尽きる性質だとは思っていない。

無理に自分の性格を変えるつもりもないので、
なるようになればいい。

ただ、今現在目の前にある現実として、
楽であるかどうかよりも
充実しているかどうかを重視する生き方になったということ。

10年後に今をどう評価しているかは分からないが、
ひとまず楽しくやっていければいいと思う。

楽な人生vs楽しい生き方の究極系

クロアチアのカモメ
以前にマニラに住んでいたことがある。

プール付きのコンドミニアムに住み、
ジムやビリヤード台、ダーツ等も完備されていた。

ここでサラリーマン時代の夢、セミリタイアを実現してみた。

この時にはたしか32歳か33歳だったので、
相当なアーリーリタイアということになる。

働かないというのは、ある意味楽な人生の究極系だろう。

別に学校に通うわけでもなく、
他の活動に励むでもなく、
独立して自動的に仕組みが機能する状態を作れたことを
ただ満喫するだけの日々だった。

本を読んだり、プールサイドで昼寝をしたり、
泳いだり、ジムで体を鍛えたり、映画を見たり・・・。

そんな日々を送っていたのだが、致命的な問題があった。

2ヶ月もたたずに飽きてしまった。

たしかに楽でストレスもないのだが、つまらない。

結局セミリタイアは終了し、仕事に復帰した。

やりたいことをやれる方がいいと判断したから。

また、マニラでの1年間の生活が終わった後、
無期限での世界一周の旅に出た。

どの国をどんな順番で周るかも決めない
行き当たりばったりの旅だったが、
セミリタイア生活と違って体力を使う。

当然長距離の移動もあり、
マニラからロンドンに飛べば直行便でも14時間ほどかかる。

しかし、楽しいい生き方という意味では、
訪れたい国を訪れ、滞在したい街でのんびりするのは
素晴らしい体験だった。

セミリタイアと違い、この生活に飽きは来なかった。

世界一周が終了した後も、
自宅を持って特定の街に住むのではなく、
各国を転々と周る生活を1年以上続けている。

終了の予定は今のところ未定。

楽の集大成のようなセミリタイア生活よりも、
楽しさを求めた旅する暮らしに個人的には惹かれた。

旅をしていれば、移動で疲れることもある。

ポルトガルやカナダでは人種差別にあったこともある。

ブルガリアのホテルではパソコンが盗まれたりと
時々悪い出来事があり、ストレスも感じた。

しかし、それらのマイナス面を補って余りあるだけの充足感が
旅を続けることを促してくる。

もはや迷う余地もないほど、当然のこととして。

そんな生き方にたどりついたというのも、
無気力だった昔を思い返してみると面白いものだと思う。


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