昨年にフィリピンでの永住権を、一昨年にはマレーシアのリタイアメントビザを取得した。
それぞれクオータービザとMM2Hというものになる。
将来安心して住む国を確保する目的でこれらのビザを取ったが、市民権についてはどの国についても取得を検討していない。
例えば、南米のドミニカの市民権が簡単に取れるという話もあるが、そこに魅力を感じないのが実際のところ。
これは別にドミニカだからいけないと言っているわけではなく、そもそもどの国であっても、万国共通で市民権を取ろうと思っていない。
一般的な権利の強さとして言うと、市民権が最も強く、それに次ぐのが永住権。
そしてリタイアメントビザは、さらに継続性や権利が弱まったものという位置づけになる。
そういった意味で言うと、将来の居住国を確保する意味で言うと、最も強力なのは市民権なわけで、ここは矛盾しているように感じるかもしれない。
しかしながら、市民権のデメリットを知れば、なぜ私が取得を頑なに避けているのか、納得していただけるはず。
市民権の決定的なデメリット
永住権やリタイアメントビザの場合には、それを取得しても日本人であることに変りはない。言い換えると、国籍については全く変更はないので、+αの権利を得ているというだけで、特に失うものがあるわけでもない。
もちろん申請にかかる時間とか費用とか、そういったものは存在するが、日本のパスポートを失うとか、そういったことはないわけなので、これまでと何かが大きく変わることはない。
これに対して、市民権を得ると国籍も一緒にくっついてくることになる。
これは自動的にそうなっているので、国籍の取得を拒むことはできない。
それだけであれば別に問題はないわけだし、二重国籍を認めている国も多い。
しかしながら、日本はどうかと目を向けてみると、二重国籍は原則として禁止されている。
一定の年齢までは、条件を満たすことによって二重国籍の状態を維持し、時期が来た段階でどちらの国籍を使うかを選択することはできるが、私の年齢ではそういったことはできないし、どこかの国で市民権を得るのであれば、その条件にも当てはまらない。
そうなった場合、日本国籍を失うことになるので、これはかなりのリスクを伴うことになる。
そもそも日本のパスポートは、世界的に見ても非常に強力。
多くの国にビザなしだったり、観光ビザを取得するだけで入国できることは大きなメリットで、それは私も世界を一周したり、各国を転々としながらホテル暮らしをする中で、切実に感じてきたこと。
日本人であれば当たり前に訪れることができる国であっても、国籍によっては、事前にかなり厳しい条件のビザを取りにいかなければいけないし、そのために大使館に寄ったり、必要書類を用意したりする手間もかかる。
そう考えると、日本人であることをやめる理由はないわけで、市民権を得ることによって生じる二重国籍の問題、そしてその結果として日本の国籍を捨てなければいけない点が、もっとも大きな障害となっている。
現実問題としては、海外居住者の中には、二重国籍者も少なからずいるという話ではあるが、近年それについての締め付けが厳しくなっているという話もあり、やはり無視できる問題ではない。
日本人でいることのメリット
先程言及したように、日本のパスポートは世界の中でもトップクラスの信用力なので、安くで市民権を買える国と比べると、国際的な信用力に大きな乖離がある。当然ながら、日本国籍があれば、生まれ育った日本にいくらでも滞在することができるし、私のようにこの数年は海外で暮らしていても、いつかは日本で再び暮らし始める可能性があることを想定すると、日本人でいることには大きなメリットがある。
さらに言えば、多くの国から日本人は好かれている傾向にある。
そういったことを考えても、市民権を取ることで、わざわざ日本人をやめることのメリットは、今の段階ではあまり存在していないように感じる。
実際、私の周りでも永住権やリタイアメントビザを取って特定の国に住んだり、あるいは将来に備えている人はかなりいるが、市民権を取った人は今のところ存在しない。
もし市民権を取るとしたら
そんなわけで、今のところ日本の国籍を捨てるつもりは一切ないし、あまりそういった話をしている人と会ったこともない。しかしながら、唯一日本国籍を捨てる際のシナリオを口にしたマレーシア在住時代の友人のことを思い出してみると、納得させられる部分もある。
というのも、今現在日本においては、属地制の税制が取られていて、居住国での納税が基本になっている。
他にも不動産収入等があれば、その不動産の所在地で納税を行うようなこともあるが、原則としては住んでいる国に税金を納めるのが世界的な潮流であり、日本人においても適用されているルール。
しかしながら、日本が税不足に陥ることによって、属人性になるのではないかという噂もごく一部では囁かれている。
それについて友人が口にしたのは、もし仮に日本が属人性のルールを適用するのであれば、日本人をやめるという言葉だった。
彼はその後、フィリピン人と結婚したようだし、行動力のある人なので、もし仮にそういった事態になれば、実行に移しかねない。
そしてこれは、多くの富裕層についても言えることだと思う。
国籍を変更するためには市民権を得ればいいわけだし、例えば1000万円ぐらいで市民権を買える国もある。
市民権欲しさということではなくて、節税対策として属人性の税制から逃れるために日本人を辞める人も中には出てくるはず。
そんなことになった場合、様々な節税スキームが開発されるわけで、結局富裕層の一部は、ますます海外に流出してしまうのではないだろうか。
もちろん属人性の税制が導入されるという話が現実になる可能性は低いし、おそらくそんなことにはならないと思うが。
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