世界的な人口動態において、もっとも注目されていることと言えば、一般的には人口増加や人口爆発と呼ばれる現象。
アジアやアフリカ、南米を中心に子供がどんどん生まれ、さらに世界的に平均寿命が延びることによって、人間の数が多くなり、そのことが食料や水の不足を初めとして、様々な問題を引き起こす要因となることが危惧されている。
どう考えても、地球環境において適正な人数を今の段階でも超えているわけだし、それがさらに80億人、90億人、100億人と数字を伸ばしていくことについては、危険視せざるを得ない。
その一方で、他にも重要な要素があって、その一つが、アーバナイゼーションと呼ばれているもの。
こちらは都市化と訳されることもあるが、字義通りにどこかの町や村が発展して都市になっているという話ではなくて、都市への集中化と言った方が、日本語としては意味が通りやすい。
例えば日本で言うと、東京や大阪、福岡、仙台、名古屋等の大型都市を中心にしつつ、それ以外の政令指定都市にも人口が集中して、それ以外の小さな町や村は住民を確保できるだけの魅力がなくなり、次々に限界集落化していったり、あるいは以前と比べて著しく人口が減少することを示している。
アーバナイゼーションは少子高齢化を迎えている日本ばかりではなくて、世界的に起こっている現象。
急速に進むアーバナイゼーション
1950年頃には、世界の人口のおおよそ70%は、都市部以外の田舎や農村に住んでいたとされている。そこからどんどんアーバナイゼーションが進み、国連の発表によると、2007年の段階で、都市人口とそれ以外の人口が、ほぼつり合いが取れる状態になった。
つまり50年ちょっとの間に、田舎から20%の人口が流出し、それらの人々は都市へ移住をしたことになる。
さらに国連の予測によると、今後40年程度で世界の約7割の人が都会に住むことになり、1950年当時とは逆転現象が起こることになる。
約100年の間で、都市と農村や田舎との立場が完全に逆転するわけだが、これによって巨大都市の規模はますます大きくなっていき、様々な部分でメリットと弊害をもたらしていくことになる。
当然ながら人間の移動は、富の移動とも言い換えることができるため、都市部とそれ以外の地域の課税権であるとか、あるいは税金の分配とか、そういったところにも影響していくのは容易に予想がつく。
しかしながら、個人的に感じるのは、必要以上に大きくなってしまった都市は、残念ながら住み心地がいいとは言えないということ。
過剰な人口集中が生み出す問題
世界各国を周ってきたが、やはり町には適正なバランスというものがあって、それを逸脱してしまっている街はいただけない。特にジャカルタやクアラルンプール、マニラ等の新興国の首都は、都市計画もないままひたすら拡大しているので、渋滞解消やインフラの整備が全く追いつかず、ある部分においては、年々状況が悪化している。
こういった中において、過度なアーバナイゼーションが進んでいくと、問題が全く解決しないまま人間だけが増え、ストレスが増していくことになる。
国よりも街単位の評価が重要に
そして、このアーバナイゼーションの流れにおいて顕在化するもう一つの側面として、国力とそれぞれのエリアの力が、一致しなくなっているということ。例えば東南アジアの首都、バンコクやシンガポール、クアラルンプール等に初めて来た人が、その発展ぶりに目を見張る光景には何度も遭遇したが、これらの首都は、もはや世界の他の首都と比べて、著しく違いがあるわけではない。
もちろんまだまだスラムがあったり、あばらややバラックと呼ばれるような建物が多数残っている側面はあるが、発展している部分に注目すれば、東京やパリと遜色ないと言っても過言ではない。
ではそれぞれの国の農村部はどうかと言えば、先進国とは全く似ても似つかない生活が未だに続いている。
アーバナイゼーションによって、各国の大都市は力の差が縮まってきている反面で、国と国との力が均衡しているかといえば、そんなことはない。
こういったことも、アーバナイゼーションによって起こっている現象として、頭の片隅に入れておく必要がある。
なお、この流れで考えていくと、地方創生という政府のスローガンは、アーバナイゼーションという時代の流れとは逆行している。
むしろ人口が減少しているのであれば、スマートシティを目指して、行政や医療、基本的な生活のインフラ等が揃っているところでかたまって暮らす方が効率的だし、世界の大都市と競争力を持っていくためにも、ある程度各都市に人が集まっていることは必要な条件となる。
例えば、東京に2000万人も3000万人も押し込むことは、住環境として見た時に賛成しかねる部分はあるが、例えば人口が上位10位以内に入っている町に人を集中させていくとか、そういった政策を取った方が、世界と戦う競争力を確保することを考えた時には、合理的な方針となる。
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