ピエタを読んでベネチアに移住したくなった


大島真寿美の小説「ピエタ」はベネチアを舞台にして描かれている。

主人公のエミーリアはピエタとよばれる慈善院に幼少時に捨てられ一時期は乳母の元に出されるもののそれ以外の人生をこのピエタで育てられ、そしてそこで働くことによって過ごしてきた。

音楽によって生計を立てている部分もあるこのピエタという慈善院はアンナ=マリーアという天才演奏家をエミーリアと同期で輩出し、さらにはアントニオ=ビバルディによるところもあり、演奏会は大盛況となっていた。

そのビバルディは理事会との折り合いが悪く、何度もクビになったり復帰したりしていたが、物語の冒頭の方でウィーンにて亡くなったことが伝えられる。

ビバルディの姉妹であるザネータや病弱のマルゲリータはそれによって著しく運命を狂わされたり赤毛の司祭のアンニーナとよばれるプリマドンナやその姉であるパオリーナはビバルディと親交が深かったが、パオリーナは思い出の住人としてやがて暮らすようになる。

他にもピエタ出身で薬屋になったジーアや貴族であり主人公エミーリアとかつては結婚の話もでていたカルロ、そしてその妹のベロニカ、カルロと結婚し自らの浅はかさを美点として受け入れる妻ゾーエ等の様々な登場人物がでてくる。

特に印象的なのはかつて舞台装置をてがけてオペラ等の裏方として活躍し、その後に画家に転身したカラレットとゴンドリエーレのロドビーゴ。

カラレットに誘われ主人公のエミーリアはかつて縁談のあったカルロとの再会の後に落ち込んでいるところでゴンドラに乗ってベネチアを外から眺めることになった。

夕闇に沈むベネチアの美しさは筆舌に尽くしがたいものだと思うが、かつて訪れた時の面影を思い返すともっといろんな角度からこのベネチアという水上都市を眺めてみたい衝動に駆られた。

そしてゴンドリエーレのロドビーゴだが、彼がかつてビバルディから口伝いに聴いていた曲が実は物語の核心に迫るものであることが終盤になって明かされる。

それにしてもベロニカの屋敷にはお抱えの運転手ならぬお抱えのゴンドリエーレがいるという設定になっていたが、これは確かに現代のベネチアの交通事情を考えても納得できるものがある。

というのもベネチアは基本的に車の乗り入れが禁止されており、移動手段となると徒歩かゴンドラ、あるいはそれ以外の船ということになる。

フィリピンやタイに住んでいると運転手付きの生活をすることは別に難しいことではなく、むしろ駐在員であってもそんな生活をしたりしているが、ゴンドリエーレを雇ってお抱えにしているというのは全く違った風情があってなかなか面白いのではないかというふうに思う。

ベネチアに移住したところでそこまで人件費が安いわけではないのでフィリピンでドライバーを専属で雇う場合に比べれば圧倒的に費用も高いし、現実的に必要かと言われればそんなことは全くないわけなので、そういった生活をすることはないだろうが、なんだか風流な感じがする。

そして長い冬の終わりを締めくくるカーニバルではマスカレードとよばれる仮面がそこここで見られ幻想的な雰囲気になるが、そのカーニバルの終わりを告げる午前0時のサンマルコ大聖堂の鐘というのも一度現地で聴いてみたくなった。

ベネチアは一度や二度行ったくらいではその魅力を味わい尽くすことは到底できない街だし、いっそ移住でもしてそこでゆっくり生活をしながらベネチアの様々な季節、様々な時間帯を直に体感してみたくなった。



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執筆者、伊田武蔵
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