マレーシアは東南アジアの中でも、民族構成が多様であると言われる。
そのため、いわゆる多文化社会と定義付けられるが、それについて好意的な見方をする人もいれば、問題視する人もいる。
実際にマレーシアに2年間住んでみて、見えてきたことについて記しておこうと思う。
まず、現実問題として、マレーシアは多文化社会といっても、基本的には3つの民族から構成されている。
まず一つ目は、圧倒的多数を占めるマレー系。
割合的に言うと、外務省の発表によると、だいたい69%ぐらいになる。
次に多いのが中華系で、こちらは23%程度。
そして最後がインド系で約7%となっている。
マレーシアなのだからマレー系が多いと思われがちだが、実際には約1/4が中国系だし、特にジョホールバルのような町であれば、なおさら中国系の割合が高い印象がある。
逆にクアラルンプールでは、インド系住人を中心部のブキビンタンのような一部のエリアでよく見かける。
多民族国家の摩擦
当然ながら、こういった多文化社会は様々な軋轢をもたらすもので、実際に民族間対立は、歴史的にもたびたび起こっている。
それに対して調整を行うためにブミプトラ政策を作り、多数派を占めるマレー系の保護を図ったりもしている。
逆に言えば、政策的な配慮をしなければいけないほど、それぞれに民族対立が起こっているわけだし、実際私の友人がマレー系や中華系の20歳過ぎの若者たちに話を聞いたところ、それぞれ差別をし、忌み嫌っているところがあったらしい。
「何であいつらと遊ばなければいけないのかわからない」といった言葉を返されたという。
これは別にマレーシアだけの話ではなくて、アメリカなどでも見られる傾向。
基本的に人は同じ民族であるとか、同じ国の出身であるとか、そういった同質性を持った人同士で群れる傾向にある。
これは、国家というアイデンティティを持っている大人ばかりの話ではなくて、例えばアメリカの小学生とか、幼稚園児とか、そういった年齢であっても、同じ人種同士で固まる傾向があることは、もはや公然の事実となっている。
さらに言うと、マレーシアの場合、単なる多文化社会ということではなくて、3つしか民族がないこともあり、それぞれの力関係も意識せざるを得ない。
もちろん厳密に言えば、マレー系と中華系とインド系以外も住んでいるわけだし、例えば、日本人もマレーシアにはかなりの数の移住者がいる。
とはいえ、日本人移住者がマレーシアという国家に大きな影響を及ぼすほどではないし、それ以外の白人とか韓国人とか、そういった民族についても同様のことが言える。
主要民族ごとの特徴
主要な民族において、どのような特長があるかというと、マレー系はなんといっても人数が多いということ。
現在の民主主義の社会において、数の力はそれ自体が大きな武器となる。
約65%と最多の割合を占め、全体の2/3を近くを占めているマレー系は、マレーシアのマジョリティと言えるし、数の論理が通用する場面で優位に立つ。
最たる場面が政治力。
一方、中華系であれば、なんといっても経済や政治の中枢に潜り込み、実質的に力を持っているということがある。
主にこの2つの民族が火花を散らしているところがあって、マレー系のペナンの議員が、「華僑はカジノや非合法な事業によって利益を上げている」と発言し、糾弾されたこともある。
これは、このペナンの議員特有の問題ではなくて、たびたびこういった摩擦が生じている。
単なる一政治家の失言というよりは、多くの国民が思っていることを、うっかりと立場を忘れて口に出してしまったというのが、実際のところだろう。
最後のインド系に関して言うと、割合が少ない上に、基本的に貧しく、犯罪率が高い。
そういった意味で言うと、厄介者というだけで、これといった力を持っているわけではない。
多文化社会の負の側面
インドネシアでは、1998年5月に中国人を大量に殺害する事件が起きたこともあったが、そういった極端な負の歴史だけではなく、日常的な民族間対立が起こるのが、多文化社会の現実となっている。
民族間対立が非生産的であるだけではなく、場合によっては危険を及ぼすことにもなりかねないので、当然ながらマレーシアにおいても、普段はなるべく摩擦が起こらないように配慮はされている。
基本的に宗教には寛容だし、何しろ3つの民族で、それぞれ主にイスラム教と、道教や仏教とヒンズー教というように、信仰している宗教も違い、それに伴って、ラマダンやハリラヤ、旧正月などが行われている。
よく言えば、互いの民族を尊重しているということになるし、悪く言えばまとめることができないので、それぞれを認めざるを得なくて、うまく祝祭日を整理統合できない状態とも言える。
こういったところが、多民族に対して寛容と受け止めることが可能なので、そういった点においてマレーシアを称賛する声もあるが、実際に住んで、その国のニュースを見ていると、そこまで長閑な場所ではないことがわかる。
特にクアラルンプールに行くと治安もよくないことは、歩いていてもなんとなく感じることが出来るだろう。
移住先ナンバーワンと言われる国としては、あまりにもイメージと実態がかけ離れているというのが、私が住んでみて至った結論。
そして、これまで世界各国周ってきたが、多文化社会になるほど、結局のところ治安が悪化していくし、特にそれは貧しい移民を受け入れている場合に顕著な傾向にある。
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