自給自足で田舎暮らしする際の残酷な現実

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悠々自適に畑でも耕しながら自給自足をして田舎暮らしをすれば、都会で食材をすべて購入するよりも生活費を落としながらのんびりと生活できると思い、それを実行する人は少なくないし、そうした未来にあこがれを持っている人も多いらしい。

田舎

実は先日、東京で50代までサラリーマンをした後、早期退職制度を利用して会社を辞めて、いわゆるアーリーリタイアをしながら長野に引っ越し、第二の人生を送っている人に話を聞く機会があった。

その人がセブにやってきたので、そこでギリシャ料理を食べながらいろいろと話していたのだが、自給自足の田舎暮らしがいかに現実として厳しいか、そして非効率であるかということを再認識する結果となった。


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自給自足=ゼロ円生活ではない

まず自給自足をする場合の目的として、生活費や食費を下げることは多くの人が考えていると思う。

ついでに言えば、日本の食料自給率の低さを心配して、少しでもその足しになればとか、そういった崇高な理由を加える人もいると思うが、実際にはそういった大局的なことよりも、もっと目の前の節約とか、現在の仕事を辞めたいといったことが実際の動機になっていることが多いと思う。

それ以外にも高級スーパー等で買うと高くつく無農薬やオーガニックの野菜を育てたいとか、自分や子供にとって安心な食べ物を口にできる環境をつくりたいとか、そういった健康志向の人もいる。


たしかに、美味で安全な食材を食卓にのせられる生活は魅力的。

忙しすぎる現代人にとって、スローライフに惹かれるのも分かる。

ただし、問題なのは節約志向の人の場合、自分で野菜を作ればほとんどただで食べられると思っている人も中にはいるが、実際には種を購入したり、手間を惜しみたければ農薬を使ったり、畑を借りたり農具を購入したりといった費用が意外にかかるということ。

そもそも一家で食べられるような野菜の量はたかが知れているし、スーパー等で購入しても年間の費用にしたらたかがしれている。

自給自足をするためにかける費用や、品種の少なさを考えると、実は多大な労力をかけた割には報われない作業であるという結論が、今回の長野に移住した人の話からもうかがえた。

小ロットで多品種を作ろうと思えば、それこそますます労力がかかって、そんなことをするくらいであれば都会で仕事をする方がよっぽど楽だったという。


小規模な農業という落とし穴

農業は基本的に大規模でやらないと効率は落ちていく。

日本の作物が高いのはまさにそれが原因で、アメリカやヨーロッパの場合、広大な土地で農業を営むからこそ効率が高い。

比較的狭い土地でやる場合には、高付加価値の商品を栽培するという手もあるが、ただ単に自給自足で節約をしたいと思っている素人や、アマチュア農家にそこまでのことを要求するのは困難。

こうして思ったほどコストを削減できない田舎暮らしに嫌気がさしてしまう人もいるし、その結果として東京や都会に戻っていく人も中にはいる。

そうなるってくると、その距離の引っ越しをした分だけコストがかかり、田舎に住んでいる間家賃が安かったとしても、その分を帳消しにしてしまうくらいのインパクトがあったりする。

結局のところ、安易な自給自足は労力の無駄遣いでしかないので、本当に農業をしたいとか、野菜や果物を育てたいと思っているのでなければ、ただ単にお金を節約するためという目的だと、わりに合わないことが多いと思う。

また、土いじりをしたいという動機も程度の問題があるので、自分が望むよりもはるかに多い労力をかけなければいけないとなれば、それはただ単に負担になるだけ。

定年まではゴルフが趣味だったのに、仕事を引退してやることがなくなった時、夢見ていたゴルフ三昧になったら、ゴルフが苦行になってしまったという話を連想してしまう。

家庭菜園の規模では楽しかった野菜の栽培が、生きる手段としての農業になったところで現実に引き戻され、趣味と仕事のギャップに悩まされるリスクは無視できない。


田舎暮らしには大きな幅がある

緑がうっそうと茂り、周りにほとんど民家もないような山奥から地方都市の外れまで、一言で田舎暮らしといっても、相当に住環境には選択の幅がある。

自転車で最寄りのスーパーまで行けるところもあれば、車がないと話にならないといった土地もあり、自分に合った住居を探さないと買い物難民になったり、病気やけがの時に病院に行くのが大変だったりといった現実的な問題に直面することになる。

私も住環境を考えるために海外の各地に行ったり、さらには日本に一時帰国した際に、東京だけではなく地方の街を視察に行ったりもするが、限界集落のようなところではなくても十分に自然豊かで、自転車さえあれば買い物に行くことはもちろん、外食も一通りのチェーン店ぐらいだったら揃っている街は意外にあるもの。

空気がきれいとか緑が多いとか、そのくらいの基準であれば地方都市の少し外れのエリアでも、需要を満たすことはできる。

都会と田舎の二分論ではなく、田舎という幅の広い概念の中から、どのエリアを抽出するかでライフスタイルは大きく違ってくる。

あまりにも本格的に田舎に行くと利便性が下がりすぎ、都会暮らしに慣れている人でなくても動きが取れなくて困ることもある。

となると、いきなりの引っ越しはなかなか心配なところ。


まずは小さな実験から

そう考えると、いきなり家を買ったり賃貸契約を結ぶのはリスクが大きいので、しばらくの間そういったところで短期ステイをするとか、ホテル暮らしをして、自分に合うかどうかをテストしてみるというのはひとつの選択肢。

特に自宅を買うような場合は要注意で、田舎の物件であれば安いので、そこまで負担にならないと楽観視する人もいるが、そもそも安く売っている家は、買い手や借り手がつかないからその金額になっているという事実がある。

すると仮に自分が買って、もう住みたくないと思った場合にも、売却をしようにも買い手が付かず、固定資産税だけが毎年費用として計上され、さらには修繕費が必要になったりする場合もある。

一軒家が安いからといって、気軽に買ってしまうと後悔することになりかねない。

自給自足にしろ田舎暮らしにしろ、憧れの段階であれば、いきなり本格的にスタートするよりも、まずは小さく実験してみて肌に合うのかどうか確認しておいた方が後悔の種を減らすことができる。

今回長野に移住した人の話でも、3年後にどこに住んでいるかは全く見当もつかないということだった。

東京の都心に住むことはもうないだろうが、千葉とか神奈川であれば十分に引っ越しの可能性はあるし、長野にこのまま住み続けるのは五分五分ぐらいの可能性という話だった。

この人の場合は物件を買わずに、賃貸で安く畑や古民家を借り上げているということだったので、いざという時には引き払うことができる。

しばらく余分に畑の費用等を払うことはあり得るらしいが、そこまで大きな金額ではないのが、まだ救いだと思う。

流動性を確保しておくということは重要なことだし、たとえば50代であればまだまだ今後、人生観や住居に対する思いが変わる余地があるので、ずっと先まで明確に規定することを優先するよりも、不確実性の中で生きていることを前提にして柔軟に対応する方が、はるかに妥当なのではないだろうか。


収入か貯金は結局必要

厳密な意味で自給自足を捉えれば、
収入がなくても暮らせるはず。

しかし、実際はどうだろう?

病気になった場合の医療費は?

服を買ったり、冠婚葬祭にかかる費用は?

電気やガス等のインフラは?

腰を痛めたりして、
農業を続けるのが厳しくなったら?

不測の自体を考えると、
やはりお金がある程度ないとリスク。


また、日常的な支出で考えても、
仮に農業を営んで野菜と果物を栽培するとしても、
肉を食べるにはどうするかという問題もある。

この点、田舎で近隣の人と仲良くなって
お互いにお裾分けをする関係になる場合もあるだろう。

そうなれば、狩猟や牧畜をしている人から
肉をもらえるかもしれない。

しかし、これは見方を変えると
そのコミュニティへの依存度が高まることにほかならない。

自給自足はこの点に弱く、
基本的に栽培する品種を絞った方が農業がやりやすい以上、
物々交換は重要な手段となる。

キャベツばかり食べては暮らせないし、
他の食材と交換するために。

明確な物々交換ではなくても、
おすそ分けも似たような役割を果たす。

しかし、人間関係は悩みの種にもなりやすく、
ましてよそ者となればなおさら。

その土地に住むのが嫌な理由にもなりかねない。


こうしたことを考えると、
経済的に自立した状態を保つことは、
たとえ自給自足やスローライフを営む場合でも
必須となるのだろう。

漫画家の岡本健太郎さんは
自身の狩猟生活を綴った「山賊ダイアリー」という漫画を
執筆している。

この場合、猟師としての収穫と
漫画家としての印税収入が入ってくる。

こうした仕組みを作れれば安心だし、
現代社会においては地方にいても、
なんなら私のように海外に住んでも
収入を得ることは十分に可能。

そうした経済基盤と自給自足を組み合わせれば、
何があっても安心な状況を作り出すことも可能になる。


海外に移住するのは本当に難しいのか?


日本を出て海外に住むようになってから
「海外に移住したい」という話をよく聞くようになった。

同時に、

「英語が苦手で・・・」

「海外での部屋選びで失敗しないか不安」

「他の国での生活を想像できない」

「下見で何を確認したらいいか分からない」

「移住後の仕事やお金が問題」

等々の様々な不安や悩みも耳にする。

そこで、10年以上海外で暮らし、
4ヵ国に住んできた経験を凝縮した電子書籍、
『「いつか海外に住みたい」を手の届く現実にするための本』
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