日本人は世界に打って出るべきなのか?

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海外に活躍の場所を求めたり、
英語や中国語を学習する人は少なくない。

この数年、海外暮らしであることもあって、
そうした人を多く見てきた。


たしかに海外に出れば、あるいは英語が話せれば
可能性が広がるのは事実。

しかし、仕事における現実はどうなのだろう?



たとえば、マレーシアではマレー語・日本語・英語の
3ヶ国語を話せる人と会った。

彼女にはMM2Hというリタイアメントビザ取得の
サポートをしてもらった。

日本語に関しても、日常会話には支障がない。

まったく訛りが取れていない北海道や九州の人より
スムーズに会話が進む印象さえあった。



では、彼女の月収はいくらなのだろう?

現地の相場を考えると、
語学ができるということを含めても
月に10万円代前半から半ばだろうか。

3ヶ国語を話せる優秀な人材になったところで、
それだけの給料で働いている人がいる。


マレーシア人なら2か国語が話せるのは当たり前。

3カ国語を話せる人も日本のように珍しくない。

語学力を身につけただけでは、彼らに追い付くにすぎない。



ましてフィリピン人の場合、
大卒でも初任給は8,000ペソ程度。

日本円なら2万円ぐらい。

アジアでもっともきれいな英語を話すと言われる彼らとも、
当然競合することになる。



同じ程度の能力しかないのであれば、
労働に対する対価は収束していくのが当然のこと。

まして日本という枠組みを出てしまえば最低賃金の縛りもなく、
世界基準で買い叩かれることになる。

これは理想だろうか?




■日本語という参入障壁

特定のスキルを持っていて、
語学力を身につけることで明確に上のステージに行けることを
道筋として理解できているならいい。

しかし、そんなビジョンもなく語学を学んだところで、
「英語ができない役立たず」から「英語ができる役立たず」に
ポジションが変わるだけ。

「私は何もできませんが、一応英語は使えます」
という人に価値があるかどうかは、
客観的に考えれば一瞬で分かるはず。

そして、英語ができる役立たずは世界中にごまんといる。



英語圏のマーケットが大きいというのは、
需要だけに限った話ではない。

供給においても同様のことが言える。

15〜20億人のマーケットがあるということは、
同数のライバルがいることになる。

まして世界的に見れば日本以上の二極化が進んでいる以上、
能力のない人は淘汰される側に追いやられることになるだろう。




それに対し、日本という市場は
日本語という高いハードルに守られている。

これはこれで価値がある。


たしかに長期的に見て経済が落ちていくという問題はある。

過去に比べれば今後の状況は悪化する。

しかし、スキルもないのにやみくもに世界に飛び出すのは
本当に得策なのだろうか?


日本の人口は1億2,000万人以上。

小さな国のように言われるが、世界では10位。

経済力が落ちていくと言っても、まだまだ世界屈指であり、
そこから転落していくというだけの話。

落ちていくという変化に着目すると暗い気持ちになるが、
冷静に見れば十分すぎる市場規模があることに変わりはない。



この日本語という参入障壁に守られている市場環境は、
決して不利ではないと思っている。

たしかに一部の業種においては、
海外にチャンスを見出しやすい。

例えば飲食店。

市場が飽和している日本よりも、
消費が旺盛で競争がゆるい場所に行った方が
大きなチャンスが得られる。

一昔前のバンコクのように。



しかし、すべての人にそれが言えることではない。

単なる労働力として世界に打って出れば、
月に2万円、3万円で喜んで働く人達と競合するのだから。

賢く海外を活用することは人生を豊かにしてくれるが、
むやみに血みどろの争いになっている市場に
参入するのはどうなのだろうか?

自分よりはるかに安い給料での労働者と競合し、
世界中の優秀な頭脳とも戦うことになる。

そこで勝ち抜けないのであれば、
英語圏での仕事をしても職探しすら難しくなるだけ。


これがマレーシアやフィリピンで暮らし、
さらには各国を周って感じること。




日本という市場を考えても、
対応の難しい病気の看護等を除いた一般の介護や
飲食店等のサービス業なら、
日本語ができる外国人でも問題ない。

残念ながら、この分野においては
日本語という参入障壁は十分に機能しない。



しかし、書き言葉になると話は変わってくる。

ひと通り話すことはできても、
文章を書けない外国人は多い。

ただでさえ、日本語は読み書きが難しい。

漢字も多いし、巧みな表現を追求していけば
日本人だって完成なんて見られない深さがある。

外国人の中でも優秀な頭脳を持つ人が5年努力して
日本語の読み書きを覚えたところで、
標準的な日本人の文章力に劣るというのが実際。



この部分においては、
日本語の参入障壁が見事に機能している。

私が海外に出て暮らしながらも
英語は移住前の1ヶ月で少し勉強したぐらいで、
それ以降は学ばなかった理由。

それは英語力を中途半端に身につけるぐらいなら、
プロとしてのビジネス面のスキルを高める方が
よほど価値があると確信していたから。



日本語の読み書きを伴う部分においては、
外国人の安い労働力が簡単に参入してこれない。

結果、価格競争に巻き込まれずに済む。

その仕事をネット世界を介して行うことができれば
場所の自由を得ることができるわけなので、
日本という世界的に見れば豊かな国で収入を得て、
物価の安い国で生活することも可能になる。


通常、所得と物価の相場は比例する。

北欧やオーストラリアのように所得の高い国は、
同時にうんざりするほど物価も高い。


しかし、所得は高い国の、物価は安い国の基準という
おいしいとこ取りができるのはこのような事情がある。



スキルや明確な戦略がない状態で語学を学ぶのは、
よく分からない資格を取得する程度の価値しかない。

私もサラリーマンになった直後に
簿記とビジネス実務法務検定を取得したが、
今に至るまで役に立っていない。

今後も使うことはないだろう。

あの後、自分のビジネスを求めて副業を始めず、
スキルアップのお題目の下に英語を学んでいたら
今の生活がないのは間違いない。



英語は時に武器になる。

しかし、TOEICで900点以上取れたところで、
スキルがなければ
その他大勢の労働者の1人にしかなれないことも、
月収2万円の人と競合することも、
世界という市場においてはまぎれもない事実。

結局のところ、
「何もできない」状態で言語を学んだところで、
単純労働力が過剰という世界の事実に直面するだけになってしまう。



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