タイの治安は一般に良いと言われているが、
本当に安全なのか?
バンコク在住者として、
この点で言いたいことがある。
タイに住むまでにも、
何度もタイを訪れてきた。
バンコクを中心にプーケット、アユタヤ、
ウドンタニ、チェンマイ、チェンライ、パタヤにも行った。
現地に住む中で、そして旅をしてきた中で感じた
リアルな治安について。
まず、イメージを裏切らずタイの治安は夜も含めて
おおむね良いと言える。
怖い思いをしたことがほぼないし、
バンコクの電車(地下鉄・スカイトレイン)内も
先進国と変わらないほど清潔で整然としている。
乗客の服装もきれい。
手にはスマホやiPadなどのタブレットを持っている人が多く、
新興国のイメージが崩されてしまう。
むしろニューヨークやワシントンのような
アメリカの大都市の殺伐とした地下鉄よりもよほど安心度が高い。
これはアメリカだけが荒れているわけではなく、
ヨーロッパでもミュンヘンやパリで同じことが言える。
いつの間にか、バンコクのスカイトレインや地下鉄は
世界の公共交通機関の中でも
特にリラックスして乗れる部類に入ってしまった。
女性の一人旅や子連れでの旅でも、
基本的にタイなら治安を含めて問題がない。
夜になっても治安が乱れることはなく、
1人で歩いていても不安を感じない。
バンコクに住んでいる女性と話しても、
女性が夜中に1人歩きをしても
問題ないレベルという結論に落ち着く。
もちろん、バンコクの中でも危険な場所はあるので、
そうした場所には近づかないのが鉄則だが、
安全な場所を選んでいる限り極めて治安がいい。
事実、夜が更けてもスクンビットやサイアム、
カオサン、シーロム等は人があふれている。
ただし、スリの被害に遭った友人も
それでもタイ、特にバンコクには軽犯罪が少なからずあり、
友人は2回スリの被害にあっている。
一度目は地下鉄の荷物検査を通った後、
鞄を開けたままにしていたら
中に入れておいたスマホを盗られ、
2度目は後ろポケットに入れていた財布を盗られたということ。
全体としては治安が良いが、
こういったことは現地在住者でも遭遇することがあるので、
安全だと思って気を抜きすぎるのはリスクがある。
スリどころか、日本人居住者も多いエカマイ地区で
2019年には日本人が外国人に刺された事件もあった。
深夜に歩いていたところ、
二人組の強盗に遭遇してナイフで刺されたとのこと。
エカマイと言えば、
日本人居住者が多いことで知られる
プロンポン・トンローの隣の駅。
最近はその先のプラカノンやオンヌットにも
現地就職の人を中心に日本人居住者が増えている。
エカマイは駐在員・現地就職のどちらも住んでいるエリア。
そうした場所でも、
時には強盗傷害事件が起こるのもバンコクの現実。
バンコクで頻繁に見る両替詐欺
バンコクで私が遭遇した他、
タイ在住の友人も複数回見かけている両替詐欺師がいる。
いくら治安がいいと言っても、
このような軽犯罪は少なくない。
そしてこの両替詐欺師、
どうも同一人物の可能性が高そうな模様。
中東系の40歳ぐらいの男で、
妻と思われる女性と一緒にいることが多い。
私が遭遇した時には、
Asok駅を降りたところにあるシェラトンホテル付近で
日本食レストランの場所を英語で聞かれ、
その後で片言の日本語を話し始めた。
日本が好きなので旅行に行きたいとか、
お札を見せてほしいとか。
この時点であやしさ満点なので無視して歩き去ったが、
聞いた話だとここでお金を出した場合、
まずは1万円札を見たいと言い出すらしい。
そして彼自身は100ドル札を取り出し、
交換してほしいと持ちかけてくる。
為替レートによって金額は変えるのだろうが、
こちらにとって有利な金額を提示してくるため、
ラッキーだと思って交換すると落とし穴がある。
その男が差し出してくるのは偽札という手口だそう。
手口が判明しているということは、
だまされた人がいるのだろう。
その男はどうも1年以上バンコクで活動しているらしく、
時々目撃されている。
タイ全土で活動しているのか、
バンコク限定なのかは不明。
これは典型的な手口だが、
あやしい人物からのおいしい話にはご注意を。
バンコク以外の街の治安は?
日本人旅行者も多いプーケットにおいては、
特に危険を感じることはなかった。
ここでは友人が案内してくれたため、
ドア・トゥ・ドアでの移動となって
あまり現地の治安を感じる機会はなかったのだが。
とは言え、繁華街のエリアに夜に行っても
落ち着いて歩くことが出来た。
相変わらずタイの人々の穏やかさに触れているうちに
バンコクに戻る日がやって来た。
ウドンタニにおいては、
若干タイの治安に不安を覚える点があった。
というのは、ホテルに荷物を置いて街へ出たところ、
ホテルから30メートルぐらいのところで
女性同士で髪を引っ張り合っていた。
ムエタイのような殴り合いというより、
ひたすらお互いの髪の毛を引っ張り、
膠着状態で何か喚いていた。
それを数人の人が見ている。
初めてウドンタニにやって来たばかりだったので、
これには驚いた。
到着した直後にこうした場面に遭遇したのは、
何年か前のアムステルダム以来。
あの時はおじさん同士で揉めていたが、
片方がアイアンクローのように相手の頭を鷲掴みにしていた。
とは言え、この程度の揉め事はどんな国にもあるだろう。
ウドンタニの件も
別に外国人を狙った犯罪ではなく、
タイ人同士でけんかしていただけ。
ただ、もう1つ不安を感じたのは、
ウドンタニには大型犬の野良犬がいたこと。
それも恐ろしく強そうな。
タイだけではなく、マレーシアやインドネシア等、
東南アジアには野良犬は多い。
基本的に中型犬で、彼らはおとなしい。
人に危険を及ぼしたら処分されることを理解しているのだろう。
飼い犬は吠えるが、野良犬はほとんど吠えない。
とは言え、ウドンタニのその野良犬は危険な感じしかしなかった。
襲われたら大の男でも勝てる確率は低い。
そのまま命を落とすことになりそうな猛者の風格がただよう。
何事もなく通り過ぎることができたが、
あれが放置されているというのはタイの治安も
地方に行くと乱れていくのかもしれないと感じた。
危険に見えるだけで、
これまで暴れたことなどない犬なのかもしれないが
威圧感が尋常じゃなかったのは間違いない。
特に野良犬は夜になると凶暴化することがあるので、要注意。
現実問題、ウドンタニはラオスに行く場合ぐらいしか
立ち寄ることのない街。
私もビエンチャンに陸路で行ってみるために立ち寄っただけで、
今後は特に訪れる予定もない。
バンコクやプーケットといったタイを代表する街は
治安が良くて安心して歩ける。
犬といえば、チェンマイでは追いかけられた。
日が落ちかけた夕方に、
涼しくなってきたところで
寺院(ワット・チャイシープム)を訪れたところ、
そこに住み着いていると思われる犬に吠え立てられた。
しかも状況が厄介なことに、
一箇所しか見当たらない出口側に犬がいるため、
容易に脱出できない。
軽く吠えられているとか、じゃれてきている様子ではなく、
本気で殺気を感じる吠え方。
お寺の人の姿も見当たらず、
待っていても状況が悪化するだけと判断し、
植え込みを周り込む形で犬に追わせて
出口へのルートが空いたところで脱出した。
ちなみに、ワット・チャイシープムの前は交通量の多い
Chaiyapoom Rdという通りで、
危うく原チャリにひかれそうになった。
一難去ってまた一難。
それからバンコク近郊の古都、アユタヤだが、
特に危険を感じることはなかった。
Bic Cのような大型スーパーマーケットやその周辺、
ワット・マハータート、ワット・ラーチャブラナ等の
寺院は安全そのものだし、
特に危険なエリアがあるようには見えなかった。
バンコクのような鉄道網のないアユタヤの場合、
生活するにも基本は車移動になるわけなので
移動先が安全なら問題ない。
アユタヤで働く日本人駐在員の人にも会ったが、
やはり怖い目に合うようなことはないらしい。
ただ、洪水で1階が浸水し、
慌てて荷物を2階に移したことはあったということ。
自然災害の中でもタイは地震が少なく、
台風も来ないが洪水はしばしば起こる。
パタヤでは不審な男が近寄ってきたことがあった。
夜にパタヤビーチを歩いていたら、
ちょうど人が少なくなった空白地域のようなエリアで
20代半ばぐらいのタイ人らしき男が
向こうからやって来た。
進路をずらして早めによけようとしたら、
十分なスペースがあるのになぜかこちらに近づいてくる。
途中で両手を広げ、
ニヤニヤしながら意味不明な言葉を口にしながら
明らかに私を見ながら近づいてくる。
薬物でもやっていそうな様子に恐怖を感じ、
人のいる方へ小走りに去ると追っては来なかった。
ビーチなので見通しもよく、
その後も遠ざかる男を何度も振り返って見てみたが、
私が見ていた数分の間には
それ以上のトラブルは起こしていないようだった。
チェンライやホアヒンにも行ってきたが、
のどかな場所というイメージしかない。
チェンライは伝統的な寺院も良かったが、
ホワイトテンプルことワット・ロンクンが美しかった。
街灯が少ないために
チェンライの夜は時計塔のあたりを除いて暗かったが、
危険を伴う空気感はなかった。
リスクが高いエリアも
バンコクやチェンマイ、プーケット等と異なり、
タイの中でも治安が圧倒的に悪いのは
深南部と呼ばれるマレーシアとの国境付近。
こちらはイスラム過激派のテロも多く、
特殊な地域になっている。
昼夜を問わずリスクがあるので、
うかつに近づくべき場所ではない。
外務省の危険情報でも、
深南部のナラティワート、ヤラー、パッタニーは
渡航中止勧告を表すレベル3に指定されている。
あまり日本人観光客が足を運ぶエリアではないが、
マレー鉄道を使って陸路で
タイとマレーシアを移動する場合には
この深南部を通るのが治安上の問題。
安全に移動したいなら飛行機を使うのが得策だろう。
東南アジアの中でもタイの治安はトップクラス。
明らかに危険な雰囲気の場所にズカズカ踏み込んだりしない限り、
安心して過ごせる国。
ビザを取る前から何度も通っていた理由は、
そんなところにもある。
やはり安全な国は歩いていてストレスがないので。
大規模デモの実態
ちなみに、タイでは時折デモが起こる。
その際の治安はどうなのかというと、
バンコク在住の日本人数人に話を聞くかぎり、平和そのもの。
もちろん揉めているまっただ中に行けば話は別だが、
市内で危険が及ぶことはまずなく、
交通規制等で日本人学校が休みになっても
普通に外出はしているという程度。
本当に危険なのであれば、
一時国外へ避難するということも考えられるところだが、
そんな状態になったことはないとのこと。
それどころか、
デモを行っている人もテレビ等に映っていないところではのんびりし、
屋台もやって来て遠足感覚という。
彼らの中にはお金をもらって座り込みをしているだけだったりするので、
特に緊張感はない。
私も2014年のデモ直後にバンコクを訪れたが、
ピリピリした空気はまるでなく、
いつもの平和でのんびりした街だった。
タイの治安だけではなく、
各国の自然災害等もマスコミが派手な部分だけ取り上げるが、
実際は街のごく一部に被害が出ているだけだったりする。
実際の規模感や緊張感は、
現地を訪れないと意外にわからないもの。
事実、ニュースをよく見る人ほど
世の中は危険に満ちていると考える傾向にあるとの
調査結果を示した統計もある。
これは言い得て妙ではないかと思う。
報道する側としては、
真実を的確に伝えることよりも視聴率や雑誌の購入率を
高めることに意味がある。
それを考えれば、
治安の悪さを連想させる事件や災害は取り上げても、
平和であることはまるで物語性がない。
そんな基準で報道しているというのが実際のところ。
ましてタイのような新興国であれば、
日本より遅れた国は問題を抱えていて大変という色眼鏡で
災難を強調することもできる。
しかし、事実がマスコミの報道するとおりであるとは限らない。
タクシーはトラブルも多い
初めてバンコクを訪れた時には、
到着翌日に友人たちと分譲したタクシーが
グルグルとプロンポン付近の同じ場所を回り始めた。
要は遠回りをしてメーターを上げていたのだが、
おかげで別のタクシーに乗った友人たちを待たせることになり、
遠回りを指摘しても叫びだし、
外に降りて堂々とわめき続ける運転手だった。
ムエタイの国なので、
相手が腕に覚えがあるリスクもある。
正当性はこちらにあっても、
海外で怪我をしたのではたまらない。
サミティベート病院やバムルンラード病院のように
日本語が通じる病院もバンコクにはあるが、
お世話にならないにこしたことはない。
乗車拒否ぐらいなら危険な目にあうことはないが、
(バンコクで乗車拒否は日常茶飯事)
指定した場所とは別の場所に連れて行かれたこともある。
タイは治安がいい国とはいえ、
タクシーの運転手が問題を起こす確率は
周辺国より際立って少ないとは思わない。
先日日本から旅行にやって来た人も、
指定したドゥシット動物園ではなく、
よく分からない小さなところに連れて行かれたらしい。
トゥクトゥクは高リスク
タクシー以上に問題行為が多いのはトゥクトゥク。
トゥクトゥクは移動手段というより観光の一環として使われることが多く、
エアコンはきかないし、
外気をモロに受けるので排気ガスも吸うことになるし、
実際上の利便性はない。
それでいて料金もタクシーより割高。
当然地元のタイ人が使うわけもなく、
物珍しさで外国人が利用するだけ。
つまり、彼らからしてみるとカモだけが利用するわけなので、
ワット・プラケオやワットアルンのような寺院を指定しても、
今日は休みだと嘘をついて行くのを断念させ、
キックバックを得られるテーラーに誘導したりする。
たしかにタイシルクは有名だが、
トゥクトゥクの悪徳運転手が連れて行く店は
割高な料金の店が多い。
基本的にトゥクトゥクの運転手が語る
観光地が休みというのは無視した方がいい。
真に受けるのであれば、その前に確認が必要。
私もワット・プラケオという寺院の目の前で、
今から3時間閉まっているので
その間チャオプラヤー川の向こうを案内すると声をかけられた。
無視してそのまま歩き去ったが、
案の定ワット・プラケオは普通に開園していた。
このワット・プラケオはエメラルド寺院とも呼ばれ、
タイ仏教の総本山のような位置づけ。
外国人も多く訪れるので、
それを狙って本業が詐欺師なのか運転手なのか
分からないトゥクトゥクの運転手が群がっている。
相手にするだけ無駄なので、
無視して通り過ぎるのが最善。
タイの中でもバンコクなら
MRT(地下鉄)やBTS(スカイトレイン)が充実しているので、
それを使って移動できる範囲なら
タクシーは使わないほうが気持ち的に楽。
治安が悪いというほどではないが、
トラブルで気疲れするよりもずっと快適に過ごせる。
今が安全か危険かを見分けるポイント
タイは政治情勢も不安定だし、
昨今はテロの問題もあって常に安全とは言えない。
そこで現在の治安状況を把握するために活用しやすいのが、
各地でのセキュリティチェック。
首都バンコクは特に分かりやすく、
BTSやMRTといった公共交通機関、
あるいはサイアムパラゴンやターミナル21のような
ショッピングモールの出入り口で
どのくらい厳重にチェックがされているかが一つの試金石になる。
つまりピリピリした緊張感がある時期には、
当然ながら検査も厳しくなる。
たとえば、ターミナル21の入り口の場合、
金属探知機はあるものの、普段は完全にスルー。
警備員はいるが、
海兵のように額に手を当てて出迎えているだけで
荷物のチェック等はしない。
しかし、事件が起こった後等には
一時的にバッグの中を調べたりすることもある。
BTSにしても、
先日は初めてスーツケースを開けることまで要求された。
何事かと思ったら、
数日後に選挙が控えていた影響だった模様。
こういった視点を持っておくと、
最近のタイがどのような状況にあるのか、
大まかに定点観測ができる。
海外に移住するのは本当に難しいのか?
日本を出て海外に住むようになってから
「海外に移住したい」という話をよく聞くようになった。
同時に、
「英語が苦手で・・・」
「海外での部屋選びで失敗しないか不安」
「他の国での生活を想像できない」
「下見で何を確認したらいいか分からない」
「移住後の仕事やお金が問題」
等々の様々な不安や悩みも耳にする。
そこで、10年以上海外で暮らし、
4ヵ国に住んできた経験を凝縮した電子書籍、
『「いつか海外に住みたい」を手の届く現実にするための本』
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