マニラやセブといったフィリピンの物価は、
日本に比べて異常に安いと
誤解されているところがある。
一面では事実である反面、
旅行に来て思いの外お金がかかることに驚く人も見てきた。
これは当然のことで、
フィリピンの中でもマニラやセブは貧富の差が激しく、
二重価格と言ってもいいぐらいの状態になっているため。
フィリピン人が飲食店でバイトをすれば、
時給は100円〜130円程度。
大卒の初任給が2万円、
語学学校の教師の月収が25,000円、
看護師が45,000円ほどの国なので、
当然ながらマニラも物価は安い。
現地の人向けのものであれば、
という限定付きで。
逆に言えば、
外国人旅行者や移住者にとっては、
また違う側面を見せられることとなる。
ローカルと外国人価格の差
カレカレやシシグ、アドボなど
ローカルフードなら一食45ペソ、
100円程度で食べることもできる。
これは自分で料理をする場合ではなく、
道端にある屋台のようなローカルレストランの場合。
フィリピン人は米が好きな国民だが、
正直、日本人の口には合わない。
炊いた白米がもっとも一般的で、
インディカ米のパサパサ感と
糊のような妙な濃厚さがある。
昔米不足で日本にタイ米が輸入され、
ブーイングに近い反応が出ていたことがあるが、
タイ米よりもフィリピンの米は美味しくない。
タイ米はチャーハンのように油で炒めたり、
スープの中に入れるのに適している。
しかし、フィリピンの米は普通に炊いただけで、
日本の米とはかけ離れている。
そして、妙に米と肉ばかり食べる国民性。
たとえば、こんな風に。
意識的に野菜を摂るようにしないと、
いつの間にか野菜不足になってしまう。
そして、野菜は鮮度が悪い上、
緑豊かな国なのに決して安くない。
一方で外国人向けレストランに行けば、
飲み物代は別で700円程度は普通にする。
マカティのリトルトーキョーの関取や
のだ屋でランチを食べれば、
普通にこの程度の物価となる。
これを見れば、
価格面では日本と変わらないということになる。
リトルトーキョーの場合、
マニラで日本食が食べられるという希少性があるので
その分上乗せされている部分はある。
実際、マカティ内でもチェーン系の店なら
半額程度で食べることはできるので。
マクドナルドやバーガーキングの他に、
フィリピンにはjollibee(ジョリビー)という甘めのケチャップを使った
ハンバーガーショップもある。
jollibeeのキャラクター、ミスタージョリビー
このjollibee、
日本人からはいまいち不評な店だが、
フィリピン人には大人気で、
世界で唯一マクドナルドがシェアNo.1を奪えなかった国となっている。
価格を見てみると、
YUM BURGER(ドリンク・ポテト付き)が80ペソ、
Jolly Spaghettiが60ペソ、
Burger Steak(ライス付き)も60ペソ。
ちなみに、jollibeeはハンバーガーもパスタもとにかく甘い。
jollibeeの他にも、
Inasal(イナサル)やChowking等の
フィリピン料理や中華料理のチェーンもある。
こちらは250円から350円程度で食事ができる。
こうして見ると、
フィリピンの物価はそれなりに安い感じがしてくる。
ローカルレストランはさらに安いので、
いくつかの階層に分かれているということ。
そして、外国人向けレストランの価格というのは、
マニラに限らず新興国でもそれなりにする。
たとえば、マカティのグリーンベルトというモールに入っている
レストランは一部のファーストフードを除いて
それなりの金額のところが大半。
とは言え、
アルコール抜きなら3000円〜4,000円程度で
そこそこ高級なスペイン料理やギリシャ料理を食べられるので、
日本と比べて物価が安いことに違いはない。
ただ、何でも一食100円や200円で
食べられるわけではないということ。
そもそもそんな国はないが・・・。
何しろ、国が発展していないと
外国人向けのレベルの高いレストランが増えてこない。
経済がそこそこ発展してくれば、
それなりのレストランは外国人に向けた価格になるので、
国際的な基準に近づいていく。
結局、それなりの質のものを食べたければ、
極端に安くで済むわけではないということ。
食費を見ると、
そこまでマニラの物価は安くないものの、
交通費・人件費関連は話が違う。
交通費や人件費の安さ
マニラのタクシーの初乗り運賃は40ペソ、90円程度。
これは世界の首都の中でもトップクラスの低価格帯。
電車も30円程度で乗れるし、
バスなら20円、
フィリピンでおなじみのジプニーなら15円から。
ただし、これらの公共交通機関は
治安面で問題があるのも事実。
フィリピンに慣れていなければ、
タクシー移動の方が安全。
多少コストが割高になっても、
お金で安全を買うという意識がこの国では必要となる。
安いのは交通費ばかりではなく、
人件費の面も際立っている。
ローカルの美容院は50ペソ、120円程度。
マッサージもマカティなら1時間800円、
セブなら500円ほどでやってもらえる。
フィリピン人の人件費の安さが反映されるのは、
こうした日本人にもなじみの深いサービス業ばかりではない。
住み込みのメイドを月に2万円から3万円で雇えることは、
多くの日本人を驚かせる。
コンドミニアムにはメイド部屋が併設されていることも多く、
最初から家事を自力でしないことが想定されている。
私はマニラに住むようになってからも、
独身だしメイドを雇うことはしていない。
食事はすべて外食だし、
掃除もその都度頼めるので。
しかし、子供がいる家庭とか、
夫婦で暮らしている場合にはメイドに家事を任せるのも
フィリピン生活の大きなメリットになる。
ヤヤと呼ばれる子育て専門のメイドもいるほど。
と言っても特別な技術を持っていたり、
研修を受けたりしているわけではなく、
普通のメイドをやるより楽そうという理由で
ヤヤをやっているフィリピン人もいるので
信頼性はいまいちなところもあるが。
とは言え、たった2万円で家事から解放されるのなら、
夢のように感じる主婦の方も少なくないだろう。
また、日本に住んでいる場合と比べ、
航空券代の安さを感じることも多い。
たとえば、マニラのニノイ・アキノ国際空港から
バンコクのスワンナプーム国際空港まで
タイ航空で12,000円台。
同じくニノイ・アキノ国際空港から
台北の台湾桃園国際空港まで
セブパシフィックで8700円台だった。
セブのマクタン国際空港からも海外に行けるが、
国際線はあまり発着していないため、
マニラ経由になることが多い。
ホテル代や観光費用は?
マニラで5つ星のペニンシュラで1万7,000円、
4つ星のHoliday Innなら1万円、
3つ星のBest Western Hotel La Corona Manilaが5,000円前後。
セブなら5つ星のCrimson Resort and Spa Mactanが19,000円、
4つ星のMandarin Plaza Hotelが6,000円
3つ星のQuo Vadis Dive Resort Moalboalが4,500円ほど。
日本に比べるとホテル代は大幅に安い。
観光費用に目を向けてみると、
マニラで観光スポットと言えば
グリーンベルトやモール・オブ・アジアといった
ショッピングモールを除けば、
イントラムロスに集中している。
イントラムロスはスペイン統治時代の面影が
色濃く残るエリア。
こちらの入場料を見てみると、
サンチャゴ要塞が65ペソ、
マニラ大聖堂が無料、
カーサ・マニラ博物館が75ペソ、
サンオーガスティン教会が無料。
(博物館部分は100ペソ)
イントラムロスの代表的な施設をすべて周っても、
500円ほどで済む。
では、フィリピンと言えばおなじみの
海関係のアクティビティはどうか?
マニラにはマニラ湾があるものの、
泳いだりする人はほぼいない。
そこで、セブはどうかと言えば、
シュノーケリングが2,500円、
ダイビングが12,000円(2ダイブ)
アイランドホッピングが9,000円ほどとなっている。
ちなみに、雨の時に屋内で時間を潰す際には、
映画が150ペソ、
ボーリングが85ペソ程度となっており、
日本と比べてもお得な価格に設定されている。
家賃の相場は?
実際にマニラで生活するのなら、
家賃も重要な要素になる。
生活費の中で、大きな割合を占める項目なので。
日本人を含めた外国人がマニラに住むなら、
治安も考慮してエリアを決める必要がある。
その前提で考えても、
月に5万円程度で部屋を借りることができる。
それなら日本でも同じと思うかもしれないが、
24時間体制で警備員が常駐し、
プールやジムが併設されているという点は大きく異なる。
私はマニラ市内にあるマカティに住んでいるが、
このエリアでも東京の一等地に比べて圧倒的に家賃が安い。
なお、マニラの中だとグローバルシティが
もっとも家賃相場が高く、
その中でもフォートボニファシオは新興開発地域で
生活費は家賃・食費等含めて高くなる。
グローバルシティに続くのがマカティで、
古くからの商業地域(オフィス街)でもある。
マカティで1ベッドルームの部屋を借りるなら、
家賃が5万ペソを越えるのが普通。
他にもオルティガスが日本人移住者に人気のエリアとなっている。
家賃を抑えてフィリピンに移住するため、
セブやダバオに住む人もいる。
日用品の価格水準
普段の生活で必要な品を
スーパーやサリサリと言われる小売店で買う場合の
価格の目安は以下の通り。
まずは飲み物から。
1500mlのミネラルウォーターが33ペソ、
500mlのコーラが27ペソ、
330mlのビール(サンミゲル)が30ペソ、
キリン一番搾りが65ペソ。
続いて食料品に目を向けると、
マンゴーが1キロで70ペソ、
白菜が丸々1つで75ペソ、
鶏のモモ肉が100gで17ペソ、
豚肉が100gで35ペソ、
牛肉が100gで45ペソ、
エビが100gで55ペソ、
カップラーメンが24ペソ、
パスタが500gで75ペソ。
質の悪い衣料品も
フィリピンでは服や靴も安く、
1000円でジーンズを買うことができる。
服全体としては、日本の半額程度の物価という印象。
ただし、物が悪く、
スニーカーは一度雨の日に履いたら
ひどく色落ちしてしまったこともあった。
安かろう悪かろうな部分が少なからずある。
こうした総合的なところで見ていくと、
やはりマニラの物価は安い。
食事についてはそこまでではないものの、
それ以外の項目が軒並み低価格になっているので。
ただし、日本の地方都市とフォートボニファシオを比べるように
明らかに釣り合いの取れない場所同士を比べれば
日本の方が家賃が割安に感じる。
そもそもフォートボニファシオは
節約したい人向けの街ではないので当然だが。
マカティやグローバルシティのメインの部分も同様で、
とにかく生活費を安くしたい人が住む場所ではない。
逆に東京の一等地とグローバルシティを比較すれば、
家賃の割安感が強調される。
ボラカイの滞在費は別
世界的なリゾート地と知られるボラカイ島は、そもそもフィリピンであることがあまり知られていない。
この島はビーチリゾートのため、
海沿いのホテルを中心に価格は高騰している。
世界的な傾向だが、
たとえ新興国でもリゾート地については
宿泊費が跳ね上がる傾向にある。
ざっくり言えば、マニラの3倍や4倍することもざら。
そのため、一般的なフィリピンの物価の感覚を
ボラカイに持ち込むことはできない。
これは同じくビーチリゾートであるエルニドについても同様。
逆にボラカイやエルニドの滞在費が
マニラやセブ、ダバオに当てはまるわけでもない。
セブには2つの顔が
フィリピンが有するもう1つの有名リゾートがセブだが、
この街はビーチリゾートであるだけではなく、
人口がマニラに次いで2番目の都市でもある。
空港のあるマクタン島の南側(特に東の方)は
高級ホテルが立ち並ぶのに対し、
セブシティは大きな街になっている。
セブシティはビーチリゾートの雰囲気はなく、
むしろマニラに環境が近い。
マクタン島のビーチ沿いのホテルは当然高く、
以前に泊まったABACAホテルは一泊9万円以上した。
しかし、セブなら安めの中級ホテルは4,000円程度でも見つかる。
つまり海沿いか内陸かで価格は大きく異なる。
基本的な物価水準はマニラに近いが、
メイドは月に1万円から2万円で雇えるということで、
この部分は割安感がある。
フィリピンには複数の案件に投資をしているが、
セブのコンドミニアムも購入している。
ただし、不動産価格はマニラと大きく変わらず、
かなり高騰しているのも事実。
投資対象として不用意に購入すべき段階ではなくなった。
マニラに続いてセブにも住んでみたが、
外国人向けの住宅価格は思ったよりも差がない印象。
マクタン島の物件も内見してみたが、
結果的には利便性の面で
セブシティのコンドミニアムに住むことにした。
こちらでも、それなりのクオリティの建物なら
1ベッドルームで4万ペソ程度からが相場。
ただし、セブを代表するアヤラモールは、
マニラのグリーンベルトと同様にアヤラグループが
デベロッパーとして開発しているが、
テナントの価格帯は大きく違う。
グリーンベルトだと1人3,000円〜4,000円程度のレストランが
ゴロゴロ入っていたが、
アヤラモールだと1,000円程度の店が中心。
マニラで言えば、グロリエッタクラスとなる。
このあたりはフィリピン有数の財閥、
アヤラグループも計算してテナントを変えているのだろう。
セブでランドリーに洗濯物を出すとキロ80円ほどで、
洗濯・乾燥のみとは言え、このサービスは助かる。
セブには洗濯機のないコンドミニアムも多く、
その場合にはランドリー業者が宅配で来てくれるため、
自宅で服を洗う必要がない。
日本で言うクリーニングに近いが、
自宅でできないきめ細かなサービスというより、
ただ洗濯機と乾燥機で洗って乾かすだけ。
フィリピン以外でもタイやラオス、マレーシア等で見る
シンプルなビジネス。
現地に移住した場合ばかりではなく、
長めの旅行の時にも大いに役に立つ。
また、セブでフィリピンの物価の高さを感じたのは、電化製品。
普段は家電を自分で買うことはなく、
コンドミニアムに備え付けのものを使っているため、
電化製品の高さを実感する機会は少ない。
ただ、以前にマレーシアで買ったPHILIPS製のシェーバーの
調子が悪くなってしまったため、
買い換えようと思ったことがあった。
すると、以前は7000円ぐらいで購入したのと
同じようなタイプが2万円ほどする。
アヤラモール内の電気屋、ドラッグストアでは
同じぐらいの価格帯でしか販売していない。
アマゾンで見ると8,000円程度だが、
フィリピンは配送の圏外。
香港へ行く予定があったので
その時に買うことにしたのだが、
旺角(モンコック)の家電量販店で8,000円ほどだった。
同じPhilipsの同型のシェーバーでも、
倍以上することに。
これは驚いたが、
頻繁に電化製品を買い換えるわけではなく、
大抵のものは部屋のオーナー負担となるため
あまり関係ないところではあるかもしれない。
ここまでをまとめると、
フィリピンの物価は基本的に日本より安いものの、
外国人らしい暮らしをするにはそれなりにお金がかかる。
セキュリティ面も考えると、
現地の一般的な人と同じ暮らしを送るのは困難なので、
生活費の予算として月に15万円ぐらいは見ておいた方が
余裕を持って暮らせることになる。
費用だけ見るとメリットを感じないかもしれないが、
マニラやセブの一等地に住み、
プール付きのコンドミニアムで暮らせて、
レストランでの食事が日常という前提で考えれば
移住する価値は十分にあるというのが住んでみての実感。
海外に移住するのは本当に難しいのか?
日本を出て海外に住むようになってから
「海外に移住したい」という話をよく聞くようになった。
同時に、
「英語が苦手で・・・」
「海外での部屋選びで失敗しないか不安」
「他の国での生活を想像できない」
「下見で何を確認したらいいか分からない」
「移住後の仕事やお金が問題」
等々の様々な不安や悩みも耳にする。
そこで、10年以上海外で暮らし、
4ヵ国に住んできた経験を凝縮した電子書籍、
『「いつか海外に住みたい」を手の届く現実にするための本』
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