二千年初頭にロバート・キヨサキの『金持ち父さん、貧乏父さん』がブームになり、その後もシリーズ化されて常にヒットを飛ばしていた。
ロバート・キヨサキの所有する会社の一つが倒産したことも話題になったが、実際問題として見てみると、複数ある会社のうちの1つが潰れただけなので、実質的にはダメージはないだろうし、計画的に倒産させた可能性もある。
そういった意味で言うと、一部の世間の人達が過剰に反応して、ロバート・キヨサキをTwitterで叩いたり、嘲ったりしていたものの、そもそも自然人と法人の区別がついているのであれば、会社が潰れるということと、労働者が失業するというのは全く別の話。
そういった意味で言うと、会社が潰れたから批判したり嘲笑するのは、全く的外れであることが簡単にわかる。
そしてその後に出てきたのが、本田健。
彼は、好きな事をしてお金持ちになることをテーマにして、これまで数々の書籍を出してきた。
ユダヤ人大富豪の教えや、スイス人銀行家の教えが有名だが、それ以降も書籍をコンスタントに発行しているし、逆にそれ以外のメディアにはほとんど出ないことで有名。
ラジオ等には一部出ているが、テレビには出演していない。
私も初期の頃の本は、新宿でアルバイトをしていた時に、書店で読んだことがある。
本田健の流れになる前に週末起業という潮流もあって、そういった流れをくんで、幸せなお金持ちというイメージ像が世間に広まった。
カウンターとしてメジャーシーンに上り詰めた著者
それに対して反動で現れたのが勝間和代で、カツマーと呼ばれる熱心なファンも生まれた。勝間和代は徹底的な合理主義者で、いかに効率的に仕事を進めるかとか、あるいはキャリアを形成していくかといった面で、ある意味では典型的なキャリアウーマン像を創り上げたことになる。
一方では好きなことをしてお金持ちになろうという夢のような話があり、もう一方の極には勝間和代が提唱する厳しいビジネス界の中で、いかにして生き残るかという戦略が提唱される。
こういった反動によって、振り子のように逆方向に振れていくのは時代の常で、これ自体は全く矛盾しているものではない。
あきらめと受容
その後に現れたのは、『置かれた場所で咲きなさい』という、現状を変えられないことを前提にした人達に向けた本。つまり、本田健の提唱するような好きなことをして、今のステージよりも上に行こうということもできず、かといって、勝間和代のようにバリバリとビジネスの最前線で働いて、キャリアを形成していく意志や能力もない人達に向けて書かれた本がヒットした。
これも当然のことで、世の中の大部分の人は、自分が何かを達成できると本気では思っていない。
それがどれだけ意識の表層に出ているかは個人差があるものの、「どうせ私なんて」と思っている人の数は、非常に多い。
さらに言えば、環境が許さないので、行動ができない人もいる。
例えばシングルマザーで子供の養育を任せられる家族もないため、フルタイムで働きに出ることもできず、かといって起業するのも時間や費用の面から厳しいということであれば、今いる場所でいかにして輝くかは、当然ながら心に響きやすいテーマになる。
こういった人達に向けて出した本が売れているのは、ある種の日本の閉塞感とか、成長よりも今現在の生活に満足を覚えることを優先するとか、そういった風潮が表れている。
しかしながら今現在の、もっとも特徴的なことは、そろそろ過渡期に差し掛かっているということ。
ここからしばらく空白の期間を設けて、大きな流れがくるのではないかと個人的には思っている。
そして、その変化が多くの人に認識された頃には、準備をしていなかった人はもうすでに対応が難しくなると個人的には予想している。