いくら日本が金融の面で鎖国をしているとか、ガラパゴス化が進んでいるといっても、なかなか多くの日本人にはぴんとこないところだと思う。
私自身も、初めて香港に行ったときにはその差を感じることはできなかった。
というのも、ただ観光をしてきただけだったので、金融機関に行くこともなく、どういったサービスがあるかもわからなかった。
日本と香港の差を初めて感じたのは、HSBCの銀行口座を開設しに行ったときのこと。
私はエージェントを使って口座を開設したのだが、指定されたのは土曜日。
営業をしているのかと疑問に思ったが、香港においては土曜日も午前中に関してはどの店舗も営業をしているという話だった。
そこで、HSBCの口座の開設を終えて、その後はさらに中国の深センという街に行ってきた。
中国銀行も土曜日に営業していた
ここでは中国銀行の口座を開設することを目的にしていて、こちらに関しては主要な店舗のみが土曜日も営業をしているということで、すべての店舗が通常通り営業をしているわけではなかった。では一部の店舗しか開いていないから混んでいるのかというとそんなことはなく、むしろ平日よりも土曜日の方が空いているらしい。
サラリーマンのことを考えると、平日の昼間しか銀行が開いていないのは非常に不便で、しかも日本の場合であれば午後3時には閉まってしまうので、会社を抜け出すか、もしくは有給を取って銀行まで行かなくてはいけない。
私がサラリーマンだったときには、そういったわがままが一切通らない状況だったし、有給を使おうなどと考えたことすらなかった。
完全にそういった自由が奪われた会社だったので、平日に銀行に行くことなんて、もはや暴挙として槍玉に挙げられかねないレベルだった。
香港や中国の一部の店舗の場合には土曜日にも営業しているので、たとえ休みが土日しかなくても行くことができる。
かといって、その日が混みあうわけではないというのは意外だった。
日本の銀行の特殊な性質
日本の金融機関の場合、政府が法的に保護していることもあって、鎖国的な体質を持っている。日本国民が広く知るところであれば、かつてメガバンクに公的資金が注入されて、それによって再生を果たしたことで多くの非難を浴びることになった。
彼らメガバンクの役員は高給取りだし、行員も同様に一般の業界に比べると多くの給与をもらっている。
にも関わらず、その他の業界で働く人々の税金を使うことについて是非が問われた。
ただ、こうした保護だけではなくて、金融機関はもっと他にも色々な法律によって守られている。
例えば金融商品取引法という法律はその代表例で、海外のファンドや金融商品の情報を著しく規制している。
それによって何が起こるのかというと、日本人が海外の投資案件の情報を知ることができないので、日本国内の投資案件や銀行預金、国債にお金をつぎ込むことになる。
そうすると、銀行や証券会社が潤うことになって、そこから政府は利益を得ることになる。
具体的に言うと、日本国債を発行するときに銀行や証券会社に引き受けてもらうことができるので、国債を滞りなく発行して資金を得ることができている。
こうしたぬるま湯に浸かっている日本の銀行と、金融立国として世界の中でもトップクラスの香港、この2つは営業時間だけをみても大きな差があることを感じた旅だった。
なお、香港の口座開設事情は常に変動しており、2016年10月からはビデオ撮影が行われるようになったり、2017年にはマイナンバーを要求されるようになった。
アメリカの社会保障番号(SSN)、イギリスの国民保険番号(NINO)、中国の公民身分番号のように、各国ごとに納税者番号が設定されているが、国際的に管理されるシステムが着実に広がっている。