「もしも100万円を得ることができたら何に使いますか?」というアンケートの結果を見たことがある。
日本人の場合であれば、第1位は貯金。
日本の物価や所得水準から見ると、100万円はボーナスとしては大きいものの、人生を変えるほどの金額ではない。
とりあえず貯金をしておこうという気持ちもわかるし、あるいは臨時ボーナスとして遊びに使ってしまおうという考え方をするのも理解できる。
その一方でフィリピン人に同様の質問をしたところ、返ってきたアンケートの回答項目の1位は、「起業する」という話だった。
もちろんいくら物価が安いフィリピンでも、大々的に起業をしようと思ったら100万円では到底足りない。
とは言え、小さな店舗を持つ事くらいはできるらしく、その100万円を元手にして商売を始めたい人が多いことがわかった。
極端な話をすると、フィリピンは路上で勝手に商売をしている人が大勢いる。
例えばマンゴーやパイナップルをカットして売ったり、あるいは昨日見たのはリトル東京の目の前で柿を売っている人。
この柿は、どうやら韓国産の柿らしい。
こうしたスタイルであれば元手はほとんどかからないし、道端で屋台営業をしている飲食店も見かける。
ということで、起業のハードルは非常に低い国だし、起業熱も高い。
まさに、経済が伸びている国の特徴を感じる。
日本もかつて高度経済成長のときには国が一丸となってGDPを押し上げていたものの、当時でも自ら起業する熱は各国に比べれば弱く、あくまでもサラリーマン信仰はその当時から根付いていた。
それに対してフィリピン人の場合は、企業に雇われて働く生き方に疑問を持っている人が多く、できることなら小規模であっても自らビジネスを持ちたいと考えている人が多い。
その生き方には私も賛成だし、自分にも通じるところがある。
ただ、いきなり入ってきたお金を有効に活用できるかといえば疑問だし、フィリピン人にとって100万円はとても大金。
何しろ平均所得が月収3万円とか4万円の国なので、月収の25カ月分、実に2年分の収入を得たことになる。
日本人でいえば、700〜800万円がいきなり入ってきて、それを元手に起業をしようと思うようなもの。
残念な話ではあるが、身の丈に合わないお金は上手に使うことができない人の方が多い。
資金ができたのをきっかけに安易に起業をすれば、数年後には倒産していることが多いし、ビジネスはそれほど簡単なものではない。
ただ、元手さえあれば自分でビジネスを興したいと思っている人が多いのは、これからもフィリピンの経済成長は止まらないことを暗示しているように感じた。