海外の日本食レストランで日本人が働く意味はあるのか


アジア各国で日本食レストランに入ってみると、意外にもレベルが高いことが多い。

たしかに大失敗している店もあるものの、個人経営の店に関して言えば、かなりの割合で日本で食べる下手な和食よりも美味しかったりする。

では作っているのが日本人なのかと見てみると、マレーシア人やフィリピン人といった現地の人が厨房で立ち働いているのが確認できる。

彼らにもしっかり指導をすれば日本の味を出すことはできるし、意外にも大きくクオリティが落ちることはない。

ということは、日本人であるというだけでどれだけの優位性を保てるのかと考えると、実に微々たるものであるということがわかる。

たしかに本格的に日本で料理の経験をしてシェフやコックとして働いたことがあるのであれば、その経験は糧になる。

しかし、一般の日本人が日本食を食べ慣れているから、その舌が武器になると考えて出店するのは危険。

そのレベルであれば、多くのアジアの国に関していえばすでにクリアしてしまっている。

もちろん和食が浸透していない街を狙って店舗展開していくのであれば、日本人であること自体がブランディング上もメリットになるのは事実だが、そういった街は限られているのも無視することはできない。

よくあるパターンが、日本人のある程度年齢を重ねた男性が現地で彼女を作って、ビザが取りたいのでビジネスビザを取るために起業して、他に何もできることが浮かばないので飲食店をやるケース。

実際そうして開業した日本食レストランは多く、そしてライバルも多いからそれぞれがしのぎを削って切磋琢磨をしてレベルが上がってきたという現実もある。

これはジョホールバルのような日本人が1000人程度しか住んでいない街であっても起こっている現象で、私が知っている限り10店舗以上のそれなりに本格的な日本料理屋がすでに存在する。

1000人の在住者に対して10軒の日本食レストランがあるということは、相当な競争が行われていることがうかがえる。

つまり安易に日本人だからといって出店することは危険だし、日本人だからというだけの理由でそこの店で働くことにどれだけ意味があるかは疑問。

もし仮にやるのであれば、現地で現地人のスタッフを雇って彼らに教える、もしくはマネジメントをするポジションを取らない限りレバレッジが効かない。

基本的には人件費が安い国で出店することが多いはずなので、そういった場合には日本人が一生懸命働くよりも、手足となってもらうのはその国の人達で、自分自身が頭脳として働かなければいけない。

これはオーストラリアのように人件費が高い国で働くのであれば別。

ニュージーランドも同様で、それなりに人件費が高いので、現地の人を雇うのと日本人を雇うのはそれほど変わらない。

それであれば日本人スタッフがいることがその店の権威付けになったり、何となく本格的な料理を出しそうな雰囲気を醸し出せるというハッタリのような効果を得ることは可能。

かなり底の浅い効果には思えるが、実際に働いているスタッフがその国の人であるかどうか、つまり日本料理屋であれば日本人であるかどうかというのは、外国人の目からしてみるとブランディングとしてかなり重要な要素にはなる。

とはいえ、キャリアとしてはそれほど貴重なものにはならないので、そこでの職を失ったときに困ることがある可能性は熟知しておく必要がある。

残念ながら、海外で雑用をしていたというだけの経歴では他の海外企業に勤めようと思って求人に応募した場合も、大して役に立たない人材と判断されたり、意味のない経歴と切り捨てられてしまうことが多い。

こうした現実も直視する必要がある。


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