ワーキング・ホリデーの期間に人生は変わるのか

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いきなり残念な話から始めると、ワーキング・ホリデーで人生が劇的に変化することはあまり期待しないでおいたほうがいい。

何か自分の生きる意味を感じられる出会いが待っているとか、そういった期待に胸を膨らませて海外生活をスタートする人は少なからずいると思う。

私も初めて海外に移住したときは、そういった思いがなかったといえば嘘になる。

しかしながら、住む国を変えてみたくらいで劇的に好転するほど、人生はお気楽にできていないのが実際のところ。

自分探しをこじらせて、おかしな方向に行ってしまった人は見たことがある。

日本に居場所がなかった結果として、海外に無理矢理にでも活路を見出さなければならず、現地ではじめた日本食料理屋のバイトを自分の天職と無理に言い聞かせてみて、ワーキング・ホリデーから帰ってきて、それからまた再びオーストラリアに就労ビザを取って移住して、そこで三年ほど働いた後に、やはりそれが自分の道ではなかったということで料理人としての道を断念した人も知っている。

これは挫折するのもある意味では仕方のないことで、彼は料理人やシェフになりたかったのではなくて、「オーストラリアに住みたい」という気持ちが最初にあった。

しかしながら、彼はワーキング・ホリデーから戻ってすぐに向こうに行ったくらいなので、二十代の内なのかもしくは三十歳になったばかりか、という時期に行ったことになる。

まだまだこれから職業人としての人生が長く待っているわけで、自分が何の仕事をして働いていくのかを考えず、安易に日本食レストランであればビザが取れるという発想をしたことが命取り。

日本で暮らしている時にうまく生きていくことができなかったり、息苦しさを感じていたのであれば、海外に憧れを持ってしまうのは仕方がないこと。

場所を変えるのは良いことだと思うし、一箇所にとどまって一生懸命頑張ることに必要以上の美徳も感じない。

ただし、ワーキング・ホリデーという限られた期間で、しかも一国にしか行けないという条件の中で何かを見出そうとするのは、予想以上に難しい。

なんだかんだ言ったところで、所詮は一年間ゆっくりと旅行しながらバイトをしているという程度の話で、そんなことで自分が見つかったり、あるいは天職が見つかるくらいであれば、自分探しの旅をこじらせて世界一周をしてしまったり、何年も海外を放浪する人は出てこない。

しかもそういった経験を積んでもなお、その後大した道は見つからずに就職をするとか、細々と起業をしてあまり儲からずに生きていくとか、そういった道につく人も多いのが実際のところ。

そう考えると、ワーキング・ホリデーはちょっとした体験をしに行く場所であって、人生を劇的に変動させるものではないと捉えておいたほうが無難ではないのかと思う。

通常であればビザが取りづらいニュージーランドやオーストラリアをはじめとした国々、ヨーロッパにしてもドイツやイギリスなどのビザのハードルが高い国に一年間とはいえ住むことができるのは大きなメリット。

二十代の間にそういった経験を、遊びも兼ねてやっていくのは全然構わないと思う。

私が警鐘を鳴らしたいのは、あくまでも過剰な期待を抱くこと、そして安易に自分の人生を好転させられると思い込まないこと。

これだけが言いたいことなので、ワーキング・ホリデーという二十代の特権をフル活用して、合理的に海外を楽しむのは大変素晴らしいこと。

私も三十代になってから海外移住をしたが、二十代の内にワーキング・ホリデーを使ってアイルランドやイギリスに住んでみたかったと、今になって悔やんだりもしている。


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