イギリスには行ったことがあるものの、アイルランドに行ったことがない。
その一方で、アイルランドに憧れに近い感情も持っていて、草原や森の小道が頭にこびりついて離れない。
特に鬱蒼とした木々が両側に茂る小道というのは、どういうわけかアイルランドの象徴のようなイメージとして私の脳裏に焼きついている。
その先をずっと歩いていくと魔女が出そうな小道を、意味もなくただ歩いてみたいという衝動に駆られて、来年はアイルランド行きも検討している。
もちろんダークヘッジを訪れることも含めて。
その一方で感じるのは、アイルランドには大きな観光資源は無いということ。
例えばパリであれば、ルーブル美術館やエッフェル塔のようなわかりやすいモニュメントがある。
ロンドンにしたって、大英博物館やセント・ポール大聖堂のような見所がわかりやすく存在している。
これに対してアイルランドは、どうしてもそういった観光スポットは弱い。
ダブリン城やギネス・ストアハウス、オールドジェイムソン蒸留所、ライターズ博物館あたりでは、どうしても見劣りする。
さらに言うと、私が見たいと思っているのも自然環境の部分であって、具体的にどこに行けばいいのかもよくわからない。
大英博物館であれば、地図を見ながら歩いていけば簡単にたどり着くことができた。
道に迷ったとしても人に聞けば教えてくれるわけだし、少なくとも大幅に何日も迷うことはさすがにありえない。
これに対して、イメージ通りの小道や草原は非常に見つけづらい。
ひょっとしたら季節性の部分もあるので、私が行った季節にそのイメージに合うような場所は存在しない可能性すらある。
下手をすると、アイルランドに行く前にスペインやイタリアでそういった風景にたまたま出会ってしまう可能性もある。
そう考えると、ワーキングホリデイのようにしばらく腰を据えてアイルランドの町を見て回りたいという気持ちも胸の中にくすぶっている。
とはいえ、ワーキングホリデイが許されるのは三十歳までで、私のように三十二歳の場合にはワーキングホリデイビザを使うことは許されない。
ということで、シェンゲン協定の範囲内である三ヶ月以内、正確には九十日以内が滞在期間になってしまうので、そこまで長期滞在ができるわけではない。
アイルランドだけで九十日であれば十分な日数と思われるかもしれないが、実際にはヨーロッパ各国の合計日数が九十日ということなので、もし仮にアイルランドに七十五日いた場合、それ以外の国には十五日しかいられないことになってしまう。
そう考えると決して十分な期間とは言えない。
ワーキングホリデイを通して現地の暮らしを学びたいとか、海外感覚を身に着けたいという欲求は一ミリたりとも起こらなかったし、そもそも二十代の時にはワーキングホリデイに参加しようと思うきっかけすらなかった。
正直なことを言うと、どんな人が何の目的でわざわざ海外に行っているのか理解することができなかった。
今となっては海外で生活するのが普通になって、むしろ日本にいたときの感覚が薄れてきているが、こうなってくると、ワーキングホリデイという二十代にだけ許されたチャンスを活かさなかったのはもったいなかった。
ただし、二十代前半の頃はお金がなくてそれどころではなかったし、後半になってからは独立して自分のビジネスを回していくことのほうがはるかに興味をそそっていた。
そう考えると、あの頃アイルランドに行けなかったとしても、それは仕方のないことなのかもしれない。
その分、これからの人生で何度かに分けて訪れて、自分の理想としている風景を実際にこの目で確かめたい。
ひょっとしたらfacebookやtwitterで現地の人と交流を図ることによって、そのイメージに近いところを紹介してもらうことができるかもしれない。
例えば画像や写真を検索しておいて、イメージに近いところをfacebook等に上げて、こういった場所を知っている人はいませんかという呼びかけをすれば応えてくれる人がいるかもしれないので、そこらへんを活用してみるのも、ネット時代の上手な生き方なのかもしれない。