東南アジアというと全て常夏の国というような印象があったが、考えてみればそれも大雑把な話で、インドネシアのように赤道直下の国もあれば、ベトナムのハノイのように北緯21度に位置する街もあり、全ての所で気候が同じとは考え難い。
以前住んだマレーシアやフィリピンに関しては、雨季と乾季の区別はあっても、ほとんど年中気温は変わらなかったが、ベトナムに関してはだいぶ話が違ってくる。
しかも緯度だけで見ればハワイなどと同じくらいにはあるのだが、ヒマラヤ山脈からのシベリア寒気団が存在する影響で、緯度のわりにかなり寒くなっている。
ちょうどポルトガルやアイルランドが大西洋からの風によって暖かくなっているのと、真逆の現象が起こっていることになる。
それ以前にもホーチミンはタイと同じくらいの気温であったものの、フエやダナンが20℃を下回るくらいの気温の日もあったので、もしかしたらハノイも寒いかもしれないとは思っていたが、何となく大都市は暖かそうな気がする。
むしろ東南アジアの大都市としては、コンクリートやアスファルトによって熱がこもり体感温度が時期によっては40度くらいになるバンコクのようなイメージがあったため、ハノイがまさか15℃前後という気温で推移しているとは思わなかった。
そのため、何となくダナンからは暖かいところに移動するつもりだったのが、ハノイにきてますます気温が下がり、風邪気味の体にはなかなか応えた。
少しでも体を中から温めようと、到着した日にはホットワインを飲みながらブンチャーやチャーカーといったベトナム料理を食べてきたのだが、何しろ足元が冷える。
まさか東南アジアでビーチサンダルだと寒い場所があるとは思わず、良くも悪くもベトナムの気候は意表を突いたものだった。
もっとも、毎日が気温30℃越えというのはかえって体にこたえるし、特に外歩きにはなかなか厳しいものがあるので、うまく季節を利用すればベトナムは滞在先として面白い選択肢になってくる。
居住国とまではいかないが、ロングステイ先としてはなかなか有望なのではないか。
一夜明けて翌日の昼にはフォーボーという牛肉入りのフォーを食べてきたが、かなりあっさりしていて、病み上がりの体で食欲がなくてもするすると入っていった。
他にもベトナムに来てから何度か食べたバインミー等もあり、この国のローカル料理はマレーシアに比べると随分と食べやすい印象。
マレー料理の場合、ミーゴレンやナシレマ、ラクサ等が有名だが、全体的に油っぽくかなり味はしつこい。
これ以外にもカンコンブラチャンとかバク・シオとかアヤム・ポンテとかいろいろなものがあるが、飽きがきてからはかなり厳しくなった。
ベトナム料理もそれだけを食べていれば飽きてしまうとは思うが、比較的さっぱりしているし、ハノイやホーチミンのような大都市はもちろん、フエであっても西洋料理に関しては充実している。
レベルがどうかはわからないが、和食レストランもちらほら見かけるので、それらを織り交ぜていけば三カ月程度の間で飽きてしまうということはなさそう。
そういった意味でも、観光ビザを取り腰を据えてベトナムに滞在してみるのは、今後の予定としてかなり有力になりつつある。
ロングステイ先なんてひとつやふたつ候補があればいいというものではなく、無数に行きたい国、さらにいえばビザの関係でちゃんとそれを実現することができる国を持っていることに越したことはないので、今回のベトナム訪問は大きな意味を持つものになった。