マニラでの不動産投資視察のため、1年住んで得た結論

マカティのビル
マニラで不動産投資に良いコンドミニアムがないか、
視察をするために住み着いてしまった。

通常であれば1日のツアーで物件を見て回るとか、
せいぜい複数の業者の話を聞きながら数日過ごすとか、
そのくらいなのは分かる。

ただしマニラの中でもエリアごとの特徴もあるし、
住んでみないと分からないこともある。

賃貸付けのことを考えるためには、
この街に住んでいる人の動向も知っておくに越したことはない。



ということで、商業エリアにあたる
マカティのコンドミニアム(日本で言うマンション)を
1年間借りることにした。

ここは外国人居住エリアとしても知られる街。

隣町のグローバルシティにはフォートボニファシオという
マニラ最先端のエリアがあるが、
そこまでも近い。

また、オルティガスも日本人向けの不動産投資物件は多いが、
その点はマカティも負けていない。

実際、自宅の周りを歩いているだけで
モデルルームをいくつも見かけた。


フィリピンの不動産投資は利回りが高く、
家賃収入でローンを返しながらキャピタルゲイン(売却益)を狙えると
言われることも多い。

しかし、実際はどうなのか?

まず家賃が入ってくる前提として、
客付け・賃貸付けができなければいけない。

いくら想定利回りだけ高くても、
住む人がいないコンドミニアムはインカムゲインを生まない。

もし家賃が入ってくることを前提にローンを組めば、
返済に困ることになる。



また、そもそもの前提として、
必ずしもローンが組めるのかという問題がある。

日本人投資家がマニラの不動産を購入すると一口で言っても、
コンドミニアムによっても扱いは違う。

また、銀行のレギュレーションも頻繁に変わる。

実際、ある不動産業者がプレビルドの物件を販売していたが、
途中で当初の銀行でのローンが組めなくなり、
慌てて他の銀行に話を持って行ったという話も聞いている。


すでに物件の厳選が必須な時期に

コンドミニアムのプール
一言でマニラの不動産投資と言っても、
メトロマニラ圏は広く、
それぞれの場所で動向も違う。

メトロマニラというのは、
マニラ近辺を含んだ首都圏のこと。


その中にはマラテ・エルミタのような治安の悪い地区もあれば、
日本大使館近辺のように冠水する場所もある。

一方でマカティやグローバルシティ、オルティガスのような
高級住宅街にもコンドミニアムが林立している。


ただ1つ共通して言えるのは、
クアラルンプールやバンコクに比べると、
チャンスは残されているということ。

これは家賃収入、売却益の両面について言える。


フィリピンを含む新興国不動産の急激な高騰は、
元々アメリカやその他の国の量的緩和政策によって
紙幣が大量に刷られて新興国に流れ込んできたことが原因。

いわゆるQE政策によって市場にお金があふれ、
その投資先として有力な市場がアジアの不動産市場だった。

資金を寝かせておかないために、
こうしてチャンスを見つければ急激にお金が流れ込んでくる。

おかげで東南アジア各国に資金が流れ込み、
コンドミニアム等の価格が大幅に値上がりした。


これはタイやマレーシア、フィリピンだけではなく、
ベトナムやカンボジア、インドネシア、ミャンマー、
さらにはスリランカにまで及ぶ。

ただし、フィリピンには特殊な事情があった。

というのも、銀行の資本規制があったため、
外資であっても潤沢な資産を持っているわけではない。

というより、ほとんど外資が資本を持っての参入が
法律上できない状態だった。

そのため、HSBC等も進出しているが、
実態はローカルバンクに近い。


世界的に金余りの状況の下、
多くの国に大量のお金が流れ込んで不動産市場が活況となった。

しかし、フィリピンは法的な規制によって
その流れが弱まることに。

結果、銀行もあまりお金を持っていなかったため、
ローンを簡単に組ませないという方針があった。


たとえばマレーシアの場合、
一時期は85%をローンでまかなうことができた。

自己資金は15%だけ。

この条件なら、家賃収入でローンを返済しやすいと、
多くの投資家が飛びついた。

結果、クアラルンプールやペナン、ジョホールバルの不動産は
コンドミニアム、戸建ての両方で価格が高騰した。

家賃は不動産価格ほど上がらない上、
供給過剰で賃貸付けが難しくなり、
一等地でも苦戦している投資家が続出しているが。


フィリピンはそういった流れから結果的に保護されたため、
不動産価格の異常とも取れる高騰から免れた。

その結果、いまだに東南アジアの中ではチャンスの残る国。

セブと比べても、
経済規模の大きいマニラの方が投資先としては有望だろう。


ただし、マニラの不動産に投資しておけば
簡単に儲かるという時代ではなくなった。

すでに物件選びが重要な時期に入っている。


この国で不動産を買うなら、
土地を外国人が購入できないという規制もあるため、
基本的にコンドミニアムになるだろう。

コンドミニアムというのは、日本で言うマンション。

日本だと一部の高級マンション以外には
コンシェルジュやプールは付いていないが、
マニラではそれらが普通。

24時間体制の警備員に加え、
コンシェルジュが入り口に常駐している。

さらにジムであったり、
コンドミニアムによっては
ビリヤードやダーツも付いていたりする。


マニラのコンドミニアムの価格は上がっているが、
日本のマンションと違って共有エリアが充実しているため、
その点の価値は高い。

単純に部屋の広さだけではなく、
この点も考慮しておく必要がある。



このコンドミニアムに投資する時の追い風としては、
資本規制の撤廃が決まったことがある。

つまり海外からお金が入ってきやすくなるため、
ローンが組みやすくなることが予想されるし、
さらには不動産価格も上がりやすい環境になる。

日本のメガバンクもフィリピンに進出するという報道もあった。


こうして見るとマニラへの投資にはチャンスがありそうだが、
他の国よりも緩やかだったとは言え、
あくまで購入価格は上昇している。

適当な物件を買えば、
自動的に家賃収入と売却益が発生するわけではない。

厳選して選んでいく必要があると感じる。

パークトライアングル、シェリダンタワー、ワンセントラル、
ツーセントラル、ツーロハス・トライアングル、
ブリオタワー、ザ・ライズ等、
有名な物件の中にも失敗の予感がひしひし伝わってくるものも。

訳もわからないまま、
とりあえず買えばいいという時期はとっくに終わってしまった。


プレビルドvs中古コンドミニアム

コンドミニアムの模型
フィリピンに限ったことではないが、
建築前のコンドミニアムをプレビルドと呼ぶ。

中古物件と対をなす概念で、
デベロッパー側としては資金を集めながら
建築を進めていくことができて資金繰りがしやすい。

投資家側は毎月の支払い額が小さくなるため、
まとまった資金がなくても参加できる上、
新築物件を手に入れることができる。

通常、プレビルドだと完成した段階で
一括支払いか銀行ローンを組むかの二択になる。


ここで問題なのは、
ローンの条件としてビザの取得が義務付けられている場合があること。

フィリピンにはSRRVというリタイアメントビザがあり、
通常は銀行に預託金を預けておくのだが、
不動産でも代用できる。

つまり、不動産を買うと、
ビザが付いてくるという図式に。

一見すると、これはおいしい。

ただし、このSRRVを取るには3週間のフィリピン滞在が必要で、
時には4週間ほどかかることも。

事前にこの点の説明が不十分な不動産業者もいるようで、
そんな長期にわたってフィリピン滞在ができない人は
自動的にローンまで組めなくなってしまう。

一括支払いができる資金があればいいが、
そうでないと返済が滞り、
最悪の場合は物件の所有権を得ることができず、
今まで支払ったお金も戻ってこないことに。


下調べが足りなかった上、
業者選びに問題があった結果とも言えるが、
このようなケースもあることは頭に入れておいた方がいいだろう。

また、すでにプレビルドの物件は金額が上がりすぎている部分がある。

これはマカティ・グローバルシティ・オルティガスといった
マニラを代表するエリアだけではなく、
たとえばセブも同様の傾向にある。

そのため、相対的に中古コンドミニアムの方が
長期的に見た時に割安感が出てきている。


また、プレビルドの場合、
管理会社の質がまったく分からないというのも問題。

私が借りたコンドミニアムも管理があまりに悪く、
水道代の支払い等で管理オフィス(アドミン)に行く必要があるのだが、
たびたび問題が起こった。

せっかく客付けできたところで、
あれでは契約更新の妨げになるのは必至。

私自身、マカティは気に入ったが、
あの物件には二度と住みたくない。


プレビルドだと管理会社がまだ入っていないため、
その点のチェックを購入前に行うのが不可能。

中古だと物件の管理状態は調べられるし、
親切な不動産業者なら内情を教えてくれる。

こういった点の違いもあり、
現状のフィリピンへの投資であれば、
中古の方が有力だと個人的には考えている。


不動産業者選びは重要

現地に視察に来る多くの人が、
土地勘もないままに購入を決める。

実際の物件、あるいは建築予定地を見に来るのはいいが、
それは十分に不動産投資の経験、
せめて様々な物件を見た経験に裏打ちされていないと意味がない。

素人がお勧めするコンドミニアムにお金を払いたい人はいないだろうが、
まったく経験がない状態で自分で見ても同じことになる。



また、日本でマンションを購入したことはあっても、
マニラの内情がわからない場合も。

たとえば道を一本隔てただけで、
生活の利便性が大きく変わることもある。

当然、その後の賃貸付けにも影響してくるし、
家賃が途絶える期間の長さや頻度にも関係する。


こういった部分は、
結局のところ少なからず不動産業者に頼らざるをえない。

良い業者に当たれば、
ディープな情報を提供してもらえることも。

たとえば管理の状態の良し悪しとか、
夜中や早朝の騒音の有無、ネット回線のスピード等。

こうしたことを隠す業者もいるし、
そもそも把握していないことも。


フィリピンの場合、
日本のようにデータベースで不動産情報を共有していないため、
1人で経営ということはほぼ無理に近い。

そうなるとマンパワーが要るので、
現地スタッフも含めてそれなりの規模である必要がある。

日系の不動産業者でも、
こうした条件を満たしていないところも散見される。


マカティに住み始めてから、
マニラやセブの不動産業者についてはいろいろ調べてきた。

結果、フィリピンにはあやしい日系の会社が妙に多い。

まともに信用できる会社は、ごく少数だった。

そもそも規模の条件すら満たしていない会社すらあるぐらいで。

別に大企業が信頼できるとは思わないし、
日本の親会社が日本では有名企業であるものの、
フィリピンの支店がまったくダメな会社もあった。

ただ、マニラで不動産を扱うなら、
情報を取ってくる意味でもマンパワー不足は致命的。

この点は日本の不動産業者とは事情が異なる点。


また、購入後の管理や客付けを、
購入した際に仲介してもらった業者に頼むことも多いが、
入居者がいなければ家賃は発生しない。

そして、この客付けは業者の力で大きく影響が出る。

いくら良い物件を購入しても、
賃貸付ができなければ家賃は入ってこない。

そして、そんな業者は実際に存在する。

結果として、途中で客付けだけを別の会社に依頼する人も。


そんな不毛な迷走を避けるためにも、
最初から力のある業者を選んでおいた方がいいだろう。


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