特にやることもなく、全く希望もしていなかったのに一週間以上の滞在となったブカレストは、あまり面白味のある町ではなかった。
治安がヨーロッパの中でも特筆すべき悪さであるという噂も聞いていたし、そういった意味で、気が休まらない部分もあった。
何しろルーマニアに来る前に、ブルガリでパソコンを盗まれたばかりだし、これ以上余計な面倒に巻き込まれたくない。
そしてそこまで観光名所があるわけでもなく、食事も不味いので、さっさと切り上げたいのが本音だった。
しかしながら、そんなブカレストで唯一救いとなったのは、Epoque Hotelのスタッフが親切だったのと、部屋が広く清潔であったこと。
加えて、朝食もとても充実していて、ハムやチーズが数種類あることはもちろんとして、温かいソーセージやスクランブルエッグ、ゆで卵、オムレツ、マッシュルームを炒めたもの、オリーブやトマト、サクサクのクロワッサンやチョコデニッシュ、いくつかのフルーツとその他のちょっとした野菜と、十分なバリエーションが揃っているので、朝からしっかり栄養をとることもできるし、味も美味しかった。
しかもこのEpoque Hotelがなぜか満室にならず、前日になってから1泊ずつ連泊をしていっても、予約が可能というのも非常に助かった。
こんなわけで、ブカレストにおいてはホテルが当たりだったのが、唯一の救いだった。
ルーマニア全般においてホテルが素晴らしい傾向にあるかといえば、そんなことは全くない。
ブラショフの駄目なホテルスタッフ
ブカレストの次に訪れたブラショフは、ブカレストのホテルよりも割高だったわりに部屋は狭く、ホテルのスタッフは現金払いをゴリ押ししてくるし、キャッシュがないのでクレジットカードで支払うというと、最後まで執拗に渋っていた。ゴネ得を狙っているとしか思えない態度だったが、いざクレジットカードでの決済をしても、なぜか決済が終わるまでに3分ほど時間がかかる異常なダメダメっぷりで、もし仮にブラショフにもう一度来ることがあっても、確実にこのホテルには泊まらない。
どういうわけか、首都のブカレストのホテルが価格的に最も安く、シギショアラやシビウにおいても、金額は2割増しから3割増しぐらいになった。
シギショアラのホテルはテンションが上った
ただし、シギショアラのホテルは非常に面白く、以前は貴族の屋敷だった建物を改築したのではないかという造り。廊下やロビーも豪華だし、私が泊まったのはちょうど屋根裏にあたる部屋だったので、城塞都市や川や湖のような水辺と並んで、興奮を覚える場所だった。
どういうわけか、屋根裏部屋はテンションが上がって、そこにいるだけで楽しくなる。
しかもこのホテルは朝食もなかなか凝っていて、パプリカのサワークリーム和えとか、トマトの肉詰めとか、そういったものがブレックファーストで出てくる。
シビウについては平凡な内容ではあったが、朝8時前にチェックアウトをして出発すると告げると、朝食に間に合わないので、「サンドイッチを作ろうか?」と申し出てくれて、その心遣いが有り難かった。
結局、ブラショフが一番の外れで、ブカレストが個人的に泊まった中では、ルーマニアの中で最も良いホテルだった。