ヨーロッパにあるシェンゲン協定は、ある種の人たちにとっては、諸手を挙げて歓迎すべき素晴らしい制度である反面、また別のグループからは、憎むべき存在として槍玉に挙げられている。
なぜこのような相反する評価を受けることになるのかというと、シェンゲン協定は実施国の国境におけるパスポートチェックを失くすので、原則として入出国が簡単になる。
従って居住者はもちろん、多くの旅人からも歓迎を受けている。
陸路にしろ空路にしろ、あるいは海路にしろ、パスポートチェックは基本的に混み合うし、入出国の管理局の職員は態度が悪いことも往々にしてあるので、旅の興をそがれることも多い。
係員の態度が嫌で、イライラするという声を聞くことも少なくない。
そういった余計な手間やストレスを省くことができる意味においては、シェンゲン協定は確かにプラスの役割を果たしている。
シェンゲン協定の負の側面
ヨーロッパのほとんどの国の合計滞在日数が、半年で90日以内という厳しい決まりがあるため、長期で旅行をしたい人にとっては、障害以外の何ものでもない。本来、日本人であれば各国との二国間条約によって、90日程度の滞在をそれぞれの国で許されているのが通常なので、そう考えると、シェンゲン協定が邪魔になって、90日を超えるヨーロッパ旅行をしたくても、早めに切り上げなければいけない。
その解決方法の一つとして、一旦シェンゲン協定の実施国から脱出して、そしてそこで3ヶ月以上過ごして、再びビザの要件が整ったところで、ヨーロッパに行くことができる。
そういったビザランともいえる行動の、対象となる国の1つとしてトルコが挙げられる。
トルコはシェンゲン協定に加盟していないので、例えば私が今現在滞在しているハンガリーのブダペストから、あるいはポーランドやチェコから、一旦トルコに飛ぶことによって、そこでヨーロッパのシェンゲン圏から出たという記録がパスポートに残る。
この段階で、90日弱を過ごしていたとしても、3ヶ月ののちに、シェンゲン圏に戻ることは可能となる。
つまり私が今注目している、東欧から一旦トルコに出て、3ヶ月ちょっとの間を過ごし、そこからまた東欧なり、またはフランスとかポルトガルとかどこでもいいが、シェンゲン圏の国に戻ることは可能になる。
しかしながら、実際にそれを私がやろうとしているかというと、そんなことはない。
というのも、私が長期滞在をすることを想定すると、トルコ人の気質が合わないであろうということが予想できるから。
インドほどではないにしても、トルコ人はパーソナルスペースが狭いとか、呼び込みが激しいとか、詐欺を働いてくるとか、そういった話をたくさん受けている。
確かに観光地としては、カッパドキアを始めとして、様々な魅力的な要素が詰まっている国ではあるが、3ヶ月の長期滞在をする国としては相応しいとは思えない。
むしろ精神的には疲弊するだけだと思うので、トルコに長居しようとは思わず、結局そうなるとヨーロッパから大きく離れることになる。
もう一つの解決方法としてはイギリスに行く手もあるが、さすがにイギリスとなると、ビザランには厳しいので、なかなか確実な場所とは言えない。
他にチュニジア等の北アフリカに行く方法もあるが、これらの国にしても3ヶ月の滞在はかなり長い。
結局今回にしても、ワルシャワからバンコクに飛び、それ以降は特に何の予定も立っていない。
最近はタイの入出国事情もかなり厳しくなってきて、出国用の航空券を見せるように要請されたりするので、バンコクの次の行き先をそろそろ決めておく必要がある。
先へ先へと予定を規定するのは好きではないが、あちらこちらを飛び回る身としては、入出国でつまづきたくないので、こういった対策も必要になってくる。