愛想がいい事で知られるフィリピン人だが、サービスには日本人の感覚からするとまだまだ至らない点がある。
そこそこ高級なレストランであっても、テーブルが綺麗ではない状態で案内される事もあるし、会計を頼んでもそれを忘れて5分、10分経っても会計の手続きが進まない事もある。
やはり日本のサービスは世界の中でもトップクラスの水準にある事を感じる一方で、では、フィリピンがまだまだレベルが低いのかというと、それはまた違うと思う。
というのも、例え先進国であっても、ヨーロッパにおけるサービス水準、あるいはアメリカにおける水準は決して高くはない。
特に一般の店であれば、全然やる気のない店員が出てきて、愛想も何も振りまくことがなかったりする事は日常茶飯事。
ギリシャのスーパーではレジの店員が椅子に座って仕事をしていたり、日本では驚くような事もある。
もちろん高級店においては、先進国のサービスはそれなりにレベルが高いが、これはフィリピンにおいても同じ事。
そういった事を考えると、フィリピンにおけるサービスは飲食店等に限っていえば、世界の中でも先進国とそれほどレベルが変わらないのではないかと思う。
もはやイギリスやフランスといった、ヨーロッパの中で屈指の経済大国とも大きくは変わらないのではないかというのが、実際に現地に住んで感じているところ。
香港や台湾においても、インドネシア人よりフィリピン人のメイドが好まれるのにはホスピタリティや彼女たちの明るさも関係しているのだろう。
とはいえ、飲食店のような単純なサービス業のところではなく、航空や金融のような場面ではまだまだ未熟なところを感じる。
例えば、金融において言えば、ネットバンキングでお金を送金する事もできない。
他行に送金する事もできなければ、同じ銀行同士で振込をする事もできないという驚くべき状況が未だに続いている。
航空においてもなかなか融通が効くサービスは受けられないので、ホスピタリティの部分ではそれなりに愛想があるものの、それ以外のもっと深い部分においてフィリピン人に多くの要求出来ないのが今の現状だろう。
そういった部分でいうと、本当に質の高いサービスを提供できるのは、やはり先進国に軍配があがる。
というのも、日常的にそれなりのサービスを受けて育っていれば、それが標準として認識する事ができる。
という事は、高い志を持つ人がさらにそこからプラスアルファのサービスを考えるわけなので、必然的により洗練された立ち居振る舞いが行われ、顧客としても満足度が高まる。
これに対して、フィリピンのように子供の頃から受けているサービスの質が低いと、いざ自分が高いレベルで行動しようと思った時にも、どうしても心理的な基準値が低くなってしまう。
さらに言えば、知識として蓄積されているテストケースも決して満足できるような質のものではないため、質が下がってしまうのは仕方がない部分もある。
彼らが手抜きをしているということではなくて、クオリティの低いものしか見ていなければ、いきなり質の高いものを作る事は出来ない。
これはサービスの話ばかりではなくて、例えば、映画や小説についても同じ事。
優れた作品をいくつも見ている人は、それだけ自分の中での基準が上がっている。
さまざまな表現方法を学ぶ事もできれば、さらにそれをベースにして次の表現方法を考える事もできる。
しかし、何もない真っ新な状態や、子供の落書きのようなものしか見ていなければ、いくら努力をしたところで作り出せる作品の質も限られてくる。
そう考えると、フィリピンのサービスの質が本当の意味で一流といえるようになるには、まだ少し時間がかかるかも知れない。
とはいえ、先進国の80%〜90%程度のクオリティにはすでに達しているのではないかというのが、マニラに住んでいて感じるところ。
日本と比べるともう少し差が大きいものの、諸外国から比べれば、それなりに胸を張れるようなレベルに達していると思う。
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