
東京でJR等の電車にのるのであればSuicaを持っているのがいつのまにか当たり前のようになっているように、香港にも同様の制度としてオクトパスカードがある。
こちらはMTR、つまり地下鉄に乗るためのカードで、ちょうどsuicaやicocaと同じように前払いでチャージして、自動改札で使った分だけ課金されるシステムになっている。
これを持っていると空港からエアポートエクスプレスを使って移動した後のMTRが無料になるとか、そういった割引もあるし、いちいち切符を買わなくて済むので便利なのは間違いない。
私も以前HSBCの口座開設をしにきたときにオクトパスカードを買った記憶があるのだが、それをいちいち旅行のたびに持ってきているかというと、忘れることのほうがデフォルトになっている。
以前のように、すべての荷物を持ってホテル暮らしをしているときであっても、オクトパスカードの存在自体を香港に来るまで忘れていて、荷物の中に置き去りにしたまま、意識にのぼらず捨て置いてしまうため、結局使わないケースが多い。
今回も香港で欣圖軒に行こうと思って、Hotel LKF by Rhombusから中環駅に向かう途中で、普段使わないクレジットカードと一緒にオクトパスカードをスーツケースに放置してきたことを思い出した。
各国に広がる交通パス
オクトパスカードやsuicaのようなシステムは他の国にもいくつか見受けられ、例えばバンコクで言えばラビットカード、ロンドンならオイスターカードがある。しかしこういったものを使うのは、便利であるように見える反面で、損益分岐点が見えづらいし、地元で生活するのならともかく、旅行者だとどれくらいの頻度で交通機関を使うのかもわからず、さらに有効期限があったり、そのカードを保持している事自体が荷物になって邪魔だったりするので、極力余計なものは買わないようにしている。
これは、地下鉄網が整っているヨーロッパに行った時も同じことで、結局は片道の切符を買ったほうが安かったことは、体験上、かなり多い。
もちろんガンガン電車を乗りこなす日であれば、一日券を買ったり、あるいはワンデーパスを買ったほうがいい場合もあるが、私の場合一日にまとめて観光をガッツリすることも少ないし、バタバタ動きまわるのも好みではないため、基本的には単発で切符を買うほうが自由度が高まって、生活の質が上がる。
そういえば、この生活の質というのが今ではいろいろなところで言われている。
QOLすなわち、Quality of Lifeの略であるが、もともとは末期がんとか、そういった余命が限定されている人の寿命をただ単に長くすればいいというものではなくて、いかにして満足できる人生の締めくくりを送れるか、あるいは苦痛を緩和したり、心残りのないように早いうちに旅行に出たり、あるいは病院ではなく患者の希望する自宅で最期を看取ってもらえるようにしたりとか、そういった文脈で使われる言葉だったと認識している。
しかし、今ではこのQOLの概念が、人生を考える上で様々な場面で使われる言葉になった。
お金の絶対額を追求するような経済至上主義から、人生の目的とか、人としてのあり方といったものを求める時代に移ってきたことの象徴的な出来事の一つだと思う。
話を戻して、地下鉄のパスに関して言うと、上記のように原則として購入しないという基本方針を持っているのだが、そういったポリシーを曲げてでも買わないといけないと感じたのはロンドンで、オイスターカードを買わないと露骨に高額になるので、交通費を下げるためには数日の滞在であっても買わざるを得なかった。
ちなみに、ロンドンに行った時には、特に次の場所への移動の日時は決めておらず、ただアイルランドに船で行くことだけを決めていたので、当日にチケットを買うだけでよかった。
そして二度目のロンドンは意外に冴えないというか、心が踊らない印象だったので、結局わずか2泊で去ることになり、早々に払い戻しの窓口へ足を運んでオイスターカードを現金化することになった。
こういった手間自体が無駄だと感じざるを得ないし、せめて自販機のような機械で払い戻しを受けられるようなシステムにするとか、長距離鉄道の前の短い時間でも安心して使えるようなシステムにしてもらえばありがたい。