ザッハトルテやオーケストラなどで知られるオーストリアだが、ペレットボイラーの分野でも世界最高峰の技術を持っている。
エネルギー問題は世界的に取り組まれている分野だが、その答えの一つとしてオーストリアが提示しているのはペレットボイラー。
こちらはざっくりというと、木の廃材や木の屑を加工して、それを燃料にするもの。
オーストリアは他のヨーロッパ諸国の例にもれず、中東から石油を輸入し、天然ガスはロシアから供給されている。
まさに外部にエネルギーを依存している状態で、元栓を止められたら問題が起こることは、歴史的にも認識されてきた。
そしてロシアがしばしば強硬策を取ることを考えると、エネルギー問題について、地政学的なリスクをはらんでいる国であると言わざるを得ない。
そう考えてみると、ペレットボイラーによって、暖房の一部をまかなうのは、自然な発想だったのかもしれない。
こうしてガスや原油ではなく、木材を使ったペレットボイラーが開発され、さらに手を加えられて、世界中にペレットの製造装置をオーストリアの会社が売るようになった。
これから伸びる余地が十分にある
これによって生産されている量は、年間20万トンとも、30万トンとも言われている。10年前の段階では、石油ボイラーの国内販売数が3万5千台だったというオーストリアだが、ペレットボイラーは現在、年間1万台近くに伸びてきているという。
さらに言えば、西ヨーロッパ限定でも、暖房器具そのものは400万台あるのに対して、ペレットボイラーを含めたバイオマスボイラーは、未だ10万台程度。
まだまだ伸びる余地のある市場であると言える。
ヨーロッパと言えば、中東やロシアに反感を持っている国も多いし、自然への愛着も強い人が多いという特徴を持っている。
そういった中で、ペレットボイラーが発達してきたのは、ある種自然なことなのではないだろうか。
新しく創出される雇用
そして、ペレットボイラーを売りにしてきたことによって、関連する産業に雇用が生まれる副次的な効果もある。例えば、ペレットを製造する機械にしても、あるいはボイラーのバーナーにしても、洗練されたものになってくることによって、その用途に特化した技術が必要になり、そこに研究や製造の人手が必要となる。
他にも、アフターケアとか、カスタマーサポートも必要になるため、どんどんその分野の労働の裾野は広がっていく。
美しい言い方をすれば雇用の創出だし、悪い見方をすれば効率の悪いビジネスということになるが、少なくともヨーロッパ全体で失業率が上がっている現在としては、これはプラスにとらえるべきではないか。
もっともオーストリアはヨーロッパの中でも失業率が低く、4%前後で推移しているということで、この辺はギリシャやスペインとは全く違うところ。
かつてウィーンには行ったことがあるし、シェーブルン宮殿等の観光地は一通り回ってきたが、こういったエネルギー問題という観点で再び視察に行くにも面白い場所かもしれない。
去年はすぐ隣りのスロバキアのブラティスラバまで行って、日帰りでもウィーンまで行って来れる距離まで近づいたが、そのまま特に寄ることはなく、立ち去ってしまった。
しかしこうして芸術や文化とはまた違うところでオーストリアの価値を知ることができたし、また違った観点から現地を見てみたくなった。