ベトナム中部の街フエからはじまった体調不良は、ハノイに来ても完治することがなかった。
フエでは一日中寝込んでいた事もあったし食事どころではなくなった日もあったので、それに比べると随分と和らいだ感はあるものの、なかなかすっきりと治らない。
そしてフエにいる間はいつものセオリー通り頭痛が中心だったのだが、頭の痛みが徐々に下ってくるように今度は喉から肺にかけてダメージを受け、咳が止まらなくなった。
考えてみるとこの数年偏頭痛を抱えてはいたし、たびたび風邪をひくものの、せき込むことは少なかった。
喉の痛みを感じることはあっても一日中咳をしているようなことはないし、今回のようにシャワーを浴びた後やベッドに入ったときなど、温度差があると激しく咳が止まらなくなり喉が苦しくなって、もどすのではないかと不安を感じるほどに弱ったことは記憶にない。
とにかく喉がイガイガしてくるし、水を飲んでも治まらない。
極めつけは腹筋と背筋が筋肉痛になってしまった。
ハノイに来てからはそれがさらに悪化し、右の脇腹が痛くなってきたのだが、もはや筋肉痛という感じではなく、あばらが折れているのではと疑うほど。
もしくは肋骨の下にある肝臓に何か異常でもあるのではないかと思ったが、そもそも肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど忍耐強い内臓で、もしこれだけはっきりと痛みを感じているくらいであれば助からない可能性が圧倒的に高いので、目をつぶるしかない。
ちなみに咳をして、ろっ骨が折れるということは実際にあるようだし、虚弱体質を自任する私としては絶対にありえないとはいえないと昔から思っていた。
まして今回の異様なせき込み方から考えると、どこかのタイミングであばらにひびでも入った可能性が頭をよぎることはたびたびあり、まさかとは思いながらも若干嫌な予感もあったが、ここ数日でようやく回復した。
ただしハノイを出てすぐに治ったわけではなく、さらにいえばタイのチェンライに移動してからも相変わらず痛みがあってマッサージを受けることはできなかった。
ちなみにチェンライは初めていった街で、おそらくもう訪れることがないところだと思うので記念にマッサージを受けたかったのだが、さすがにわき腹が痛い状態でマッサージを受けるのは苦痛でしかない。
下手をすると咳込み始めて収拾がつかなくなる恐れもあり、さすがに施術中にそうなっては相手にとっても迷惑なのでやめておくことにした。
なおチェンライの主要エリアにあるマッサージ店を見ると、一時間200バーツでタイマッサージを受けられる店が多く、バンコクと比べても三分の二程度のプライスとなっていた。
この価格帯はチェンマイと同じくらいの水準。
そしてチェンライからチェンマイに移動をしてもなかなか痛みがはっきり抜けず、ここ数日でタイマッサージやオイルマッサージを受けてきて、その時に痛みを感じることはなかったものの、相変わらず右わき腹の奥のほうに重苦しさというか違和感が残っている。
こうなってくるとそれこそ筋肉痛ではなくて、肝臓の問題なのではないかと疑わしくなってくるが、ハノイで悪化したこの症状がタイに来て一週間ほど経ってもなお治らないという意外な展開を迎えている。
ひとまずここ数日はほぼ体調も良くなったのでお酒も飲むようになり、昨日はメキシコ料理のサルサキッチンでチェンマイサングリアを飲みながら牛肉のナチョスを食べて、デザートにフローズンマルガリータパイを食べてきた。
フエやハノイの一部の日程のように、食事どころではないといった状態から脱したことは一安心。
それにしてもこのひ弱な体はどうにかならないものか、と我ながらつくづく呆れる。