環境の違いが新世界と旧世界を分けた


アメリカ大陸はかつて、新大陸と呼ばれていた。

これは別にアメリカ大陸がどこかから湧いて出たわけではなく、あくまでもヨーロッパ人から見て新しく発見されたというだけの話で、この発見という表現もあくまでもヨーロッパ側、つまり旧世界側からの物の見方ということになる。

ではなぜ、アメリカ大陸が征服されてヨーロッパからの移民が定住したかと言うと、そこに住んでいた人間の遺伝子の優劣や才能、それまでの歴史における努力の集積といった一般的に思われているような要因が理由ではなかった。

ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」によると、旧大陸が新大陸を征服できた裏には、家畜化できる動物や栽培できる農作物の品種の質および種類の豊富さが関係しているとされている。

ユーラシア大陸では太古より様々な動物が飼われていて、なおかつ、大麦や小麦、米を初めとした重要な穀物が古くから栽培されていた。

これに対してアメリカ大陸は農作物の種類が少なく、ヨーロッパ人が移民してくるようになってから農業が盛んになったエリアが多い。

例を挙げると、チリの中でも地中海性気候の地域、あるいはアルゼンチンの大草原、現在ではカナダの穀倉地帯となっているエリアも、かつては農作物があまり取れない地域として扱われていた。

これはただ単に技術のレベルの差というよりも、単純に農作物の品種による向き不向きの問題で、加えて品種によって取れる量や、そこに含まれる栄養価も全然違ってくる。

特にタンパク質が多く含まれた穀物がアメリカ大陸には少なかったことが知られていて、そのために定住できずに移動を繰り返さなくてはいけなかったり、人口が密集したエリアが成立せず、それによって文明が発展するのが遅れたことが指摘されている。



アメリカ大陸が抱えていた問題

十分な食物生産ができないと、まず人口が増えていかないので、自ずと発明家や政治家、初期、科学者等の革新的な役割を担う人が生まれる可能性が下がる。

さらに言うと、食料の余剰生産ができない状況においては、鍛冶職人であるとか、あるいは文字を発明する人、その文字を使う書記、教育者や医者といった様々な職業の分化が進んでいかない。

実際、今現在でも、サモアの一部の地域においては、どれだけ狩りの名人になっても、あるいは伝統工芸の素晴らしい使い手になったとしても農作業を行っている。

趣味程度にしか自分の特技を発揮できず暮らしている人々は、現在でも存在する。

アメリカ大陸も長くそういう傾向にあって、それに対してユーラシア大陸、特にヨーロッパや中国のあたりは早くから分業が進んでいたので、その結果として様々な文化や文明が発展していく下地が出来ていたことになる。

このように元々の環境によって、その後の発展の仕方は大きく違っていくわけで、いかに人間が環境によって影響を受けるか、数千年に渡って社会実験をしていたのと結果的に同じことになっている。


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