マレーシアに住んでいた頃、周囲のマレーシア人が十一時や十二時を過ぎてもクラブ等で大声で歌っていたり飲んでいるのが聞こえていた。
これだけ夜中まで騒いでいるのだからやはり朝も遅いのかというと、彼らは7時くらいには通勤を始めるので、日本人と比べても決して仕事を始める時間が遅いというわけではない。
どうやらただ単に体力があるというだけで、夜中まで騒いでいるが、しっかりと朝は仕事を始める。
もっとも仕事の質は日本人に比べれば低いのが実際のところだし、特に飲食店のウエイターのような単純労働者はやることが非常にいい加減。
ある意味で言えば、職業にかける情熱がない分だけ、夜中まで遊んで睡眠不足の中途半端なコンディションで仕事をしているという考え方もできる。
その一方で、彼らが新興国の人間であるという観点から見ると、また違った側面が見えてくる。
日本人もバブルの頃には夜中までディスコ等で騒いで、それでもバリバリ仕事をしていたように、今経済が伸びているマレーシアにおいては、こういったどんちゃん騒ぎを毎晩行ないながらでも仕事をしていけるようなハイテンションな部分があるのだろう。
実際日本のバブルを経験した世代に言わせれば、今の若者はお酒も飲まないし、早々に家に帰ってネットをしたりすぐに寝てしまったり、活気がないという話を聞くこともある。
それに比べてマレーシアは二十代の若者から五十代のおじさんまで、年齢を問わず夜中まで騒ぐのが好きだし、それで体力がしっかりともっている。
中国も同様の傾向にあると、上海駐在員の知人から聞いたことがある。
こうしてみると、経済が与える人間の精神面への影響は、思っている以上に大きいのかもしれない。
そして、気の持ちようによってそれだけ体力が下がったり上がったりするのも事実なのだと思う。
残念ながら私は体力もないし気力もないので、基本的には夜は早々に眠る。
できればもう夜九時くらいには家に帰ってきて、それからシャワーを浴びて、毎日ゆっくりと落ち着いた気分で眠れることを最優先している。
お気に入りのThe ReplacementやGeorge & Dragon Cafeで食事をした時も、できるだけ帰りが遅くならないように心がけていた。
個人レベルで経済状態が良くなったり悪くなったりした場合も、バブルの時のように違いがあるのかということだが、私自身の体験としては、収入が伸びたときも逆に下がったときも睡眠に対するスタンスは全く変わっていない。
それは私がただ単に体力がないので、夜中まで起きていると眠くなって辛いとか、翌日に疲れが残るので嫌だとか、そういった気持ちもひとつにはあるのだと思う。
知人の例を見ていると、収入が上がってそのお金を使うことに夢中になって夜中まで遊んでいた人もいるが、その結果として仕事がおろそかになって収入が落ちていき、また元の生活に戻っていった例もある。
残念ながら十分なテストケースがあるとは言えないので、個人の収入と夜中まで騒いでいられる気力があるかということの相関関係はなんとも言えない。
とはいえ、国家レベルでそういった力が働くのはどうやら事実らしい。
マレーシア人は、きっと今夜も夜中まで陽気にはしゃいで、そして明日の朝には仕事に行くのだろう。
ちなみにマレーシアの場合は宗教上の理由でお酒が飲めない人もいるので、一部のクラブやバーに関して言えばお酒を出していない店もある。
もちろんアルコールが飲める店もあって、こういった店であれば中華系やインド系の住人が多く利用している。