10年ほど前にヨーロッパに行ったときには、ユーロとポンドのトラベラーズチェック(TC)を持って行った。
現金ではなくトラベラーズチェックにしておけば、万が一盗難にあった場合にも保障されるし、両替を現金でするよりもレートがいいということだったが、アメリカン・エキスプレスが2014年3月31日に販売を終了した。
たしかに10年前と違い、現在は新興国も含めて各国にATMがあり、VISA+でお金を引き出すことができるので、私自身もトラベラーズチェックを利用したのは10年前が最初で最後。
あの時にはヨーロッパ各国を巡っていたので、ひとまずその時に持っていたお金をユーロまたはポンドに変えてトラベラーズチェックで持ち込んだのだが、今ではそういったことをいちいちする必要もなくなった。
現地のATMにHSBC香港のデビットカードや楽天デビットカード等を差し込めば、VISA+でその国の通貨に両替された状態で出てくる。
こうなってくると、わざわざトラベラーズチェックを用意して両替できる窓口を探すのは手間以外の何物でもないし、国際キャッシュカードに比べて特にレートがいいわけでもなかった。
昔はトラベラーズチェックのCMが流れていて、船の上で風に飛ばされてしまっても再発行してもらえるので安心というドラマ仕立ての宣伝もされていたが、今となってはもう過去の話となった。
トラベラーズチェックの次は海外送金?
決済手段や両替の手段は大きな市場で、今現在であれば国際キャッシュカードや海外送金以外に、ビットコインなどの仮想通貨も注目されている。いかにして国境を越えるか、または貨幣の違いをうまく乗り越えていくかということは、ビジネスにおいても旅行においても重要なことで、近年においてはその重要度をますます増している。
そんな背景を考えれば、不便さで胸がいっぱいになるような現在の海外送金のシステムは、トラベラーズチェックのように過去の遺物になってしまうのではないかという思いもある。
一方で三菱東京UFJ銀行は仮想通貨について独自での取り組みをアピールしているが、本来的に仮想通貨によって脅かされる銀行の側がそれに取り組むのも、どこまで本腰を入れられるのか疑問が残る。
なんにしても、10年前には当たり前に使われていたトラベラーズチェックがいつの間にかすっかりと廃れて、ひっそりとなくなっていたように、為替や送金についての仕組みというのは今後もどんどん変わっていくだろう。
外貨預金がFXの普及によって人気を失っていったのと同じく、便利な決済手段や送金手段ができれば、既存のものはどんどん枠組みを変えていくか、もしくは淘汰されることを余儀なくされる。
そして日本を含め現在の銀行間での送金の不便さを考えると、この点はドラスティックに激変する余地が充分にあると思っている。
なにしろいちいち窓口まで行かなければいけないとか、月毎の海外送金の上限額が送金サービスによってはかなり低めに設定されているといった規制が今のところある。
たとえば楽天銀行であれば、月に200万円までしか送金できないし、一年間でわずか500万円しか海外に送れないという不思議な状態。
こういったことを考えると、みずほや三井住友銀行もうかうかしていられない未来が待っているのかもしれない。
トラベラーズチェックの廃止はある意味でいえば、一歩先に生贄になったものだと判断される時が来るのだろうか。