擬人化に見るみなしの効用


ルンバというのは不思議なもので、ただの全自動掃除機という家電に過ぎないのに、妙に愛着を持つ持ち主が多いらしい。

普通の場合であれば、家電が故障した場合、捨てるか、修理に出すかの二択になり、ほとんどの場合は買い替えを考える。

しかしながら、ルンバは愛着を持たれているために、商品の交換でも、あるいは買い替えでもなく、直してほしい、元気になってほしいという要望が異常に多いらしい。

持ち主はペットのように感じているところがあるのだろう。

確かに機械だからといってバカにできないところがあり、ソニーが作った犬型のロボット、AIBOを飼うだけであっても、犬を飼っている時の疑似体験ができて幸福度があがるという調査結果もあるほど。

子供だましの話ではなくて、大人にまでそういった効用があるぐらいなので、動物と機械の間に絶対的な隔たりがあると思うのは間違いなのかもしれない。


擬人化大国

日本は擬人化大国と言われることもあるが、艦これをはじめとして、様々なものを擬人化して、人間とみなす作品が発表されている。

本来であれば、戦艦に感情移入できるのはごく一部の関係者や限られた人だけだと思うが、それを人間と見立てることによって、より多くの人を感情の渦に引きずり込むことに成功している。

これは必ずしも擬人化しなくてはいけないということではなくて、例えば動物の場合であっても、リスと犬の場合を例にとると、よくわかる。

リスも犬も愛好家は多いし、どちらも可愛いと思う人は相当数いるだろう。

しかしながら、モントリオールやオタワの街なかに可愛いリスが溶け込んでいて、瀟洒な戸建てが立ち並ぶエリアで木に登ったり、車に轢かれないように気をつけながら道を渡ったりしている姿を見ると心がほっこりするが、それぞれのリスの見分けはほぼつかない。

そうなると、名前を付けて呼ぶ人はなかなかいないだろうし、一匹のリスが亡くなってもあまり悲しむことはないと思う。

しかしながら、自宅で飼っている犬が死んだとすれば、相当に精神的に応えるはず。

ペットロス症候群という言葉もある程、一部の人にとって、ペットの死は重大な精神疾患を引き起こすことすらあるほどに悲しみの感情をもたらすものになる。

ここで重要なのは、リスが犬よりも可愛さにおいて劣っているということではなく、特定の一匹について注目できているかどうか、という点で執着心が大きく違ってくるということ。

オタワのある通りに住んで活動しているリス達、という一つのグループでざっくりと観察するのか、それともある特定の犬、例えばジョンとかポチとか名前は何でもいいが、その犬固有の事情で判断するのかによって、執着心の強さは天と地ほどの差となる。

擬人化とは多くの場合、特定の物や出来事を人間とみなす方法なので、それによって強い愛着を得られるのは理に適った話。


みなしの効果は昔から使われてきた

みなしの効用は擬人化だけに限った話ではなくて、実は古代から使われている物。

例えば東洋医学の世界では、川を龍と見立てたり、山脈を蛇とみなしたりする。

自然界と人間の体も相似形であるとみなし関連性を指摘するし、ビジネスを人体とみなして東洋医学の考え方を当てはめてみることによって分析する手法もある。

あるいは、ビジネスの中のコミュニティとかチームを一人の人間の人体と見立てる方法もあり、こういったアプローチをとることによって、東洋医学や西洋医学をビジネスに応用して分析し、今後の対策を練るという方法は意外に新しい着眼点をもたらしてくれて、突破口を切り開いてくれたりする。

全く関係のないようなものに見えるところに物事を見立てるのは、一部の人達からはオカルトのように思えるらしいし、確かに何でもかんでも他のたとえに当てはめればいいわけでもないが、うまく扱うと、みなしは力強いツールとなる。

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